89.商談開始
面接の翌日、俺はドンクさんとダンクさんにお願いして、商業ギルドへ向かった。
「ワシは難しい事はわからんぞ?」
ダンクさんが、前を歩く俺に向かって後ろから言ってくる.
「大丈夫ですよ。ギルドの人も同席してくれますから」
俺はそんなダンクさんに、後ろをチラリと見て言った。
「だがイワン商会といえば、ワシでも知っている大店だぞ?坊主ごときがまともにやり合える相手ではないと思うがな」
ドンクさんがフンと鼻を鳴らして言った。
「そうかもしれませんけど、こう見えて俺も商談の経験はそこそこあるんですよ?」
まあ・・前の地球での経験だけど。
「まあ何にしても、多少の経験で通用するような輩ではないことを肝に銘じておくことだな」
「はい・・・」
そんな話をしながら歩いていると、ギルドへと到着した。
「おはようございます」
受付に向かい、声をかける。
「あっ!おはようございます。お待ちしておりました」
ほぼ、俺専属となっているルシアちゃんが書類から顔を上げ、笑顔で応えた。
「こちらへどうぞ」
俺たちは、ルシアちゃんに、例の階段脇の応接室へと案内される。
初めて入るなあ・・。
まあ、天下のイワン商会との商談だし、こういう扱いになるのも当然か・・。
「失礼いたします。『ふじの湯商会』のマモル会頭様と、『ダンク&ドンク兄弟工房』のダンク様とドンク様をお連れしました」
部屋の扉の前に到着すると、ルシアちゃんがノックをして中へと声をかける。
あれ?
工房の商号が変わっているぞ?!
「どうぞ」
すると、中から男の人の声が応えた。
聞いたことの無い声だな・・・イワンさんでもないし・・。
「失礼します・・どうぞ」
声に従って、ルシアちゃんが扉を開けて一礼し、俺たちに中へと入るように促した。
俺は若干ペコペコしながら、ドンクさんたちはいつもと変わらぬ様子で中へと入っていった。
「やあ、よく来てくれましたねマモルさん!」
すると、ソファーから立ち上がり、イワンさんが満面の笑みで出迎えてくれえた。
「きょ、今日はよろしくお願いします」
握手を求めてくるイワンさんの勢いに、若干押され気味で俺は挨拶した。
「こちらこそよろしくお願いします!・・それと、ダンクさんにドンクさん。お会いできで光栄です!」
そう言いながらイワンさんは、今度はドンクさん達に握手を求めに行く。
「イワンさんは、ダンクさんたちをご存知だったんですか?」
「勿論ですとも!お二人とも腕は超一流の職人でありながら、大商会の仕事はやらない伝説の仕事師と噂されている方々ですよ!」
「そ、そんな凄い噂が・・・」
「ぬはははは!噂なんてそんなものは当てにならん!」
ダンクさんが、鼻の穴をおっ広げてふんぞり返っている。
「ワシはそんな噂は知らん!」
ドンクさんはそう言って、ソッポを向いている。
「・・ご挨拶はそのくらいにして、お話の方を進めましょうか?」
俺たちが立ったまま、そんなやり取りをしていると、イワンさんが座っていたソファーとは別のソファーから声がした。
「す、すいません!・・あなたは?」
声のした方を見ると、見かけない男の人が立ち上がった。
そういえば、さっきの声ってこの人だ・・。
「申し遅れました。わたくし、当ギルドの副ギルドマスターを勤めております、パースと申します」
そう言って、パースさんが俺の方を見ながらピシッと一礼して来た。
短く切り揃えられた金髪で、スラリとした超イケメンだ。
・・なんか悔しい。
「本日は、ギルド側の担当としましてこのルシアと、わたくしパースが同席させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
ルシアちゃんと二人で、再度一礼した。
「ど、どうも・・こちらこそ、よろしくお願いします」
「副ギルのパースさんは、昔からの私の担当をしてもらってましてね。今回もお願いしたんですよ!」
戸惑う俺に、イワンさんが笑顔で教えてくれる。
「だからと言って、あくまで公平中立な立場から助言をさせていただきますので、ご安心ください」
そう言って、パースさんがニコリと笑う。
う~ん、イケメン!
じゃなくて!
「ハハハ・・相変わらずだねえ。だからこそ、長年信頼して付き合っているのだけどね」
密かにツッコミを入れる俺をよそに、イワンさんも爽やかに、ニコリと笑うのだった。




