74話 後半戦・その1
後半戦が開始された。
前半と違い、後半はポジションを変更している。
俺は前に出て、カナデとタニアも前に出てもらう。
ディフェンダーはソラとルナの二人だけ。
キーパーはニーナで、そのサポートとしてティナがその頭の上に。
そんな攻撃的な布陣で挑むことにした。
相手はかなりの強敵だ。
これくらい前に出ていかないと点は取れないと判断した。
「よし! みんな、がんばろう。まずは一点だ!」
「「「おーっ!!!」」」
まずは敵がボールを持つ。
フィールド中央に置かれたボールを軽く前に蹴り、そのままドリブルを……
……いや、違う!?
右足を大きく後ろに振り上げて……そして、一気に放つ。
ボールの真芯を捉えた正確かつ強烈なシュートは、カナデとタニアの間を駆け抜けて、ソラとルナの頭上を飛び越えていく。
下から上に浮き上がる軌道で、ボールが空高く舞い上がる。
強烈な回転と速度でボールがぶれて見えていた。
危ない。
あんなものを叩き込まれたらどうなっていたか。
とにかく、あの勢いならライン割れは確実。
高さ故に誰もタッチできない。
俺達のボールになる。
敵は強い。
慎重に攻めていかないと……
「レイン、まだ!!!」
「なっ……」
カナデの悲鳴のような叫び。
それに反応して上を見ると、敵選手が空を飛んでいた。
いや。
人間離れした跳躍を見せて、高く舞い上がるボールに追いついていた。
「そんなバカな!?」
普通の人間があんなに高く跳べるはずがない。
カナデのような猫霊族でもないと……
くそ、考えるのは後だ。
とにかく今はディフェンスに撤しないと!
「落ちろ」
敵選手は空中でトリッキーに回転しつつ、舞い上がったボールを蹴る。
いや、叩き落とす。
空から落ちてくる雷の如く、ボールが勢いよく迫る。
「こっ、のぉおおおおお!!!」
地上で待っていたら間に合わない。
俺も跳んで、タイミングを合わせて蹴撃を放つ。
しかし……
「ぐっ……ううううう、お、重い?!」
ボールを捉えることはできたものの、蹴り返すことができない。
重い。
ひたすらに重い。
まるで鉄球だ。
それだけじゃなくて、ボールが獣のように暴れている。
必死に抑え込もうとするものの、まるで言うことを聞いてくれない。
どうにかこうにか蹴り返そうとするが……
しかし、失敗してしまう。
「うあ!?」
「「「レイン!?」」」
暴れ馬のようなボールに弾き飛ばされて、視界がぐるぐると回る。
ズンッ、という衝撃。
地面に落ちたのだろう。
鈍い痛みが走るものの、それは無視。
慌てて起き上がりゴールを確認する。
「ボールは!?」
「だい……じょうぶ」
ボールはニーナの亜空間に吸い込まれていた。
ゴールの手前、左右に亜空間の入り口と出口を設置して……
その間でボールを行き来させる。
とんでもない威力を誇るシュートだけど、さすがに、その威力は永遠に続くことはない。
同じ場所を何度も行き来させられて、次第にボールの速度が遅くなり……
「ほい」
ティナが念動力でボールを完全に制止させて、ニーナがキャッチ。
ナイス連携プレイだ。
「ふふん、ウチらの鉄壁の守備はそうそう簡単には崩せんで」
「せんで」
ティナがドヤ顔をして、ニーナがそれを真似した。
ただ、それも少しの間だけ。
二人共すぐに真面目な顔になる。
「レイン。気を……つけて」
「あいつらの身体能力、完全におかしいで。いや、まあ、レインの旦那もおかしいんやけど……とにかく普通やない。カナデやタニアと同じ……あるいは、それ以上かもしれん」
「そう、だな……でも、普通の人間にしか見えないんだよな」
「なにかカラクリがあるかもしれへんけど……」
「……ごめん。まだ、なにもわからない」
ティナが期待を込めた視線を向けてきて、俺はそれに対して首を横に振る。
「ただ、負けるつもりはない。絶対に勝つ」
「その意気やで」
ティナはにかっと笑い、気合を入れるように俺の肩をぽんぽんと叩くのだった。




