プロローグ
20XX年1月1日に発売された乙女ゲーム
《聖なる泉の乙女》
略して聖女は、その年の大ヒット作品になった。
平民が学園に通うようになるシンデレラストーリーとは異なり、伯爵令嬢がヒロインになり、隠しキャラ含む6人の攻略対象と共に、迫り来る魔の国からの軍勢を撃退するという、バトルアクション要素もあるものだった。
伯爵令嬢であるヒロインは、魅力、学力、魔力、精神力、俊敏と、6つのパラメータを上げつつも、キャラとのイベントをこなし、逆ハーエンド、各キャラエンド(トゥルー、ノーマル、バッド)があるのだが、どんなエンドを迎えようがクリアボーナスとして、再プレイ時にステータスが加算される、やり込み要素が受けたのか、素晴らしい絵師によるキャラデザが受けたのか、はたまた甘いだけではない、バトル要素等があるストーリーが受けたのか、乙女ゲームランキングだけではなく、ゲームDLランキングで半年間一位を取り続けたゲームだった。
隠しキャラである魔の国の王は、全てのステータスをカンストさせ、他5人のキャラのトゥルーエンドを終わらせていないと会えないキャラだった。
このステータスをカンストさせるのが、1番の難関だったと私は思う。
クリアボーナスがあるじゃん。と、思うのはご尤もだが、ランダムで上がるのだ。
既にカンストしているステータスに振り分けられるのは珍しくない。
[既に最大値です]
なんて、メッセージが画面上に出るなんて日時茶飯事だ。
しかも、運要素の高いミニゲームのせいで、ステータスが下がるのも日常茶飯事だ。
つまり、ステータスのカンストには膨大な時間がかかった。
おまけに、キャラとのイベントも何通りあるんだ?!と、叫びたくなる位に固定シナリオというよりは、初見シナリオや選択肢が出てくるのに、公式としては攻略サイトや攻略本なんてものは出していない。
『この選択肢ご存知の方ヘルプー!』
なんて類の、個人の呟きを逐一チェックする事で、答えが見つかったり、見つからなかったり。
たまに、この選択肢ですよ。
なんて書き込みを信じてプレイした結果、全ステータスが大幅に下がるなんて事もあり、正誤が錯誤し疑心暗鬼に陥るプレイヤーも多かったようだ。
スラスラと内容を説明していた事を鑑みると、お察しの方も居るだろうが、私、水原 玲奈も、聖女のプレイヤーだった。
もちろん、魔の国の王も攻略済みである。
聖女にハマって、長年付き合っていた学生時代からの彼氏にフラれた時も、悲しみより喜びが勝った。
これで、仕事の時間以外は、聖女をプレイ出来る!!
と。
有給は、発売時の正月休み明けに全て使い切ったし、食事はデリバリーか会社帰りのコンビニ飯で、ゲームをプレイしながら食べれる物ばかり。
兎にも角にも、睡眠、入浴、就業以外の時間は、聖女のプレイに明け暮れた。
そして、聖女発売から8ヶ月が経った日。
私の28回目のバースデーのその日。
全てのトロフィー(隠しミッションや、シナリオ、勲章をクリアすると、銅、銀、金、虹と種類あり)が100%を達成のメッセージを目にしたのだ。
『や、や、やったー!!』
私、天に向かって拳を突き上げた。
その次の瞬間、私の口からは
『ほんぎゃー!!』
と、生まれたての新生児の泣き声にかわっていた。




