68.迷子?
「ありゃ!お前ついて来たのか?」
そこには、尻尾をブンブン振りながら足にまとわりつく、さっきの仔犬がいた。
「かーわいい!」
リンが声を上げてしゃがみ込み、その仔犬を撫ではじめる。
「おい、大丈夫か?」
ネイサンが慌てて声をかけるが、もうすでに遅い。
「大丈夫みたい!」
一緒になってしゃがみこんだキースが、手をペロペロ舐められながら答えた。
「迷い犬?どこかの飼い犬でしょうか?」
ポールがメガネをクイッと上げる。
「そうかなと思って、置いて来たつもりだったんだが・・」
2人に撫でまわされている仔犬を見ながら言った。
「でもこのコ。マモルさんのこと、すっごい気にいっちゃったみたいですよ」
2人の手をすり抜けて、俺の足に再びまとわりつく仔犬を見て、リンが言った。
「みたいだな」
ネイサンが腕をくんで、大きく頷いている。
「困ったな。どうすればいいんだろ・・」
「とりあえず、今日のところは保護しておいて、明日ギルドとかに相談したらどうですか?」
ポールが言い、他の3人がうなずく。
「そ、そうだな。仕方ない、そうするか・・」
「じゃあ。ボク、抱いてみていい?」
そう言って、リンが仔犬を抱き上げる。
素直に抱かれているな・・。
「う~ん。とりあえず、ザイル婆さんのところに行って、ついでに心当たりがないか聞いてみるか」
「「「「了解!」」」」
「知らん」
「そうですか・・」
番台にいたザイル婆さんのところに行き、その仔犬を見せると、にべもなくそう言われた。
そのあと、その日の仕事を片付けるまでリンたちが付き合ってくれて・・というか仔犬の面倒を見てくれて、俺はその仔犬を抱えてベイルの宿へと帰ったのだった。
「ただいま~」
「あら、マモルさん。お帰りなさい・・って、その仔犬・・仔犬よね?どうしたの?」
帳場にいたシンシアさんに声をかけられた。
「ええ。それが・・・ついて来ちゃいまして・・」
俺は苦笑いしつつ、頭に手をやった。
「今晩だけ、部屋に入れてもいいですか?明日、飼い主を探しますんで・・というか、こいつの飼い主に心当たりありませんか?」
「部屋に入れるのは構わないけど。テイマーもうちには泊まることもあるし。心当たりって言われても知らないわねえ・・・」
「ありがとうございます。そうですか・・心当たりはないですか・・」
「キューン、キューン」
「あら。そのコ、お腹空いてるんじゃない?」
「え?そういえば、何も食べさせてない!」
「ウフフ。確か、ミルクと食べ残しのパンがあったはずよ。いま持ってくるわね」
器にミルクを入れて、固くなったパンを浸してやると、仔犬は勢いよくそれを食べ始めた。
「やっぱり、空いてたのね」
「みたいですね」
ちょっと悪いことしたな・・。
微笑みながらシンシアさんが、その仔犬の頭を撫でているのを見ながら、俺はそう思った。
「ありがとうございました」
仔犬が食べ終わったのを見て、俺はシンシアさんにお礼を言った。
「いいのよ」
「じゃあ。明日は商業ギルドと冒険者ギルド、それと村長のところをまわって、飼い主のことを聞いてみます」
「その方がいいわね」
「そろそろ、部屋へ行きます」
「ええ。おやすみ」
「おやすみなさい」




