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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』  作者: 黎明の星


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22/22

揃えるための1日

翌朝、朝食を終えてから昨日まで使っていた場所へ向かうと、頼んでいた鉛はすでに用意されていた。

これまで雷を落としてきた鉄と、屋敷にあったアルミ。そして新しく届いた鉛。

三種類が揃った。

今日は父さまではなく、ジルドが僕についている。

普段は父さまについている執事で、必要なこと以外はほとんど口にしない。今朝も父さまから何か言いつけられていたようだが、僕が何をするのか細かく尋ねることもなく、少し離れたところに立っていた。

僕は三つの金属を見比べる。

鉄とアルミと鉛。

光哲だった頃の知識では、それぞれ電気の通しやすさが違う。アルミは鉄より通しやすく、鉛は鉄より通しにくかったはずだ。

ただ、それがこの世界の雷にもそのまま当てはまるとは限らない。

だから確かめる。

そのために三種類を用意してもらった。

「……あ」

そこで、肝心なことに気づいた。

鉄とアルミと鉛をただ並べて雷を落としても、形も大きさもばらばらだったら、何が違いにつながったのか分からなくなる。

できるだけ同じにしておいた方がいい。

僕はこれまで使ってきた鉄を見る。

これを基準にすればいい。

そう思ったところで、また手が止まった。

「測ってない」

何度も使っていたのに、この鉄がどのくらいの大きさなのか、一度もきちんと測っていなかった。

今までは必要がなかったからだ。

「ジルド」

「はい」

「長さを測りたいんだけど、尺ってある?」

「ございます」

それだけ答えると、ジルドはすぐに動いた。

しばらくして持ってきてくれた尺を受け取り、鉄に当ててみる。

端を合わせて目盛りを追っていく。

「十二ミルス……」

光哲だった頃の感覚なら、三十センチくらいか。

次に厚さを測る。

「六ナルミルス」

こっちは十五ミリくらい。

『雷の記録』を開き、鉄の寸法を書き込んだ。

一辺十二ミルス、厚さ六ナルミルス。

今度はアルミと鉛を見る。

「これと同じにしたいな」

僕が鉄を指すと、ジルドは三つの金属を見た。

「加工なさいますか」

「うん。大きさと形をできるだけ同じにしたい」

「では、工房を手配いたします」

ジルドはそれ以上聞かなかった。

僕が『雷の記録』に測った数字を書き終える頃には、町へ出る準備が進んでいた。

相変わらず早い。

町の金属工房へ着くと、中から金属を打つ硬い音が響いていた。

熱気の混じった空気の中に、光哲だった頃にも覚えのある金属の匂いが混じっている。

思わず奥を見る。

鉄を見本にして、アルミと鉛を同じ大きさにしてほしいという話はすぐに通った。

一辺十二ミルス、厚さ六ナルミルス。

完全に同じにできるかは分からないが、できるだけ合わせてもらう。

話が終わると、僕の視線は自然と作業場へ向いた。

金属を加工している。

この世界では、どうやっているんだろう。

炉も見たい。

道具も見たい。

職人の手元も――

「坊ちゃん、そこから先は駄目だ」

足を向けかけたところで職人に止められた。

「火花が飛ぶ。危ねえから離れてな」

「あ……はい」

言われて作業場を見ると、確かに奥で火花が散っている。

分かっている。

分かっているんだけど。

見たい。

製鉄所にいた頃なら、安全を無視して作業場所へ近づこうとする人間を止める側だった。

五歳になったからといって、危険がなくなるわけじゃない。

むしろ逆だ。

「……見たかったな」

小さく呟いてから引き下がる。

隣にいたジルドは何も言わなかった。

職人が止めて、僕も下がった。それで終わりらしい。

加工にはしばらく時間がかかるという。

工房の前でずっと待っていても仕方がないので、その間、町を歩くことにした。

ジルドも黙ってついてくる。

通りにはいくつもの店が並び、人の声が行き交っていた。

何となく店先を眺めながら歩いていると、少し先に見覚えのある短い髪が見えた。

両手には野菜の入った籠を抱えている。

「あ」

向こうも僕に気づいた。

「クロード?」

「ミーニャ」

畑で出会い、啓示の日にも顔を合わせた同い年の女の子だった。

「何してるの?」

僕が聞くと、ミーニャは抱えている籠を少し持ち上げた。

「これ届けるの」

「野菜?」

「うん。宿屋さんの夜のごはんに使うんだって。ちょっと足りないから欲しいって」

「ミーニャが持ってきたの?」

「これくらいなら持てるもん。お父さんたちは畑にいるから、わたしが頼まれたの」

見ると、確かに大人が市場へ運び込むような量ではない。

籠ひとつに収まる程度だ。

「そうだ。畑、どう?」

僕が聞くと、ミーニャの顔が少し明るくなった。

「前よりいいよ。《緑恵》を使うと元気になるの。お父さんもお母さんも助かるって」

「やっぱり作物に効くんだ」

「うん。でも、いっぱいはできないよ」

「いっぱい?」

「何回もやってると疲れるの」

思わずミーニャを見る。

「どのくらい?」

「どのくらいって?」

「《緑恵》を使って、疲れるまで」

「わかんない」

即答だった。

「数えてないの?」

「数えてないよ」

ミーニャは不思議そうな顔をした。

考えてみれば当たり前かもしれない。

僕みたいに記録を取っているわけじゃない。

「この前ね、もっと元気にしたらいいかなって、いっぱいやったことあるよ」

「いっぱい?」

「うん。もうできないってなるまで」

「それでどうなったの?」

「次の日、すっごく体が重かった」

「次の日まで?」

「うん。朝もなかなか起きられなくて、お母さんに怒られた」

僕は思わず一歩近づいた。

「使ってる途中は? 急に動けなくなった? それとも少しずつ疲れて――」

「クロード」

「なに?」

「変なの」

「なんで?」

「だって、わたしが起きられなかった話なのに、なんでそんなに聞くの?」

「知りたいから」

「ほら、変なの」

ミーニャはそう言って、少し呆れたように僕を見た。

でも、これはかなり大事な話だ。

僕は雷を使うとき、父さまに止められてきた。

三回までだったのを五回までに増やしたときも、一回ごとに休んで身体の様子を見ることになった。五回使わなければいけないわけでもない。

だから僕自身は、魔力を使えなくなるところまで試したことがない。

ミーニャはそこまで使って、翌日になっても身体が重かった。

同じことが僕にも起きるとは限らない。

《緑恵》と雷は違う。

魔力量だって同じかどうか分からない。

それでも、わざわざ自分で限界まで使って確かめる必要はなさそうだ。

動けなくなるほど使うのは危ない。

「もうやってない?」

「やってないよ。次の日つらかったもん」

「そっか」

それで十分だった。

ミーニャは僕の後ろにいるジルドをちらりと見てから、また僕を見る。

「クロードは何してるの?」

「金属を加工してもらってる」

「金属?」

「鉄とアルミと鉛を同じ大きさにして、雷がどこに落ちるか比べるんだ」

ミーニャはしばらく僕の顔を見た。

「……変なの」

「また?」

「だって前は石だったのに、今度は金属でしょ?」

「石も調べてるよ」

「やっぱり変なの」

何となく納得がいかない。

でもミーニャに説明しても、たぶんまた同じことを言われる気がする。

ミーニャも野菜を届けに行かなければならないし、僕もいつまでも工房を離れているわけにはいかない。

「ミーニャ」

「なに?」

「また畑、見に行ってもいい?」

「いいよ」

「野菜がどうなったか見たいし」

ミーニャがじっと僕を見る。

「ほんとに野菜?」

「え?」

「石じゃなくて?」

一瞬、返事に困った。

畑へ行ったら、たぶん石も見る。

「……石も見るかもしれない」

「やっぱり」

ミーニャは笑った。

「変なの」

そう言って、野菜の籠を抱え直す。

「じゃあね、クロード」

「うん。またね」

ミーニャは宿屋の方へ歩いていった。

その背中を少し見送ってから、僕も工房へ戻る。

戻った頃には加工が終わっていた。

鉄を見本に作ってもらったアルミと鉛を並べてみる。

三つとも一辺十二ミルス、厚さ六ナルミルス。

見た目の大きさは揃った。

屋敷へ戻ると、今度は三枚の重さを測る。

鉄、アルミ、鉛。

同じ大きさでも、持っただけで違いが分かるものもある。

それぞれを順番に測り、結果を『雷の記録』へ書き足した。

寸法。

重さ。

金属の種類。

そこまで書き終えて顔を上げると、もう今から雷を試すような時間ではなかった。

「……今日は一回も使ってないな」

朝には三種類の金属が揃っていた。

でも、すぐに雷を使わなくてよかったと思う。

比べたいもの以外は、できるだけ揃える。

そのために測って、加工して、また測った。

途中でミーニャから聞いた話もある。

目の前には、同じ形に揃えた三種類の金属が並んでいる。

鉄。

アルミ。

鉛。

明日は、この中から二つを並べて確かめよう。

僕は『雷の記録』を閉じた。

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