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incident44.留守番①

一方、こちらは0係の留守番組。

「ここは平和ねぇ〜。…ズズッ。ん?ちょっと!このお茶ぬるいんじゃないの!?それに渋いわぁ。全く…お茶も満足に入れられないのね!本当に最近の若い子と言ったら…ハァ」

まるで姑の嫌味テンプレートのような事を言いながら窓際でお茶を啜る水留流星29歳(性別:男性)

「だったら〜ご自分で淹れたらどぉですかぁ?『若者』の朱音はスタ◯しか飲まないものでー『年上』の方の好みって分からないんですよぉ。すみませぇん☆」

敢えて『若者』と『年上』を強調してマウントを取ろうとする八神朱音18歳(別名:金色宇宙人)


その言葉に水留は「ふぅ」と息を吐くと持っていた湯呑みを


バリンッ!パラパラ…。


粉々に砕いたー。

「朱音さんには再教育が必要なようね」ニコッ

「ヒィッ!」

笑顔の水留と恐れ慄く朱音。

「それとね、私ス◯バなら…グランデバニラノンファットアドリストレットショットノンソースアドチョコレートチップエクストラパウダーエクストラホイップ抹茶クリームフラペチーノが好きなのよ」ニコニコッ

「かっ、買ってまいります!痛っ!」

「わあっ!すみません!」

急いで部屋を出ようとすると誰かとぶつかった。

「もう、誰よ〜。あれ、原ピじゃん!」

「あ、八神さんでしたか。お疲れ様です…じゃなかった!大変です!!」

原ピとは原木さんの事である。だが原ピはそれどころではない様子だった。

「何を騒いでいるのよ…って原木さんじゃない。どうしたの?そんなに慌てて」

「水留さんも良い所に。近くの解体現場で作業員が急に何かに取り憑かれたように暴れていると通報が入りました。ケガ人も出ているようです」

「どうせブラックな会社で精神に異常をきたしたとかじゃないの?卜部ちゃんの専門じゃない。私達の出番じゃないわ」

卜部とはお忘れの方もいらっしゃるかもしれないが0係のセラピスト・卜部愛理の事である。異形絡みの影響を受けた被害者の心のケアを行っている専門医だ。

「何かに取り憑かれた…。はっ!きっと悪魔の仕業よ。これはスーパーミラクル祓魔師・朱音ちゃんの出番ね!」

「誰がスーパーミラクルな祓魔師ですって?頭がスーパーミラクルの間違いじゃないの。まずはよりひとちゃんに確認を」

「そうとなれば急がなくちゃ。原ピ、案内して!」

水留の話も聞かず(耳に入っていない)グイッと原木の手を引っ張って走り出す朱音。

「え?え?」

「ちょっと。もう!待ちなさいよー!」

二人だけで行かせるのは心配なので仕方なく後を追いかける水留だった。


現場に着くと救急車とパトカーが数台停まっており、人だかりまでできていた。

「す、すみません…すみません。通して下さい。ハァ、ハァ…0係の原木です」

ようやく人混みをかき分け、息切れをしながら警察手帳を見せる。

「あの…こちらのお二人は?」

聞くのも無理はない。一人は派手な格好をした女性にも見える男性。もう一人にいたってはハーフの女子高生である。何とも言えない組み合わせ。本当に心配なのはこの二人だろう。

「アナタ、新人?この美人で名高い検屍官・水留さんを知らないなんて。ちゃんと覚えて起きなさいよ!まぁ、こんな美人忘れられないわよね〜」

「私はぁ、鬼ヤバキャワ〜なスーパーミラクル祓魔師・朱音ちゃんでーすっ!」

「は、はぁ…ですが」

二人の勢いに押される警官。そして申し訳なさそうにする原木。

すると先輩警官が慌ててやって来た。

「すみませんね、慣れてなくて。どうぞお入り下さい…おい、0係は別名魔物の巣窟・珍獣生き物係だぞ。逆らうのはやめておけ。習うより慣れろだ!」途中からは聞こえないように小声だ。

先輩にそう言われ警官は深く考えるのはやめた。


中に入ると一人の若い男が何かを叫びながら暴れているのを警官二人がかりで取り押さえていた。尋常ではない暴れぶり。少し離れた所ではケガの手当てを受けている作業員が数人見える。

そこに躊躇なく近付く朱音。

「ちょっと離れてなさい。危険よ」

水留が止めるもその声は耳に入っていない様子。普段から人の話をちゃんと聞かない方だが今回に関しては違う。真剣な眼差しで暴れる男を見ている。

「この人、過去に精神科に罹った事は?」

「な、ないと思います…」

近くにいた中年の男性が答える。どうやらこの人が現場監督らしい。

「いつからこうなったの?」

「ええと、いつものように作業をしていたら若山…暴れている男です、が土の中から箱を見つけてそれを開けてから様子がおかしくなりました」

「その箱は今どこに?」

「あちらに置いてあります。御札らしい不気味な紙が貼ってあったのであとは専門家に任せると言って」

それで0係が呼ばれたという事か。

話を聞いた朱音は白い手袋を嵌め、例の箱を観察し始めた。御札を見つめ、箱を開けようとする。

「ねえ、鳥居で凛々子さんが来るのを待った方が良いんじゃない?」

「そうですよ、八神さん。ここは係長に相談しましょう」

危険だと止めに入るが箱の中身を見た朱音は顔色を変え、二人に告げる。

「あの距離から鳥居を使うとなると力をかなり消耗します。この悪魔祓いは消耗戦になるかもしれませんので今回はこちらで対処しますから。あと、水留さんは儀式に参加して下さい。医師の同伴が必要です」

「…了解」

「分かりました」

いつもとはまるで別人のような朱音の表情と態度に水留と原木は従うしかなかった。


その後朱音は礼服に着替え、誰かに連絡を取っていた。

「…So,that’s okay.Thank you!」

「誰と話してたの?」

「お祖父ちゃんです。儀式を行うには責任者・司教の許可が必要なので、話を通してもらうんです。お祖父ちゃんは偉い人だから大体の人は言う事聞きますよ」ニヤリ

このときばかりは悪い顔をする朱音。もしかして敵に回してはいけない人達なのか?

「さて、準備も整いましたし儀式に移りましょう」

「そっ、そうね」

今のは聞かなかった事にしよう。平和と美と三千院を愛する水留であった。

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