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第378話 集まった国王級

 迎賓館は多くの人達が忙しく働いていて、深夜であるのに、照明のおかげで凄く明るい。エカテリーナがテキパキと指示をしているのは驚かなくなったが、それに応じて動く、遥かに年上のエルフ達の方が驚かれるかもしれない。

明日の準備なのに、このままでは明日になるんじゃないかって程の、巨大な何かの丸焼きを作っている。


「凄いねぇ・・・ばーちゃん言葉が出ないよぉ・・・。」

「王宮の晩餐会でも見た事ないわ。」


 なぜかメイリーンとマチルダがその光景を眺めていて、マリアは欠伸をして自室へ引きこもった。グレッグも眺めているが、視点が少し違う。


「なんであんなに腕の立つ者達が子供に従っているんだ・・・。」

「エカテリーナ殿は優秀だぞ。それは戦う事が全てでは無い。」


 そう言っただけで姿を消した為、それが誰だったのか気が付かなかったが、気が付く事が出来なかったという事はかなりの手練れである。

 交代で丸焼きを監視する者達、煮込んだ鍋に蓋をして一晩寝かす、清掃に片付け、人は減ったがまだ忙しい。

 暫くすると少しずつ灯りが消され、必要なモノがいくつか残された以外は、室内はほぼ真っ暗だ。


「お祭りの前日って感じはたまらんのう。」

「ナナハルでもそう思うの?」

「こんな規模であれば百年に一度と言われても不思議はないぞ。子供達を寝かすのがいつもより大変だったのじゃ。」


 あのっ、ナナハルさん、尻尾を俺に巻き付けないで・・・。


「そういえばガッパードさんが少し元気が無いって言ってたけど。」

「太郎が気にする事じゃないだろう。」

「そーなんだけどさ、少し無理してるらしいよ。」

「ふむ。・・・わらわとてドラゴンとここまで親しく話が出来るワケではないが、太郎は頼まれたのじゃな。」


 あのっ、なんで抱き寄せるの・・・風呂上がりの良い匂いがたまらないんですけど。


「ふがっ、はがっ。」

「おお、済まん。なんか今夜は月明かりが綺麗過ぎてな。」

「だからって胸を押し付けられたら呼吸できないだろ。」

「自分から挟まれる癖にわがままな奴じゃの。」


 解放されて周囲を見る。

 マリナどころかスーもマナもいない。

 うどんともりそばはもう木に戻っているだろうし・・・。


「明日はわらわも自由に動けぬかもしれぬでな、今のうちにな。」


 物凄く強引にキスをされた。

 頬も赤く、目もギラギラに輝いている。

 そのままお姫様抱っこされ、有無を言う暇もなく寝室に連れ込まれた。

 その後。

 ・・・もちろん、先に寝たのはナナハルだ。

 主導権は渡さないからねー。

 ねー。

 

 誰?!?!?!?!??





 翌朝は朝日が顔を出す直前から人が増え始め、何故かドーゴルとダンダイルが揃ってやってきている。朝から風呂に入るらしい。

 太郎も風呂に入っているのは昨日の暴れ過ぎた汗を流す為でもあるのだが、ナナハルと子供達もやって来たので、家族専用の風呂場だ。

 マナとナナハルとスーだけじゃなく、ククルとルルクとエカテリーナも居る。

 

「今日はみんなオッケーなんだ?」

「あっちは別の事で利用されるようじゃの。」

「ふーん・・・。」


 スーがナナハルに真剣な目を向けていて、ナナハルも困り顔だ。

 うどんは・・・来ないな。


「何かあったの?」


 会話とは関係なく、子供達が湯船に飛び込んできた。

 子供達の仲が良いのは良いんだけど・・・密着し過ぎじゃないか。


「九尾は種族としてはもともと少ないからな、本能で分かっているんだろう。」


 なんの本能かな。

 生存本能だよね。


「それよりも太郎には謝らねばならぬ・・・。」

「・・・なんか、国のVIP級が来るって事かな。」

「うむ。今回ばかりはと押し切られて、ハンハルトとガーデンブルクからも来るそうじゃ。」

「大事に成ったねぇ・・・。」

「そんなつもりは無かったのであろう?」

「他の人がどう思っているかは知らないけど、少なくともエルフの人達に今回の建築に関して殆どを任せているから、あんな迎賓館と呼ばれるような豪華な建物になったんだろうけど、それを容認しているのは俺だから、ある程度は諦めてる。」

「そ、そうか。」

「相手の国じゃなくて、ここなら俺流で我を通せるから。」


 湯舟には、更に二人飛び込んできた。

 マリナとフィフスだ。

 広いから平気だけど、飛び込むのは止めなさい。


「フィフスは変化ないか?」

「負の魔素を思いっきり吸ったけど特に変わったところはないかなー。」

「あの魔法、私は使えなかったのー。」


 マリナがしょんぼりしているから頭撫でておく。

 湯舟の中で抱きつかれるとちょっと暑いんだが。


「神様のお披露目会なんだから、ちゃんと綺麗にしないとね。」

「そーそー。」


 やめてくれ。

 ナナハルが落ち込んだじゃないか。


「・・・来る人は把握してるよね?」


 ナナハルが頷いた後に俺に密着する。

 なんで。


「将軍級が来る事になってはいるが、基本的には太郎の知っている奴らばかりじゃ。」

「どゆこと?」


 ガーデンブルクの王にはマチルダが、ハンハルトの王にはジェームスが、魔王のドーゴルにはトヒラが付くとのこと。

 更には、リファエルとミカエル、エルフ王国からミシェル・ボビンズという新しい国王も来ることになった。


「ダンダイルが責任を持って連れてくるらしいぞ。アルベルト・エッセンが従者になるらしい。」

「あー、あの広大な農地の人か。」

「そういう認識でいいが、一応貴族じゃぞ。」

「貴族だと言って威張る人なら俺のところに来させないから大丈夫。マナとも仲良くしてくれるだろうし。」


 ナナハルが「来させない」という言葉に感心している。


「・・・世界樹の問題は解決しておらぬから、そういった話し合いもするのだろうが・・・、太郎は参加するのか?」

「しないよ。」

「承知した。全力で阻止しておく。」


 なんかすごい決意が感じられたけど、その後になんで俺の耳たぶを噛んだの。

 甘噛みなんだけど。


「すごーーい、こんな広いお風呂なんて。」

「ばーちゃんもびっくりさー。」


 なんか壁の向こうから声が聞こえてきた。


「一応、国王なんですから、振る舞いを・・・。」

「リアは勝手に付いてきたクセに何を言ってるの。」

「ダンダイル様の瞬間移動を体験したかったんです。もちろん、後学の為に。」


 更に別の声が響いてくる。


「神様に恥をかかさないように綺麗にしないとね。」

「神様って、天使がそう呼ぶと本当にそう見えてくるよー。」

「ばーちゃんもビックリ?」

「お母様、ドラゴン相手にそれは・・・。」

「いいよいいよ、怖がれる方がイヤだしねぇ。」


 なんか楽しそうだ。


「男風呂と女風呂の間じゃからの、何でもよく聞こえるわ。」

「子供達が・・・。」

「放っておいてカマワヌ。」


 構いたい・・・。


「ダンダイル殿とお会いできて光栄です。」

「いやいや、エッセン伯には太郎君も世話になったようで。」

「むしろお世話してもらった方ですが。」

「こうしてエルフと交流が持てるなんて思ってなかったな。」

「だいぶ混血が進んでいるので、純血のエルフもだいぶ減ってますが。」


 おお、男湯も賑やかだな。


「おい、俺を引っ張るな。」

「場違いすぎるだろ、なんで俺を巻き込んだんだ。」

「お前、仲がいいだろう?!」

「国王の癖に逃げるなよ。」


 ははっ。

 ジェームスさんも巻き込まれてるなあ。


「みんな風呂に入ってるのは何で?」

「ダンダイルが暇つぶしに勧めたそうじゃ。何しろ村をウロウロされても困るメンツだからのう。」

「確かにそうか。」

「暇つぶしに闘技大会も予定しておったが、参加者がいないんで無事に中止じゃ。」

「それは良かった。」

「神様が参加したら優勝しちゃうもんねー。」

「うん、そー。」


 そもそも、そんなに興味が無いんだが。

 ・・・神様呼びって止めてくれなさそうだなあ。


「朝飯はどうする?」

「各国の代表はエルフ達の料理を食べる予定で、その後は夜まで休憩じゃよ。」

「休憩長くない?」

「重要な会議というのは夜に話すと相場は決まっておる。」


 なんかイメージとしては間違っていない気がする。

 暗くて狭い部屋で、?燭の灯り一つに顔を寄せて、ボソボソと・・・。


「否定はしないけど、ココなら昼間でもいいよ?」

「そー言われれば、そうじゃの。」

「っねー。」

「ねー。」


 マリナが同意してくれたけど、意味は伝わってるのか謎だ。

 俺の知識も混じっているらしいから、あっちの世界の事も分かるんだよな。

 まぁ、色々やっちまった事も有るけど。


「どーしたの?」


 目をぱちくりさせて寄ってくる。

 ぐぅ可愛い。

 ピタッとくっついてくる。


「いてっ。」


 さっきは甘噛みだったのにがぷっとやられた。

 なんでなん。


「邪な目をしておるぞ?」

「んー、パパならいつでもしてあげるよ?」

「しません。」

「えー・・・。」

「えーっじゃないんだよ。全く、もう。」

「神様なら・・・。」


 フィフスはもっとだめーっ!!

 これ以上ココに居ると大変な事になりそうだし、さっさと出る・・・。

 子供達は何やってるんだ。

 まるで恋人に見えるぞ。


「ほっとけば良い。」

「んむー・・・まぁ、ナナハルが良いって言うから良いか。」

「あれだと、キンシンソーカンになりそうだもんねー。」

「やっぱり、マリナは分かるよなあ?」

「分るよー、ママは気にしないと思う。」


 マナは興味も示さないと思うぞ。


「でちゃうのー?」

「畑仕事したいからねー。」

「子供達にも手伝わせるか?」

「そうだな、イチャイチャしているよりはよっぽど良い。それに黒い土じゃないから誰でも耕せる。」


 これ重要。

 今でも黒い土は残っていて、強度が高い分、剥がせる者が限られる。

 魔法でバラバラにするのならナナハルでも可能だが、形を整えて剥がす事で資材にも流用している。


「お前達も行くぞー。」


「「「はーーい!!」」」


 二人ほど返事をしないので軽く睨んでおく。

 たまには父親の威厳も示さなくては。

 ・・・よしよし、気が付いたようだ。

 ん?

 視線が。


「ぷらーんとしてるのを隠さなくなったのぅ?」

「ん、あぁ・・・。」


 周りを見ると誰も隠していないし、特に家族関係の所為もあって、スーもエカテリーナも隠さない。自分だけ隠してる方がおかしい気すらする。

 フレアリスは最初から隠さなかったな。

 そしてもう一つの理由として・・・。


「プラプラさせてるとマナが真似するコトが有ってね・・・。」

「あー・・・。」


 フィフスとマリナも真似した時はがっかりした。

 本当にがっかりした。

 ナナハルの優しい目が辛い。

 その後、畑仕事の前に風呂に入った事を忘れて、土に汚れる太郎だった。






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