2-13:ダークエルフの恥じらう姿が可愛い件について
教授コメント
『防衛本能として心を閉ざすことは普遍的な事象であり、ダークエルフ特有のものとするには根拠が足りないのではないでしょうか』
ナディアの瞳に射抜かれて、僕は怖くなった。
いや、僕が悪いんだけどね。
不慮の事故とはいっても押し倒してるんだから、怒られて当然さ。
でも、ナディルの目はそうじゃなかった。
押し倒されて、襲われそうになってることをどうでもいいと、諦め受け入れるような目をしていたんだ。
「ナディア……」
なんだか悲しくなってくる。
そんな僕をナディアは不思議そうに見つめてくる。
「しないの?」
「うん、しないよ」
「そう」
素っ気なく、興味なさげにナディアは呟く。
「ナディアは嫌じゃないの?」
「嫌?」
「こうして襲われてることに、嫌悪感とか抱かないのかなって」
「嫌がっても仕方ないもの」
「仕方ないって……」
この状況を仕方ないと思ってしまうのは絶対におかしいと思うんだ。
それがダークエルフの感性だって言われても僕は納得できない。
「しないならどいて」
「うーん……」
「? なに?」
「なんか悔しいからこのままでいい?」
「なんで?」
「いや、だって可愛い子が自分のことを可愛いって自覚しないのは、イケメンが自分のことイケメンじゃないって言うくらいムカつくじゃない?」
イケメンが僕はイケメンですって自慢するのもそれはそれで腹立つけどね。
「分からない」
「うん、だから分かってくれるまで見つめようかなって」
「……」
「じー」
そうして僕はナディアの顔を見つめる。
小さな口に整った目鼻立ち、白いまつげとぱっちりとした二重の瞳が僕を見つめる。
目と目が合って覗き合うと、次第にナディルの頬が熱っぽく火照り始める。
「も、もういい」
「え、どうして?」
「分かったから」
「分かった?」
「は、恥ずかしいのが、分かったから」
多分、ナディアのあの虚ろな瞳は防衛本能なんだと思う。
突然の脅威に自分の心を守るため、それが仕方のない事象であると諦めさせ、ダメージを軽減させようとしているんだろうね。
だから、こうして慣れて行くと、その防衛本能が薄れていく。
それでちゃんと意識してくれるようになったんだと思う。
「可愛い」
「え?」
「やっぱりこういうのには恥じらいがないとね」
「な、なに?」
恥ずかしがってくれないと、やっぱりこういうハプニングも楽しくないよね。
僕はナディアの上からどいて、ソファに座りなおす。
ナディアも身体を起こすと、なんだかジト目で僕を睨んでくる。
「……わざと?」
「いや、事故だよ、事故」
少なくとも初動は故意じゃないし、原因はナディアにあると思うよ。
まあでも、法廷でも同じ主張が通るかと聞かれると自信はないけどね!
そうして僕は再びレポートを書き始める。
それを隣りで眺めながらナディアはココアを呑んでいた。
「明日、本当に行くの?」
「え、ああ、ドラゴン討伐ね」
「危険」
「心配してくれるの?」
これは見つめた甲斐があったね。
「でも、大丈夫だよ。なんだかんだ言って、僕らにはユニコーンが付いてるからね」
「それは……そうかもしれない」
「でしょ?」
ナディアは納得する。
何となくドラゴンの方が強い気がするけど、話を聞く限りドラゴンは幻獣ほど珍しそうではないみたいだし、格としてはユニコーンの方が上っぽいよね。
「よし、報告書は終わり!」
「終わったの?」
「うん。というか、エディルが先に概要を記録してくれてたんだ」
『リアルタイムで執筆しています』
「そう」
僕は一つ伸びをしてエディルを片付ける。
「じゃあ、寝ようか」
「分かった」
「ナディアはベッドを使っていいよ」
「セカイは?」
「僕はこのソファで寝るから」
「……分かった」
ナディアはベッドの方へ向かう。
よかった。
ナディアは一緒に寝ようとか言ってこないんだね。
なんかそれはそれで寂しい気もするけど、精神衛生上はこの方が良いよね。
「おやすみ、ナディア」
「おやすみ」
明かりを消す。
横になって目を閉じるとなんだかドッと疲れが襲って来る。
異世界での長期探索。
それが少なからず僕の精神を疲労させていたんだろう。
あんまり実感はなかったけどね。
明日の予定はどうしよう。
そうだ、まずは教会に行こう。
それでナディアの首輪を取ってもらおう。
その後は買い物だね。
ナディアの服を買わなくちゃ。
あとは、お昼に美味しいものを食べて、ああ、通ってきた商店街も色々見て回りたいな。
それで明るいうちに火山に向かって、ドラゴンを討伐して……。
薄れる意識の中、誰かが近づいてくる気配がした。
何かが僕に覆いかぶさると、なんだか暖かくて、その心地よさに僕の意識はすぐさま微睡へと吸い込まれていくのだった。
エディルメモ
『セクハラ開心法と名付けました』
次の更新は21時です〜。
よろしくお願います(´∀`*)




