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異次元スイッチ  作者: あずきなこ


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ご訪問ありがとうございます!

感謝いたします。

 「いやマジ勘弁‥‥」


 こんな時に限って大寝坊するとかホントマジでありえない‥‥‥

 私は自分自身のミスであるのにも関わらず、まるで他人のミスかのごとくブツブツと文句が止まらない。だって今日は何カ月も前からずっと楽しみにしていて今日のためにすべてを万全な状態にして臨んだ推しのライブ当日だったのだから。


 昨夜もここ数年、一度もなかった寝坊にも万が一に備え早々にベッドに入った。

 さらに音が大きすぎてイラつくという理由でいらない物入れに突っ込んであった目覚ましも復活させ、合計三つの目覚ましを準備してからの就寝であったのだ。


 にもかかわらず、ふと目覚めると顔の真横にあった時計はすでに起きる予定の時刻を二時間近くも経過していた。その時は一瞬、目覚めたばかりで恐らく見間違いをしているのだと思い、目をこすって何度か瞬きをした後、時計を手にして目の前に持ってきて凝視してみたのだ。


 だが見間違いなどではなく、確かに二時間近く経過しているのを確認した私はそれでもまだどこか疑っていた。だから残りの目覚ましも確認してみたのであるが、やはり結果は同じであった。しかもどれも全部解除のボタンが押されていて、起きる予定時刻には音がなり、それらが自身の手により解除されたであろうことは十分推測できた。


 それでもまだ最後の望みをかけ、階下にあるリビングの時計をチェックしに行ったのだが、目覚ましと同じ時刻を指していてそこで私はもうダメだとついに膝から崩れ落ちた。だがすぐに推しのできる!という激励(幻聴)が聞こえてきてそこで切り替え念入りな化粧とヘアスタイルは諦め、前日から用意していた戦闘服に着替えて速攻家を出たのである。


 推しのライブ参戦のための完璧な装いができなかった自分を呪いながらも今ならまだギリ間に合う時間に家を出られたことにはほんの少しだけほっとしていた。あとは現地までの乗り継ぎさえうまくいけばよい。


 だがそんな考えは甘かった。

 休日ダイヤで運行されている電車とバス、さらには初めて向かう場所ということで乗り継ぎに迷いが出た。そのせいでもう間に合わない、というよりすでに時間は過ぎていた。


 さらにようやく到着した推し初となる野外ライブの会場がある最寄り駅からはまた少し歩くのだ。だがここまで必死に電車とバスを乗り継いで来たこともあって私はとても喉が渇いていた。なのでもうすでに遅れていることを言い訳に足はすでに駅前のコンビニへと向いていた。


 キョロキョロしながら冷えたペットボトルがある場所を探して向かい、水の入ったボトルを手に取るとすぐに支払いを済ませ店を出た。そこで我慢できずにキャップをまわし開け、口をつけてゴクゴクと一気に三分の一ほど飲み干した。


 「はあ~!」


 生き返った~!と、続けたかったところを我慢してキャップをしっかりと閉めてからバックの中に押し込んだ。


 現在私はコンビニを背に、左手に見える横断歩道を確認している。

 確か前もってチェックしていた道のりとしてはまずこの横断歩道を渡り、その先に見える林を抜け、しばらくいくと見えてくるはずの道を右方向に進んで行けばよいはずだ。そして見えてくる森に向かって歩いて行けばその先に会場がある。


 「?‥‥‥‥‥」


 なんだろう?

 なぜかよくわからないが一瞬違和感のようなものを覚えてしまった。


 だが今はそれを気にしている時間などない。私はそのまま横断歩道を渡った。

 そして林の中へと進んで行くと「あの、ちょっと!」と、後方から声が掛かり、自分かどうかはわからないが念のため振り返ってみた。


 「ねえ、あなたも野外ライブに向かっているのよね?」


 どうやら自分に声が掛けられたようで目が合った彼女はそう尋ねてきた。


 「はい。そうですけど‥‥」


 そう返した私にあなたはもしかして()()()参戦なのかと言って失笑し、ここからは一緒に会場へ行ってあげるとなぜか上から目線なお誘いをされてしまった。正直、心の中では了承を躊躇っていたが、口からはどうもという小さな声ではあるものの、了承の言葉が出てしまっていた。


 彼女はとてもおしゃべりで、たった今初めて出会った相手に話しかけているとは思えないような軽快なしゃべりで私の横に並び歩いていた。私はなんというか圧倒されてしまい、たまに頷くくらいでほぼ言葉を発することはなかった。


 そしてもうすぐ林を抜けるかと思われた次の瞬間、「ギャ!」という短い横からの悲鳴とともになぜか私は地面に転がった。


 「痛った~!もう最悪~!」


 そんな彼女の言葉を聞きながら、自分も手足を擦りむいていることに気が付き、その地味な痛みに耐えながら砂埃を払ってゆっくりと立ち上がった。


 「大丈夫?立てそう?」


 そう問いかけながら手を貸そうと傍に寄ると彼女はその手は無視して自分で立ち上がった。だがそこから怪我しているところを気にしてなかなか動こうとはしなかったので、私は持っていたバンドエイドをバックから取り出して差し出した。


 「よかったらどうぞ」


 彼女はなぜかため息をつきながらもそれを受け取り傷口に貼っていた。


 そこでようやく動く気になったのか、前を向いたので自身も歩き出そうと一歩を踏み出した。だがすぐに立ち止まることになって横にいた彼女も同じタイミングで立ち止まり口を開いた。


 「ねえ、ここどこ?」


 彼女が口にしたのは本来、これまでの流れ的にはおかしな言葉になるのだが、実際私もここはどこなのだろうと思い辺りを見回していた。


 地面に転がる前と立ち上がって歩き出した場所が全く違っていたからである。


 先ほどまでは確かに林の中を歩いていて、もうすぐ抜けて大通りへ出るはずだった。だが今は林ではなく、山の中と言っても過言ではない鬱蒼と生い茂る草木の中で私たちは立ち尽くしているのだ。


 「えっと、とりあえず来た道を戻りましょうか?コンビ‥」


 コンビニに行って道を聞こうと続けようとした私を遮り、半ば叫ぶように彼女は言った。「これって異世界転移じゃないの⁉」と。


 異世界転移?なんだそれはと思ったが、今はとにかく野外ライブ会場へ急がなければならない。だから急いで駅の方に戻りましょうと言って振り返り、歩き出したところで腕を取られてバランスを崩し、よろけてまた転びそうになったが今回はなんとか堪えることができた。


 「ちょっとなにしてんのよ⁉!異世界転移で動き回るのは悪手って決まっているでしょ?転移したところで不安そうにしながらじっと異世界人の助けを待つのが最善よ!だからそうやって勝手に動こうとしないで!」


 「‥‥‥‥‥」


 彼女が何を言っているのかまったくわからなかったが、その時の彼女の眼光が鋭く怖かったのでひとまず駅に戻るのは諦めた。それから彼女は近くにあった腰を下ろして休めそうなサイズの岩を見つけ座った。私は一人で駅の方へ戻ろうかとも考えたが、最近ネット動画で見た遭難した際のやってはいけない行動の一つに一人行動は避けるべしとあったことを思い出し、少し休んで彼女が満足した後にもう一度駅へ一緒に戻ろうと告げるつもりでいた。


 「ねえねえ?どうする?もしもすっごいイケメンの王子が偶然通りかかって私たちのどちらかを妃にするとか言い出したら。私は王子も良いけど王子よりも私好みな素敵別キャラ登場の可能性も考えて一旦断る方向で行こうと思ってる。で、あなたはあまり妃っていうイメージじゃないけど受けちゃうの?それとも断る?」


 それなのに、彼女はまたおかしなことを言い出した。

 確か先ほど()()()()()()()()()待つというようなことを口にしていた気がするのだが、どうみてもそうは見えず、どちらかといえば興奮気味でウキウキ感さえ漂っている。


 だがここで余計なことを言うと面倒なことになりそうだと思い沈黙を選んだ。

 そして楽し気に何かを話し続ける彼女を横目にバックから水の入ったボトルを取り出し、キャップを開けていると「一口ちょうだい!」と声がして、彼女がこちらに右手を差し出しているのがわかった。


 こんな状況だが私は咄嗟にあのコンビニでもっと内容量の多いサイズのボトルを買うべきだったと後悔していた。一気飲みでもう三分の一しか残っていないボトルの中の水を見ながら今彼女とこれを半分ずつ飲んでしまったとしてもこの状況から抜け出すまでそう時間はかからないだろうと踏んでそのまま手渡した。


 「⁉‥‥‥‥」


 え⁉なんで?どうして?という言葉が私の頭の中で繰り返されていた。

 半分ほど飲んだところで一度はボトルから口を外したが、なぜかそこからまた再び口をつけ、残りも全部飲み干してしまったからである。


 そしてまったく悪びれることなく彼女は笑顔で「ありがとね!」と告げ、空のボトルを返してきた。私は思わず反射的にそれを受け取ってしまったが、ただひたすら困惑していて言葉は何も出てこなかった。


 その後数分が経ち、もうそろそろ駅の方に戻ろうと声をかけ立ち上がろうとした時、それまではとても静かだったその場所に突然ざわざわとした音が聞こえ始め、しかもその音はどんどん私たちの方に近づいてきた。


 「はっ⁉ついに王子の迎えが来たのではない?」


 なぜこんな場所で先ほどから彼女がずっと王子とやらの迎えにこだわり続けているのかは理解できないが、とにかく誰かがここに来るのならば野外ライブの会場までの道を聞けるはずだと思い内心ほっとしていた。


 そして少し先の方に人影が見えてきた瞬間、まったく不安そうにしていない彼女が立ち上がってなぜか髪や服を整え始めた。だがその影がよく確認できる位置まで近づいてきた時、一転してまた岩の上に座り直しため息をついて人外パターンかよとブツブツと文句を呟き始めたのだ。


 私は逆にコスプレ集団が来たのだと思いうれしくなって安心さえしていた。

 それは私にはそういったオタク系の友人がいて、皆とてもやさしく感じの良い人ばかりだったからである。


 そしてとうとう彼らが私たちの目の前に立った。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは明日投稿いたします。

金曜までは毎日投稿予定です。

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