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閃光の剣士と鬼使いの呪術師 ~魔力が支配する世界にひとりだけ~  作者: 鬼喜怪快


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4話 生まれ変わり


 50体を超えるトロールの群れが、同時に崩れ落ちた。

 炭のように、跡形もなく。


 「……」


 ゴーシは、言葉を失った。


 だが――。


 ――ドン。

 ――ドン。


 地面を揺らす足音。


 家屋を突き破り、2体の巨影が姿を現す。

 石斧を握った、3メートルを超える巨大なトロールだ。


 「よくも我らの眷属を……!」


 「許さぬ……!」


 ゴーシの顔が、青ざめた。


 「あれはキングと……クイーン……」


 「……なるほど、さきほどの群れとは格が違うようですね」


 小角は、モンスターに目を向けたまま呟いた。


 「前鬼、後鬼。おいで」


 すると影が蠢き、2体の鬼が姿を現した。

 その2体の鬼に彼は指示を出す。

 

 「彼らを任せたよ」


 頷いた彼らの戦い――

 それは数回の瞬きの下で終わった。


 トロールの石斧は砕け、

 拳が腹を穿ち、

 氷が動きを奪い、炎が巨体を飲み込んだ。


 トロール達は、悲鳴すら残せず消えていった。


 殲滅した静寂が残る中――

 ゴーシはロッキに剣を構えていた。


 「何者だ! お前は俺の息子じゃないだろ!」


 小角は慌てて答える。

 

 「……落ち着いてください。私はロッキです」


 「ふざけるな! ロッキにこんなことができる訳がない! さっきまで大怪我して死にかけていたんだぞ!」


 小角は、一瞬だけ返答に迷いながら――

 落ち着いて答えた。


 「死にかけて目を覚ましたら……こうなっていました」


 「……ふざけるなよ」


 

 鋭い目つきのまま、剣の切っ先をロッキへむけている。

 当然ながら小角の話を信じていないようだ。

 

 ゴーシは立ち上がりミラの手をひいた。

 

 「ミラちゃん、立てるかい」


 重い空気が流れる。

 そのとき、ミラが震える声で言った。


 「……おじさん……まさか――ロッキくん、生まれ変わりなんじゃ?」


 

 ――生まれ変わり。


 

 その言葉を聞いた途端、ゴーシの手が止まった。

 ロッキへ向けていた刃が、ゆっくりと下がる。


 「……聞いたことありますよね」


 ミラが、震えながら言った。


 「死にかけた人が目を覚ました後、別人みたいな力を持つ話……」


 「……まさか」


 「ロッキ君は、もしかしてそれなんじゃ……」


 小角は思った。


 ……よくわからないが、都合のいい流れだ。


 本当のことを話せば、混乱を招く。

 だが、これなら――

 怪しまれずやり過ごせるかもしれない。

 

 ゴーシはロッキに質問をする。


 

 「お前は、生まれ変わりにあった……ロッキ、なのか?」


 

 小角は、話を合わせるようにゆっくりと頷いた。


 

 「おそらく私は……生まれ変わりにあったロッキです」


 

 嘘ではない。

 だが、真実のすべてでもない。


 しばらく、沈黙に包まれた。


 次に聞こえたのは――

 ゴーシの嗚咽だった。


 彼は泣きながら謝罪を告げてきた。


 「……疑って、すまんかった」


 彼は息子であるロッキを抱きしめた。


 「命懸けで助けに来てくれた息子を……俺は……」


 小角は、流れのまま父の背中にそっと手を置いた。


 ……これでいい。


 みんなを守るための嘘。

 これが今の自分の役目なのだと飲み込んだ。



 

 「うぅ〜ん……」


 そのとき、地面に倒れていたひとりの男が目を覚ました。


 「……あれ? なんで俺寝てたんだ?」


 場の空気が、一気に抜ける。


 「頭いてぇ……二日酔いか?」


 誰も、なにも返せず立ち尽くした。


 ――いつの世もこういう男ほど、長生きをする。


 その場にいた全員が、同じことを思った。


 

 ――――――

 


 夕方、ギルドメンバーが村へ帰って来てから報告会が行われた。


 トロールの群れ。

 キングとクイーンの襲来。


 だが、その討伐報告に対し、ギルド協会の本部は懐疑的だった。

 Cランクの冒険者がひとりと、Dランク数名のメンバーでは討伐不可と判断されたからだ。

 ギルドメンバーの死者が多く、ギルドマスターから本部へ完了報告を上げたが、調査に入るとの返答があった。


 

 「……本部から調査部隊が来る様だ」


 

 村のギルドマスターは、そうみんなに伝えた。

  

 報酬は、一旦保留。


  

 それでも――  

 村は救われ生き残れた者がいた。

 それだけは、確かなのだ。


 

 ――――――


 

 その夜。


 役小角は部屋で1人、この世界の書物に目を通していた。


 魔力。

 モンスター。

 ギルドのランク制度。


 この世界について、知らないことだらけだ。


 「……まずは、知ることからだな」


 明日は村を見て回り、

 ギルドハウスにも顔を出す予定でいた。



 だが翌日――

 その選択が、彼を面倒な騒動へ巻き込むことになる。

 

 ギルド協会本部からの使者と、相見えることになるのだから。





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