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キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!  作者: をち。
幼年期

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話し合い

それからもアイク様は諦めてくれませんでした。


ことあるごとに当たり前の顔でボクを誘います。お兄様が居る時にはお兄様がサクッと切り捨て、お兄様が居ないときにはボクに「ごめんなさい」され。

それでも手を変え品を変えボクを誘い続けているのです。


困ったボクは、もう人前でも遠慮なく断ることに。

最初はハラハラと見守っていた周囲でしたが、すっかり日常風景と化し

「今日もダメでしたか?」

「ああ。なかなか頷いてくれないんだよ。残念だ」

「アイク様、頑張ってくださいね!」

「クリス、負けるなよ!俺はジルベスター様派だ!」

なんて軽口が叩けるほどになっております。

逆にこの一連の流れがないと落ちつかない、という方までいらっしゃるのには首を傾げるしかありません。


イクシス様がおっしゃるには、これまでアイク様は「親しみやすい皇太子」と思われてはいても、やはり一線を引かれていたのですって。

それが忖度としてでも媚びるためでもなく、普通に「クリスに振られっぱなしの同級生」として話しかけて貰えるようになり、今がこの三年で一番楽しそうに見えるのだそう。


そうですか。それは良かったです。

あの………もしかしてこれは「生徒たちとの距離を縮めるためのデモンストレーション」だったりします?

だったらもう少しお兄様のお顔を見てからにして欲しいのですが……





そう、アイク様は楽しそうでなによりなのですが、、お兄様が大変なことになっているのです。

なんというか……一触即発?

言葉は悪いのだけれど、猛々しい番犬?

あまりにもアイク様がボクを構うので大変お怒りなのです。

せっかく笑顔が馴染んできたその表情も、すっかり元どおり。それどころか、眉間にはまたしてもあの縦皺が復活してしまったのです!


そのまま定着してしまわぬよう、お兄様の近くに行くたびにせっせと眉間に手を伸ばして皺を伸ばしてみるのですが……。

そっと指で触れている時だけは「ふっ」と表情が緩みます。柔らかな笑みを浮かべ、いつものお兄様のお顔に。

なのに、アイク様が現れたとたんにまたしてもくっきり!


跡にならぬよう機会さえあればお兄様の額をなでなでするボク。

見るに見かねたのか、ブリードさんとアクアが二人で「お肌にいい水」なるものを作ってくれたくらいです。

どうやって作ったのかは分かりませんが、毎晩寝る前にこれをお兄様にぬりぬりするのがボクの日課。

そのおかげで今のところ額に渓谷が刻まれるまでには至っておりません。

良かった!

ありがとうブリードさん!ありがとうアイク!


邸ではお兄様と一緒に居られるのでボクとお兄様はなんとかなっておりますが……。

どうしたら良いのでしょうか?



元々は婚約者としてはアレとして友人としては仲がいい……いえ、それなりに心を許し合ったお兄様とアイク様。こんなことで仲違いしてしまうのは、納得できません。

婚約解消&お兄様の素晴らしさアピールによってゲームの断罪ルートを回避したつもりが、ボクのせいで別断罪ルートができてしまいます。

そんなのダメです!


リオやイクシス様、ウエイン様の情報によれば、ボクが居ない時の二人は今までどおり。つまり、お兄様がアイク様を適度にぞんざいに扱い、アイク様はそれを全く気にせずお兄様に言いたいことを言っているといいます。

そこにボクが挟まると……まるで大切なおもちゃを取り合う子供のように、二人で牽制し合ってしまうのです。


正確には、アイク様がボクに構いまくり、お兄様がボクを背に隠し、にこにこ貴族的舌戦が始まる、という感じ。

アイク様は終始にこにこなのですが、お兄様のイライラが募っていくのが見ていて分かってしまいます。


「クリス、たまには私と手をつないでみないか?少しずつ兄離れするのもいいと思うぞ?」

「余計なお世話だ、アイク。私たちはお互いに手を繋ぎたいから繋いでいるのだ。私がクリスのこの可愛らしい手を有象無象に握らせるとでも思うのか?」

「えー?まさか、有象無象っていうのは、この私のことを言っているの?」

「それ以外に誰が居る?」

「リオくんとか、ティムくんとか?」

「はっ!アレは問題ない。別に相手がいるだろう」


とこんな感じ。

普通に会話しているように聞こえるでしょうが、この間ずっとボクはお兄様に手を引かれ、アイク様に手を引かれ、あっちにこっちに行ったり来たり。


「痛いですっ!!こういう時に先に手を離したほうが好感度高いって何かの本で見ましたっ!」

「「!!」」


どしん!

パッと同時に手を離されたボク。バランスを崩して転んでしまいました。


「クリス!!すまない、大丈夫か⁈」

「大丈夫?ごめんね、クリス!」


「………大丈夫じゃありません……」


ボクは差し伸べられた二人の手を無視し、自分で立ち上がりました。

ううう……お尻が痛い……

チラリとお尻を見れば、慌ててアイク様とお兄様がボクのお尻を撫でようと…


「結構ですっ」


もう我慢の限界です!!


「まずは隠れて見ていらっしゃるみなさん!ショーではありません!お帰りください!」


パンパンと手を叩き注目を集め、ビシッと柱の影を指させば、バタバタと幾つかの足音が離れて行きました。

次は…

ジロリとアイク様の背後を睨みます。


「イクシス様、ウエイン様!側近ならば、主人の暴走を止めてください!それが真の臣下というものではありませんか?!」


「「は、はいっ!」」


ピーンッと直立不動になったふたり。

どうして敬語?!


今度はアイク様にも指を突き付けます。

不敬?そんなの無視です!

ボク、怒っているのです!


「アイク様、ジル兄様を煽るのはやめてください。

この場合、アイク様は当て馬の立ち位置なのですよ?ちなみに当て馬とは主人公のライバル、いわば邪魔をする人のことです。

アイク様は優勝者ではありませんよね?後出しで割り込んできたのはアイク様のほうです。そこを履き違えませんように。だって、お兄様が最初にボクを姫に選んでくださったのですから。

ボクはお兄様の姫となることしか望んでおりません。アイク様は無理を通したのだということをお忘れなく!

ボクはお兄様ファーストなのですっ!お兄様に意地悪しないでくださいっ!」


「うわあ……言っちゃった……」

「これはまたハッキリ言いましたねえ……」


ええ、言ってやりました。

だってどんなにお断りしても懲りないんですもん!

ボクだってアイク様が嫌いじゃない。

そんな人にずっと塩対応しなきゃいけないものストレスなのですよ?


当のアイク様はお口をポカンと開けて無になられております。

こんなこと言われたことがないのでしょう。普通の方はアイク様に好意を向けられたら大喜びなのでしょうから。

でもボクはお兄様ファースト!お兄様が嫌なことは嫌なのです。


お兄様だってせっかく笑顔でにこにこの日々でしたのに。

またツンドラ状態に戻ってしまわれたではありませんか!

これまで頑張ってきた推しの笑顔キャンペーンが台無しです!







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