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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
二章 エルフィリア編Ⅱ  《Fighting in the country which was defeated.》
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2-67 605号室-Ⅻ

 織桜は声優業界でも若き重鎮のような女性だったから、アニソンを多く歌ってきたのは言うまでもなかった。けれど一般的な服装で無いのだから、それに精通した人に着せてもらっていたと考えることも出来る。というより、何故そんなことを考えてしまったかといえば――彼女の胸のサイズだった。


「(無乳としか言えないような織桜の胸が、ヘル並になっているのを見ると悲しくなってくるな……)」


 稔はそんなことを思った。その一方で金髪のロングヘアーを揺らしながら、ありもしない偽乳を揺らして美声を響かせる織桜。マイクを握り、白地に赤色の服装で歌っている。スカートの中に何かを詰めたりしているとは思えないような感じで、豪華というわけではない。だが、可愛さは伝わってくる。無論、彼女は二〇歳を越えているわけだが。


「(三五歳超えて独身じゃないだけ良いのかもな……なんて)」


 稔はそんなことを言ってみる。あまり声優業界には精通しているとは言い難いが、ある程度のアニメを視聴していると声優名で顔と一緒に浮かび上げることが出来る。もっとも、そこまでくれば常人からすれば「気持ち悪い」とレッテルを張られかねないが。


 それはそうと、稔はヘルの方向へと目をやった。織桜とは対照的に、ヘルの衣装は白色の青色を使っている。でも、青色は青色でも水色に近い色、コバルトブルーに近いぐらいだ。並んで白色と白色で合わせているのがデュエットを意識したからかは不明としてだが。


 そんな彼女だが、やはり何と言っても織桜との違いはその巨乳である。ラクト並ではないにしろ、十分にあるその乳を活かし、上部だけを見えさせる衣装で来た。パッドで大きくしている織桜には成せない業である。――とか、そんなことを思うと妙に涙腺が緩みそうな感じがした。




 そんなこんなで、二三時三〇分頃。年越しの紅白歌合戦であれば、ラスボスさんや演歌の大御所さんが登場する時間帯である。もっとも、昨今は世代交代とも見て取れて登場しない事が多いが――。そのような時間帯に、織桜とヘルは歌を歌い終えた。


「ありがとうございました!」

「みなさん、最後に一緒にジャンプしましょう!」


 織桜の台詞がいかにも慣れている感じを思わすが、それは稔が止めておいた。それはどう考えても下階の人に迷惑である。幕張やドームでやるならまだしも、都市の一角にあるホテル、それも六階でやることではない。


 それはそうと。異世界人とは思えぬ歌いっぷりを披露した織桜と、日頃の歌練習の成果を十二分に発揮したヘル。大成功したと言えると思った『歌会』だったが、一二階のレヴィアから一本の電話が入ったことで少し雰囲気が変わってしまう。


「稔。レヴィアから電話」

「どうした?」


 ラクトは重々しい表情を見せてレヴィアからの電話だと言い、稔にウェアラブルデバイスを受け渡そうとした。だが、稔はそれを拒む。「異性で話すよりも同性で話すほうが気兼ねなく話せるだろう」という、稔なりの思いやりからだった。けれど、ラクトはそんなにいい思いやりとは思えない。


 とはいえど。主人からの渡さないでくれという話に、ラクトが乗っからないわけにも行かなかった。稔が近づいてくるのを確認したが、変にいやらしい目線を送っていると感じれない。特に指摘することもないため、ラクトは何の咎めも無しに端末を稔に近づけた。


 その一方、スルトやサタンが総出でソファを元の位置に戻したりしていた。同じくヘルと織桜が洗濯室へと戻って着替える。仲間はずれのように見えるがそうでない紫姫は、稔の方に来て何を話すのか窺っていた。「手伝えよ」と言いたくても、力持ちの元男子(スルト)が頑張りすぎたおかげで、ずれたソファやテーブルの姿がないので言おうに言えない。


「変わった。俺だ、レヴィア。――で、用件はなんだ?」

『あの、ご主人様にご報告――いえ、ご伝達したい話がございまして』

「お、おう……」


 改まって言わないラクトが過去に色々なトラウマを抱えていることは、僅か数時間前に知った話だ。少しそんなことを思い出してしまったが、レヴィアにも美人慰安婦として殺された過去があったじゃないかと思い、話が耳に入ってきそうでなくなる。でも、そんな時に紫姫とラクトから両耳を引っ張られ、話に復帰出来た。


「――悪い。続けてくれ」


 稔は咳払いすること無しに言うと、レヴィアは『大丈夫です、ご主人様』と笑って対応した。そして、重要な話だとしか思えない雰囲気を匂わせ、真剣そのものな声で続けて言う。


『カロリーネさんに関してですが、日付が変わって以降であれば戦闘に復帰できると思います。――といっても聴力を殆ど失った状態ですので、恐らく駒としてご主人様が従わせる立場になるかと思います』

「それは……エイブ戦を見越しての話か?」

『そうなりますね――とも言えますが、違います。今後、多々繰り広げなくてはならない【精霊戦争】、ご主人様が身体の各部と上下の身体を賭けた、逃げられない悪夢ゲームの事を見越しての御話です』


 レヴィアがカロリーネの事を調べて伝達した訳だが、稔は彼女の言い回しに腹が立った。


「話は理解した。だが俺は、駒として他の精霊戦争参加者を使うことはない。なにせ、そいつは捕虜じゃないしな。だから精霊を奪取する気はないし、そいつを駒として使う気はない。替わりに同盟を結ぶ」

『同盟、ですか。……ご主人様らしいです』

「ありがとう」


 稔は捨てるように笑みを零し、微笑む。でも、同盟を結ぶために必要な情報は出きったわけではない。だからその場から動けない特徴を活かし、先程、サタンが戻ってきて中継した時に零したであろう事柄を話した。


『サタンさんから聞きましたが、カロリーネさんは即日退院出来るそうです。もっとも、倒れたのが夜でした。色々と検査して治療を受けてとのことなので、日付が変わる直前――今頃になったそうですが』

「そうか。なら、今頃はホテルに到着している頃なのか?」

『分からないです。――でしたら、迎えに行ってあげたらどうですか、ご主人様?』

「む、迎えに行く……?」


 稔は悩む。提案としては良いものだったし、部屋を改変した片付けも済んだ。精霊魂石や魔法陣の中に戻れる勢が浴衣を着ているが、戻っていてもらえば彼女らの外出にさほど支障はない。だが、既にチェックインを済ましている稔とラクト。言い換えれば、断りなしでの外出が出来ない。


「いいじゃん。テレポートを使えば。退院したばかりの人を襲う野獣を駆除する意味も含めて、行くべきだと私は思うけどな……なんて」

「野獣の駆除って言い方はどうかと思うが、ラクトが言いたいことの意味は分かるしな……」


 カロリーネ。精霊魂石の所持者であり、召使や罪源を何体持っているかは不明。だが、頼りにできるはずの精霊も治癒を受けている状態だ。既に数時間経過しているから回復しているだろうが、危険な人物が近寄ってきた時に弱ったカロリーネを助けれるかと思うと、稔は少し心配になる。


 吐く嘆息には、稔のそんな思いが込められていた。


『悩んでいるなら、早く実行したほうが良いです。考えなしに動くなというのは確かですが、考えがあるのに動かないのは考えていないと一緒です。そんな扱い、されたら嫌じゃないんですか?』


 レヴィアからの後押しが入る。今の稔は、理由無しに暴走してしまった過去を持っているから足踏みしているだけだ。でもそれは、考えを言わないと同義。言い換えれば、考えを持っていないという訳だ。だからそう扱われても不満は言えない。


「理解した。でもまだ、ヘルが着替えをしている最中だからな。街中へテレポートしように出来ない」

「織桜も居るしね。――あ、織桜は連れないほうが良いと思う」

「どうしてだ?」

「精霊戦争に織桜は参加しなければいけない。でも、してほしくないでしょ、稔からしたら」


 稔の思いを感じたが、ラクトはそう言って確認を取った。もちろんながら、稔も「ああ」と答える。続けて紫姫が間違いがないのか魔法を転用して探り、結果的に無いと知った。だが、電話口の向こうのレヴィアにはさっぱり分からない話だ。そのため、ラクトが稔の代理で話した。


「精霊戦争は罪源は参加できないから、馴染みがなくて当然だと思うんだけど――」


 ラクトは前置きとして言った。同じく、稔は「ラクトが代理をするなら俺の出番は少し無いな」と後ろへ下がる。そしてふと部屋を見渡すと、スルトとサタンの姿がないことに気がついた。


「我は見ていた。彼女らが魔法陣や魂石といった個々の住まいへ戻っていくところをな」

「そうか。じゃ、あとはヘルとお前が戻るのを待つだけだな」

「貴台の命令であれば従いたいのだが、それは命令か? 寝用に寝れず、夜を楽しみたく思っているのだ」


 紫姫からその相談だった。隣でラクトとレヴィアが会話をするめているため、稔と紫姫は小声で話を進めていく――もとい、稔の即決によって即座に決まってしまった。


「カロリーネやエルジクスは大変な損害を負ったのは少し前の話だ。その時、お前は何をしていた?」

「……」


 紫姫は黙り込んだ。稔は紫姫に記憶を巡らせてその時を思い出させたが、一瞬にして思い出してしまったのだ。エルジクスにしてもカロリーネにしても、稔サイド共闘で戦っていた。スルトやサタンは眠たくて戻ったという説も分からなくないが、主人の思いを察してという説も否めない。


「要するにそういうことな。俺は召使に治癒を受けていて欲しいってだけなんだ」

「では、ラクトはどうして連れて行くのだ? 織桜と共にこの部屋で待機してもらったほうが――」

「それは良い案かも知れない。でも、ラクトは変なところで気が利く奴だ。置いていく訳にいかないな」

「そうか。なら、了解した。我は魂石の中に戻ることとする」


 稔は紫姫に帰る旨を告げられると、返しに「おやすみ」と一言告げた。時間は日付が変わる目の前だ。日付が変わって混浴風呂になってから、ラクトが稔を大浴場へと誘おうと計画している訳だが、それに紫姫が参戦すると言った事実は無い。もっとも、これからどうなるかは分からないとして。


「言っておくが、今の我に眠気は無い。故に、何処かで登場するかもしれないから覚悟しておくといい」

「その台詞、なんか敵キャラみたいだな」

「昨日の敵は今日の味方ともと言うだろう。我は貴台の精霊だ。特に理由が無い限り、貴台に付いていく」


 魂石に戻る前にそんなことを言っていた紫姫だったが、それから小さく顔を綻ばすと即座に戻った。同時、ラクトが稔の思っていたことをレヴィアへと伝え終えたらしく、通話を切る。


「稔って女性を贔屓してるよね。……だから織桜に戦わせたくないんでしょ?」

「それもそうだけど、精霊戦争なんてやったら双方とも悲しむじゃんか。『愚弟』とか言ってるくせに、織桜は俺を大切に思ってくれてる。自分以外の六人を降伏させ、初めて勝利する戦争なんかダメだろ」

「死なないだけマシな気もす――いや、しないね」


 ラクトは稔の意見を肯定するように言った。だが稔は悟る。彼女が指しているのは稔の思っていることとはまた別の事では無いか、と。寿司を作っている時以上に真剣な顔を見てしまえば、仕方がなかろう。


「身体の機能と死を賭けて戦うのが精霊戦争だと分かっている。それを前提として、ラクトに問いたい」


 互いに肯定しているというのは認め合える。けれど稔は、ラクトと食い違ったことを根拠としていると思って聞いてみた。注しておくが、本題よりも前置きのほうが長いのは仕様だ。もっともラクトは、その程度の長さで吐き気を催すほど長文に慣れていないわけではないが。


 それはもとい。稔は真剣な表情で、半ば怖い雰囲気を醸し出し――聞く。


「失った感覚は、取り戻せるのか?」


 ラクトから返ってきた答えは、稔を絶望に陥れるものだった。


「最初は片方、次第に両方が薄れていく。――意味、分かるよね?」


 稔の表情も真剣だったが、方やラクトの表情は強張っていた。いつもの柔らかそうな雰囲気は無い。稔が絶望に陥れたのは現実を知ったことが一つだが、ラクトの表情が真剣で変えそうにないことも要因だった。


「失ったら、もう、取り戻せないのか……」


 深い悲しみに包まれていく六〇五号室。片付けられたソファと机は、楽しかった数分前を一切感じさせてくれず、稔が「やってしまった」と深く絶望した悲しみを大いに表現しているように見える。


「でも、治療は――」

「治療をすれば治るのは確かだ。でも、暗黙のルールがある。『医者掛かりなんかするな』って」

「……嘘だろ?」

「本当だよ。まあ、カロリーネに関してはグレーゾーンと言うしか無いよ。倒れた理由が戦闘か、それともそれ意外の要因が引き金となったのか。そんなことなんんて私に分かりっこないことだから何とも言えないけど」


 稔はそんなルールを守ろうとは思わない。初期の状態で医者から治療を受ければ、治る可能性が上がるのは確かだ。取り戻せなくなるのは戦いに夢中になったせいで、賭けた場所が絶対に治らないわけではない。


 だが。


「精霊戦争は『精霊戦争管理委員会』が運営しているんだ。委員会を統べるのが誰かは不明だけどね」

「待てよ。そこで暗黙のルールが通されたら、どうすればいいんだよ?」

「従うしか無いよ。従わなければそれに応じた罰を受けることになる。――たとえ勝利してもね。まあでも、まだ法案は提案されただけらしい。通るか通らないかは、少し先の話だよ」


 ラクトは衝撃の事実を更に告げたが、まだ法案として通った訳では無い。けれど稔は、提案されただけでも相当な問題な気はしなくなかった。腹立たしいにも程がある。治癒すら許してもらえない戦争、それも強制参加だ。稔は呆れて物が言えなくなりそうだった。


 そして丁度その頃だ。ヘルと織桜が着替えを終えて戻ってきた。織桜は既に風呂へ入ったらしく、浴衣を身に着けている。ラクトが巨乳よりも貧乳のほうが浴衣は着やすいと言っていたが、稔は織桜の浴衣姿が似合っているように思った。ヘルも当然ながら浴衣姿だが、主人の視線を嘲笑う。


「マスター、豪華な衣装よりも素朴な衣装が好きなんっすね。もしかして貧乳好きっすか?」

「揉めるくらいがいいなあ、とか思――」


 稔は禁句を口に出したと戦慄を覚える。一方のヘルは、「寝るっす」と言って魔法陣へと戻った。一方で織桜の方に目をやると、彼女の怒りは稔にしか向けられていないようだ。彼に向かって中指が立てられている。しかも、両方だ。


「愚弟は本当に最低最悪の主人だ。――まあいいや。精霊戦争のことだけども、私は知っているから気にしなくていいぞ。無論、私が愚弟と戦うのは最後の最後だって思ってるのは、立場逆で同じみたいだけど」

「知ってたんだね、織桜」

「アドバイザーという役職なんだし、知らないことがあるのはマズイと思ってさ」

「なるほど」


 教師や会社のトップはそういう思考を持った人が多いように思え、稔は頷いた。でも何も言わない。


「ところで愚弟達は浴衣になっていないようだけど、これから何処か行くのか?」

「カロリーネに同盟締結を申し込みに行くだけだな」

「そうか。じゃあ、私は部屋に戻る理由しか無いな。じゃ、デートを楽しみたまえ!」


 織桜は夜でありながら、歌ったことでテンションがノリノリになっていたようだ。パーティーのせいで酒も入っているらしく、口調は忘れていないにしてもテンションがいつもより高い気がした。――とか思っていると、稔のすぐ目の前で壁にぶつかる織桜。すぐさま室内に笑いが生まれる。


「なにしてんだか」


 稔から嘲られると、織桜は「悪い悪い」と謝った。やることがないのは自覚していたから、もはやすることは寝ることだけだ。そんな彼女はふらつきながら、健気に自分の泊まる部屋へと戻っていった。


 そうして、六〇五号室の明かりを消す作業が行われた。稔が作った『跳ね返しの透徹鏡壁バウンス・ミラーシールド』を『解除リリース』し、普通の部屋へと戻す。廊下と繋がる壁を閉め、紛失物が無いかを確認しておく。


 ひと通り済ませ、稔はトイレへと向かった。男とはいえ、そこまで膀胱は大きくない。二桁の時間まで持ったのだから、それでも十分勘弁して欲しいくらいだ。


 ラクトからの妨害無しに、稔のトイレタイムは終わりを告げる。トイレに篭っているわけにもいくまい。稔はトイレの扉を開け、ラクトの元へと向かう。すると、彼女は稔の為にとコートを用意していた。


「エルフィリアって寒暖差激しいのか?」

「ボン・クローネは盆地だからね。夏と冬は結構気温差あるよ」

「そうなのか。――でも、それは外に出てからでいい」

「了解。要望があれば防寒具も防寒着も作ってあげるから、なんでも言ってね」


 稔はラクトから言われ、「分かったよ」と吐き捨てるように返答した。昼間それほど不快にならない温度であったから、夜間コートが居るとは思えなかっただけ。だから態度にも出ていた。


「でも、今は暑いだろ?」

「熱がこもってるからね。仕方ない」


 ラクトは少し柔らかめの茶色いコートを昼間から着ているパーカーの上に羽織っていた。疑問が漏れるように出たが、彼女の可愛いコートを着た姿に見惚れそうになった結果でしかない。


「取り敢えず、ホテルから出よう」

「お、おう。――でも、何処にテレポートするつもりだ?」

「病院は駅の近くだから、ボンクローネ駅で良いと思う。南口の方がいいはず」

「了解した」


 カロリーネの付き添いはサタンに任せっきりだったから、病院の場所など稔は知りっこない。でも、そんな時にラクトが助けてくれた。そんな端から見ればリア充カップルにしか見えない二人のうちの女性サイドは、照れくさそうに手を繋ぐ。


「なんか、秘密のデートみたいだね」

「うるさい」


 織桜に言われたことを意識して言ったわけではなく、単に稔を小馬鹿にするためにラクトはそう言う。だが、結果として自分の頬が紅潮してしまう原因になってしまった。意識しなければいいものを。要は、自爆した形だ。対して稔も少し頬を赤くしていたが。



「――テレポート、ボンクローネ駅、南口へ――」



 急かされ、赤くした顔を否定するように稔は魔法使用を宣言した。ラクトは稔用のコートを右脇と右手全体で挟み、落ちないように手でコートを掴む。一方でコートから少しだけ出ていた左手は、稔と繋がれていた。

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