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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
一章 エルフィリア編Ⅰ 《Knowing another world and the country》
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1-18 幼い子による魔法授業

 エレベーターから降りると、そこは五階だった。鐘を鳴らし終えて来てみると、鐘を鳴らし――もとい、リートの誘いに寄って入ることになった時とは、また違った印象を受ける。


「……ん?」


 ふとスディーラが目をやると、螺旋階段を降りた先に誰かがいる事に気づいた。そして、その螺旋階段を降りた先にいる『誰か』は、スディーラの存在はおろか、リート、ラクト、そして稔の存在にも気づいていない。


「――幼女か」

「そういう趣味だったけ?」


 スディーラが口に出した言葉は、意味深長に聞こえてこなくもない台詞だ。稔が現実世界で言ったとすれば、職務質問を受けてしまう可能性すら否定出来ない程度だ。

 ただ、所詮。そういった際どい発言に関しては大体、容姿が悪くなければ疑われないものである。趣味がマニアックなものでなければ尚更だ。


「違うよ。僕はそんな趣味じゃない。――でもまあ、ここに居るってことはそれなりの理由があるんだろう」

「かもしれないね」


 スディーラとリートが話を進めていった。一方で、稔はその脇からその話を聞いていた。……と、それ以外のもう一人の実ると親しい仲の者、要は稔の召使の姿は何処に有るかというと、稔が事態の把握をするまで気が付かない場所だった。


「ラクトは何処に行ったんだ……?」

「何処行ったかなぁ?」


 ――と、その時には下層から笑い声が聞こえてきた。螺旋階段を降りた先に目をやれば、あろうことかラクトの姿。


「なっ……」


 当然ながら、ラクトが一人で笑っているはずがない。――否、そうなってしまう展開にはまだなっていない。彼女がいつ、発狂してしまうような事柄に遭遇したのだろうか。考えてみれば、笑っているはずがないという理論は崩れない。


「なんで、笑ってんの?」

「そりゃ、この子の話が面白いからでしょ」


 そう言うと、ラクトは幼い子の方を人差し指で指す。

 螺旋階段の上、五階からラクトを見下ろす稔は、早くラクトの居る場所へ行きたかったが、一応五階から一階まで降りるわけで、それ相応の時間が掛かる。

 

「何の話してたの?」

「いや、この子の話聞いたら、ホントに笑うことしか出来なくて」

「世間話?」

「まあね」


 ただ、螺旋階段の上と下での会話に限界が見えてきたので、稔は全速力で螺旋階段を降りることにした。その先、一階の螺旋階段を降りたところにいるラクト、そして幼い子の話を聞くために。続け聞くために。


 ただ、全速力で走ってきた稔をラクトは馬鹿にした。


「――なんで魔法使わないの?」

「えっ……?」


 確かにそれはそうであると稔も認識したが、稔は首を傾げ、召使からの解答を得ようとした。ただ、その首を傾げた稔に解答したのは幼い子の方だった。


「エルフィリアでも、エルダレアでもそうなんだが、魔力が使える者には、必ず『二つ』だけ、自分が魔力を最大限に使って使用すると、とてつもない威力を発揮するものが有ったりするんだね」

「それで、この幼い子は、それを見分ける女の子というわけなんだ」

「は、はあ……」


 幼い子の姿を見てみると、幼い子の髪の色は蒼色で右目に黒眼帯を装着していた。ただ、服などには特徴はそこまでなかった。強いていうならば、小さい子にしては、少々露出度が高いところくらいだろうか。


「それでラクトは、そのことが気になって俺に相談を持ちかけてきた、というわけだ」

「ほう……」

「それで、俺が見てみた結果を紹介してみようか」

「ああ。――だが、待ってくれ」

「なんだ」

「それは正確なのか?」

「ああ、そんなことか。……正確だよ。これまで、俺が当ててきた確率は九五パーセント以上だからね」


 九五パーセントという、どう見てもロリータが言ったら驚愕してしまうほどのパーセンテージに、稔は腰を抜かすまでは行かなかったが、相当な驚きを見せる。

 とはいえ、パーセントというのはあくまで、「全体に一体どの程度、『それ』が含まれているか」だとかを表すためのものである。即ち、当ててきた人数が一人であれば、一〇〇パーセントにならないとおかしいのだ。

 

 しかしながら、九五パーセントという確率が出るということは、少なくとも二〇人中一九人はあたっていることとなる。もし仮に、二〇人以上を見てきたのだとしても、九五パーセントなどという脅威の数字と、二〇人中一九人当てているということを考えれば、それは凄いものである。


「どうだ、聞きたくなったか?」

「それが役に立つのであれば、是非聞かせてほしいな」

「そうか。……ならば、俺のアドバイスも添えて聞かせてやることにしよう」


 幼い子はそういうと笑って、稔に笑顔を振り撒く。

 稔自身、ロリータがあんなことやこんなことをしたりするアニメは見てはいたが、自分の得意分野ではなかった故、何処か新鮮さを感じていた。

 何しろ、これまで稔が好きになった……というよりも、惚れた女性アニメキャラの大半は、ラクトのような活発な女の子か、それともリートのような王族系の女の子が多かった。もっとも、リートのような王族系の女の子のだと、胸の貧しい子が稔のタイプだった。


 そんな、気持ちの悪い自分自身の過去を思い返すと、稔は吐き気をもよおしそうになった。しかし、幼い子からの、二〇人中一九人の『最大限に活かして使うとヤバイ魔法』が何なのかを当ててきた幼い子からのアドバイスを、稔は聞かずにはいられなかった。


「まず、夜城は攻撃方面での優れた魔法がひとつある」

「なんだ?」

「『アーティレリー・シックス』と呼ばれるものだな」

「なんだそれは?」

「その言葉が指す通りのことである」

「砲撃……六?」

「要するに――」


 稔が首を傾げて聞こうとしてくるのに幼い子はうんざりしてきた。その為、『やってみたほうが分かり易い』という判断を下した。結果、稔とラクト、リートとスディーラ、それに幼い子を含めて、エルフィリア・メモリアル・センター・タワーズの周辺に結界が張られ、稔の知らない様々な言葉を多数使用しながら、幼い子はバトルフィールドを創りだしてしていく。


「これは……」

「この西棟のこの場所を中心に、西棟全体と東棟の一部に結界を張ったんだ。そして、稔には見えないかもしれないけど、俺の居るこの場所より手前のところを円周とする、緑色の結界が有る」

「円周――?」

「こういうことだよ」


 幼い子のストレスゲージは上昇する。稔には全く持って自覚はないわけだが、いくら実力があるとはいえど、幼い子である。そのため、イライラを抑える方法は少ししかわからない。

 ただ、自分で成長することを幼い子はわかっていたため、暴力を振るったりだとかはしなかった。



「――SショージングBベリア――」



 言って、幼い子が緑色の結界を稔に見えるようにした。


「こ、これが結界……」

「そう。まあ、どんな魔法にしても、そのうち魔法を使っていくことになるんだから、今使っておいても損はないと思うがな、俺は。――もっとも、魔法を使うには魔力を消耗するけどな」

「魔力……」

「ただ、安心してくれ。この結界内では、通常の一〇分の一の魔力しか使わないから」

「一〇分の一……」


 そう聞いた刹那、幼い子がまるでチートを使っているチーターのように稔には見えた。ただ、「結界を張って一〇分の一の魔力消費で魔法を使えるなんてことにしたら、実戦ではあまり意味を成さない」と稔はチーター等という考えをしている脳に対し、考えをぶつけた。


「そして、魔法の威力は二倍になる」

「にっ……」


 稔は等倍なのかと思っていたため、二倍と聞いて驚く。


「まあ、とてつもない高火力攻撃でない限り、この結界を破ることは出来ない。でも、俺がこの結界を作っているってことは、それなりの威力があるってことだからよろしくな」


 その言葉を聞いて、稔は背筋を凍らした。ゾッとしたのである。


「でも、実戦で使うようにするためにも今から鍛えておくのは重要ですよ、ご主人様」

「それもそうだな」

「なので、躊躇わずにどんどん魔法を使ってください」

「こっ、怖いこと言うな……」


 エルフィリアのには、どのような魔法が禁じられているかとかいう法律はない。人に害を与えない限り、どのような魔法を使っても問題ないのである。ただし人が訴えたり、第三者が訴えたり、通報したりすれば問題となって、法律違反となる。

 ただ、そんなことは稔は聞いていなかったので、自分の中のある意味の凶器である魔法を使うことを恐ろしく感じていた。

 

「さあ。言ってみろ、夜城」

「――分かった」


 歯を食いしばってまで使わないでいることは不可能であるということを感じた稔は、魔法を使うことを決行した。そして丁度この時、五階から見ているだけではよく見えないということで、スディーラとリートも一階へと降りてくる。

 ただし、二人は稔とは違い、魔力を使っての五階から一階への降下だった。


「よし……」


 稔は、これから魔法を使うんだということを脳裏に刻み、被害が出ないことを祈りながら、幼い子が作った結界を壊さないことを祈りながら、稔は息を整える。そして、それが終わってすぐ、息を整えるために閉じていた目を開く。



「――AアーティレリーSシックス――」



 特に凝った動作は付けず、稔はその場所で待機する形をとった。出来る限り、脳内に幼い子から聞いたものから連想したものを浮かばせながら待機した。

 そして、待機して五秒程度経った時だった。


「来たぞ」

「えっ……」


 稔は幼い子が言った言葉に反応し、自分の砲撃が本当に飛んでいるのかを確認した。


「飛んでる――」


 稔の脳内で連想していた様子が、そのまま魔法によって作り出されていた。紫色の砲弾が六方向に飛び散って、それが緑色の結界を壊そうと結界の方に当たるが、その結界の力が強すぎるため、結果的に小さくなって消滅していく。


「大成功じゃん」

「やった……っ!」


 稔は喜びの余り、何故かラクトに飛びつく。


「ちょっ……」


 流石のラクトもこの表情。ラクトは、抱きつかれたりするのはサキュバスの血を引いているから嫌いではなかったものの、突然抱きつかれるのは心臓に悪いということで嫌だった。


「そして、この大成功と共にもう一つの方も伝えておこうか」

「なんだ?」

「それは、テレポートだ」

「テレポート――」


 アニメーションの中では見たりすることが有ったものの、稔はその言葉を聞いた時、驚きを隠せなかった。


「ただ、範囲は限られる。半径五〇キロ以内だ」

「それでも十分じゃ……」

「まあな。それはそうだ。――取り敢えず、緑色の結界はもう無くすことにしようか」


 緑色の結界をそのままにしておくとテレポートの力を見ることが出来ないと判断し、幼い子は緑色の結界を無くした。当然ながら、言葉で何か言わなければ魔法使用は基本的に不可能であるため、幼い子は魔法を使用するべく言う。



「――フィニッシング・ベリア――」



 言った後、すぐに緑色の結界は無くなった。そしてそんな事を見て、また新しい感想を持った稔に対して幼い子は言った。


「五階までテレポートしなさいな」

「え?」

「だから、目的地を言えと言っているんだよ、俺は」

「――目的地を言うと、その場所まで行くことが出来るのか?」

「それがどうした? 自分が直前に居た場所に戻るとでも思ったか?」


 幼い子の指摘通りだった。稔は、てっきり直前に居た場所に戻ると思い込んでいた。


「――まあ、そういう風に思ってしまっているのも地球人だからなのかも知れんが、やってみなさい」

「あ、ああ……」


 稔は、少し緊張しながらもテレポートすることを心に決めた。でも、先ほどの魔法よりは威力も圧倒的に少ないし、心に決めてまでする必要はない。


「因みに、一つ言い忘れていた」

「な、なんだ?」

「テレポートは、未熟なものは口に出さないと言えないが、使っていくうちに脳内で考えるだけで使えるようになる。脳内で考える場合は、行き先が何処であるか、地名か緯度経度で正確に表せば大丈夫だ」

「オッケー」


 言って、幼い子への返事をする。稔はまだ未熟であることを感じて、口に出してテレポートすることにした。



「五階へ、テレポート!」



 その言葉、脳内で言ったのならばとても格好良くなるのは言うまでもない。しかし、幼い子が言っているように、何事にも慣れというものは付き物であるし、慣れるまでは言ってテレポートしなければダメだ。


「ご主人様、成功されましたなー」

「えっ……」

「どうしたんだよー?」

「いっ、いつの間に……」

「加速してきたんだよバーカ。……んじゃ、戻るぞ」

「お、おう……」


 戻ると聞いて稔は気を緩める。自分の使った魔法の効果がしっかりとしたものとなって現れ、嬉しくなっていたのだ。――が、緩められたのはそこまでだった。


「ま、あの小さい子からの指示なんだけど。取り敢えず口に出さないでテレポートしてみなさい、って」

「えっ――」


 稔は小さい子が何を考えているのか、凄く心配になった。怖くなった。――しかし、ここで逃げ出す手はない。どうにせよ結界が張られているのだから、稔の実力では、いくらテレポートを使用してもここからは出られない。


「仕方ないか」

「あと」

「どうした?」

「テレポートする時、ご主人様の何処か一箇所でも触ったり握っていたりしていれば、一緒に手レポートすることが出来るみたい」

「握るってのは凄く意味深に聞こえるけど、つまり『手』を握るってことだろ?」

「いや、手だけ限定じゃないよ」

「なんだと――」


 エロゲであればイベントが発生する可能性が否定できないが、稔はそんな事を考えつつも、真面目な態度で口に言葉を出さずにテレポートすることに臨む。


「それじゃ、ご主人様にくっつく。いい?」

「おう」


 ラクトは許可をとって稔の腕に抱きついた。大きな胸があたっていたのは紛れも無い事実だったが、稔はそんなことに意識は行かず、今は真面目な自分を見せていた。

 そして、今度はつばを呑む動作を決心の動作とすることにし、テレポートするために必要な事を脳内で言っていく。



(――EMCT、一階の螺旋階段を降りた場所へ――)



「……っ!」

「わっ――」


 稔が脳の中で言った後、テレポートが決まった。口に出さないままで、テレポートが決まった。稔は言った身だったから大丈夫だったが、ラクトは突然動いた身体に驚いた。けれど、そんな経験を積めたことを楽しいと感じて、ラクトは笑みを浮かべる。


「成功しましたね、稔様」

「だな、まだ実力も十分じゃないのにな。よくやったな、稔」


 リートとスディーラが稔に拍手を送る。二人に続き、幼い子も拍手を送る。


「成功したじゃん。やっぱ、地球人は違うね」

「そ、そうか?」

「ああ」


 幼い子は終始笑顔だった。ただ、そんな笑顔を見せているのにもかかかわらず、ここまでしてもらっ他にもかかわらず、名前を聞いておかないのもどうかと思い、稔は名前を聞くことにした。


「君、名前は何て言うんだ?」

「ああ、俺か。俺は『フランメ』っていうぞ」

「そっか。いい名前だな」

「ありがと」


 そんな会話をしながら、このタワーでの暗い話を消すように笑みを浮かべていった。無邪気なフランメという幼い子の笑みに影響されたせいだ。

 

 フランメが結界を全て解除した後、挨拶をして稔達とフランメは別れた。

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