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「ヒメカさんはコーヒーがお好きなんですね?私もコーヒーは好きな方なのですが結構な面倒くさがりなのであまりそういったお店には行かず自動販売機とか近くのコンビニで済ませていました」
「あ~わかるわ‥‥ヤマノってさ、なんかこうこだわりとか向上心みたいなもの?そういうのが一切なさそう。まあ私とは価値観が違うし合わないわけよね?」
彼女はそう言ってプイッと横を向いてしまった。
だがそこへ思いがけずノスケさんからの情報がもたらされることになり、彼女は一転、目を輝かせることになった。
「コーヒーといえば恐らくあれはコーヒーの木だったと思うのだが‥‥‥」
何やら考え込んでいる彼の次の言葉をじっと待っていると待ちきれないとばかりにヒメカさんが先に口を開いた。
「どこなの?その木は一体どこにあるのよ?あ~まさか異世界でもコーヒーが飲めるかもしれないなんて!」
彼女は興奮し、心はすでにそのコーヒーの木に向かっているようだ。
「いや。確実とはいえない。俺が保護された場所はここからかなり離れているのだが、そこで甘い香りがしてなんだろうと思ってみたらコーヒーの花とよく似た花を咲かせた木が周囲にたくさんあったんだ。でもその時はちゃんと確認する時間もそんな気も起きなかったからそれらがコーヒーの木だとは断言できない」
その言葉を聞いた彼女は私に向き直り、「ねえヤマノ?あなたは森歩きは得意よね?」と尋ねてきた。私はその時点で彼女が何を言いたいのか手に取るようにわかったが、わからぬふりをして「いいえ?」とすっとぼけ作戦に出た。
「ヤマノ!あなたはあの転移場所からここまで余裕で歩いてこられたじゃない!大丈夫!自信を持ちなさい!」
「そんなことないです。それにそんな自信なんて持ちたくないです」
ここから森歩きについてのよくわからない言い争いをさせられてた私は段々萎えてきてしまい、ついには「コーヒーの木かどうか確かめに行けばいいんですよね?」と自ら探検隊志願してしまっていた。
彼女はそれに対し満足そうに頷き、スキップでもしそうな軽い足取りで自分の小屋へと帰って行った。私はひとまず解放感にほっと息を吐き、次にその木の場所についてノスケさんに尋ねてみることにした。
「ノスケさん、その木があった場所って覚えていらっしゃいますか?」
「え⁉まさかヤマノさんマジでコーヒーの木か確かめに行こうとしてる?」
「はい」
あれ?なんかお前マジか?とやばい女扱いされている?
それでももう行くと決めたからにはその場所を教えてもらわねばと腹をくくり正座をして背筋を伸ばした。
「あの、それがもしコーヒーであるならば、この先ここの皆さんたちにも喜んでいただける可能性もありますし、違ったとしてもそれはそれで諦めがつくわけなので、私はどうにかしてそこへ行ってみたいと思うんです」
「‥‥‥悪いが正直、俺も場所を覚えているわけではないんだ。だから教えることはできない」
まさかの言葉に絶望しかけていると彼は「でも!」と私を咎めるように少し大きめの声を出して話を続けた。私たちを保護してくれた鬼さんが鬼の森や集落に詳しいはずなのでその彼に尋ねればわかるだろうということだった。
「だが彼がこちらの頼みを聞いてくれるのかどうかということまではわからない。それでももちろん俺もできるだけの協力はするつもりだからそう落ち込むな」
ノスケさんはそう言い微笑んでくれた。彼はとてもやさしい人である。
私の行き当たりばったりの探検のために快く協力してくれるという彼のためにもこの探検を絶対に成功させようと心に誓った。
「ノスケさん、ありがとうございます!私、頑張ります!」
翌日。私は意気揚々とノスケさんの案内でその彼がいるという集落に向かった。
昨日の集落ではまだ静かで鬼さんたちの姿は見られなかったが、今日はたくさんの鬼さんたちが行き交っている様子を見て改めてここはやはり鬼の世界なのだと実感することができた。
ノスケさんはまたもや一切の迷いを見せず、同じような家々の中から一軒の家の前までたどり着くとノックをして名乗り、少し話をさせてもらいたいと告げた。
するとすぐに中から誰かが出てきたが、ノスケさんの後ろから見上げるように確認できた姿は確かにあの保護しに来てくれた青鬼の彼であった。
「どうした?何か困ったことでもあったのか?」
「いえ。そうではありません。ですがもしお時間を頂けるようでしたら教えていただきたいことがあります」
それを聞いた青鬼の彼は扉の脇に体を避け、中に入るよう告げた。
「ありがとうございます。お邪魔します」と言いながら中に入って行くノスケさんの後を追って同じようにお礼を言い頭を下げながら緊張の面持ちで青鬼の彼の横を抜け中へと入っていった。
そしてまたもや想像とは大きくかけ離れた家の中の様子に驚き立ち尽くしている私にノスケさんは苦笑しながらこっちだと腕を取って木でできたかわいらしい椅子へと導いてくれた。
さらに目の前の椅子に腰を下ろした青鬼の彼の最初の一言が「想像と違って驚いたのか」だったのでそんなにわかりやすい顔をしていたのかとちょっとだけ恥ずかしくなった。だがそんな私を見て何も恥ずかしいことはないと告げられその時にふとあることを思い浮かべてしまった。
「ヤマノさん、そういう能力がない俺でも察することができるほどに確かに君は素直でそれが表に出やすいと思うが彼らには今君が感じた通りの能力があって特に彼のその力は強いらしい」
え⁉確かにふと私の心が読めるのでは?と思ってしまったが、二人ともにそれがバレている?っていうかえ⁉その能力を持っている?今の私はパニックというより思考がまとまらず、テスト問題の難問を前にした時のような後回しにして先に進みたい気持ちになっている状態だ。
「ちょうどよい機会だから俺たちの話を聞いてもらう前にまず次元のことと彼ら鬼族のことを少し聞いてみたらよいのではないかと思うのだがヤマノさんどうかな?」
するとそんなことさえお見通しとばかりにそんな提案をされてしまう。
難しい話は苦手だが、後回しにしたところでいつかは解決しなければならない事案であるならばその与えられた機会に解決するべきであろう。
「そうですね‥‥難しい話は苦手ですが、確かに今ここで彼から話を聞いたほうがよいような気がします」
だからそう告げノスケさんの言うように私たちが迷い込んだと言われているこの次元についての話をしてほしいと頭を下げてお願いした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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