392 守りたいもの
明けましておめでとうございます。
皆さま、本年もよろしくお願いいたします。
ウェンディの変わり果てた姿を前に、怒りで我を忘れ物陰に潜んでいた魔物を容赦なく始末するテオとニコラ。
圧倒的な力に驚愕しつつも、ブレンダは周囲への警戒を怠らなかった。
方々から立ち上がる炎に照らされているとはいえ、街は真っ暗な雲で日が遮られている。どこに魔物がいるか、わからない状態だ。
そんな状況の中、目線をずらしたほんの一瞬。
ぞわりと背筋が粟立った。
「──!! レティッ!! ユウマッ!!」
ライアンの痛々しい姿に呆然自失のレティと、泣きじゃくるユウマ。
そんな二人に向かって、炎の向こう側から何かがとてつもない速さで飛んでくるのが見えた。
慌てて二人を庇い地面に伏せる。
すると、先ほどまで二人がいた場所に間髪入れず大きな瓦礫が落ちてきた。
あまりの衝撃に地面は抉れ、小さな瓦礫の破片が四方に飛び散る。
ライアンとウェンディに治癒魔法をかけていたマイルズにも、その鋭い破片は容赦なく降り注ぐ。腕に、肩に、決して小さいとは言えない傷が刻まれていく。
だが、マイルズは頑としてその場を動こうとしなかった。
ここで自分が手を止めてしまえば、二人の命の灯は簡単に消えてしまうと理解していたから。
その間にも、次から次へと瓦礫が大小問わず飛来する。
身動きの取れないマイルズたちを庇おうとブレンダが前に出るが、それを防ぐように突如として分厚い土壁が出現した。
「……テオ!」
ゆらりと黒い靄を帯びながら、テオがブレンダの前にふわりと現れた。
自分たちと教会を囲うように、何重にも壁が出現する。
だが、それを嘲笑うかのように何度も何度も壁が崩れる音と衝撃が伝わってくる。
……そして、不気味な魔物の咆哮。まるでゲームを楽しむかのように、何匹もの声がすぐ近くにまで響いてくる。
意図せずともユウマとレティを狙った事により、テオとニコラの標的が一気に炎の向こうにいる得体の知れない何者かに向けられた。
妖精たちの言葉はわからないが、その声を聞き、二人とも殺気立っているのが見て取れた。
「……ぶれんだちゃん」
「レティ! 大丈夫か……!?」
未だに泣きじゃくるユウマを抱き寄せ、レティは近付いてきたブレンダにそっと耳打ちをする。それを聞いたブレンダは目を見開き口を開こうとするが、その決意した目を見てその言葉を飲み込んだ。
「……いいのか?」
「……うん」
小さく頷いたレティの足元から黒い触手が音もなく出現し、皆を守るための防御壁を出し続けるテオをぐるりと捕縛する。
不意を突かれたテオは、あまりに突然の事に身動きが取れず、止めろと目で必死に訴える。
ライアンとウェンディ、ヒールをかけ続けるマイルズ。
そして、自分の腕の中にいるユウマを出現させた魔法陣の中へと押し込んだ。
「──やだぁ! えてぃちゃ」
泣き叫ぶユウマの声が、青白い光と共に掻き消える。
「……ごめんね、にこら。こころぼそいから、いっしょにいてね」
《 ……うん! なにがあっても、いっしょにいるよ! 》
レティの行動に驚くニコラだったが、ぽつりと呟いたレティの言葉にするりと頬を寄せ、笑みを返す。
「……ごめんね、ぶれんだちゃん。いっしょに、たたかって」
「もちろん。……ところでレティ? 将来、冒険者になるつもりはないか?」
緊迫したこの状況で何を言い出すのか。
けれど、レティは笑って答えた。
「わたし、おにぃちゃんのじょしゅだから、ぼうけんしゃにはなれないの」
「そうか! それは残念……、いや、楽しみだな!」
「うん!」
束の間の冗談に、笑みが零れる。
そして次に顔を上げた時、三人の表情は険しく、暗闇に潜む魔物へと鋭い視線を向けていた。
久々の本編更新(-_-;)
短いですが、今年こそはこまめに更新していきたいと……、思っております……!




