表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/96

67.出会い


「温め終わりましたー」


「お、ありがとさん!忙しいのに、すまないね」


「いえいえ。銭湯を始められたのも、皆さんのおかげですから」


「ははは。じゃあ、あしたも頼みますね」


「はい!では、またあした」


「ああ、おやすみ」


俺は、日課の個人宅まわりを終えて、銭湯へ戻るために暗い路地を歩き始めた。


いまや、個人で自宅の風呂を使っているのは5軒ほどとなっていた。


しかも、ドンク工房製の給水、給湯システムをすべての家が導入していた。


だから、貯水槽に水を溜める作業自体は、各家の下働きの人がすでに終えていて、俺はお湯の方を温めてまわっているのだった。


街灯のない村の路地は、家々から漏れる灯りだけが唯一の光源だった。


空には生憎と、月はなかっった。


10分ほど歩いて、路地の角を曲がった。


「キャン!」


俺は何かにつまずいて、前のめりに転んだ。


「な、なんだ?!」


薄明かりの中に、ぼんやりと茶色い塊が動いた。


「クゥ~ん」


その塊が、小さく鳴いた。


「えっ?!」


よく見ると、体長40~50cmほどの獣みたいだ。


妙にムクムクしている。


俺は、そっと近づいてしゃがみ込んだ。


「クゥ~ん、クゥ~ん。ハッハッハッ」


「なんだ犬か」


茶色というかキツネ色に近い毛色で、長くはないが短くもない艶やかな毛をしている。


耳は両方とも垂れていて、尻尾は15cmはあるだろうか?


ぱっと見は、ゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバーの中間という感じかなあ・・。


「ああ。そういや、フラットコーデットレトリバーってのもいたな」


でも、特徴的なのはその目の色だった。


レトリバーって、だいたいは黒か茶色の目をしていると思うんだけど、この仔犬は綺麗な青みがかった銀色の目をしていた。


「クンクン。クンクン」


仔犬は、しゃがみ込んだ俺の足にまとわりついている。


「おい。お前はこんな所で何をしているんだ?」


俺はそっと手を伸ばして、頭を撫でてみる。


うん、いい感触だ。


「クンクン。フシュッ!」


伸ばした俺の手の匂いを嗅いで、可愛らしいクシャミをする。


そして、そのまま俺の指先をペロペロと舐め始めた。


「こんな夜に出歩くと危ないぞ」


どっかの家で飼われていたのが、脱走してきたのだろうか?


でもこの世界では、あんまりペットを飼う習慣はなさそうなんだよな。


前の世界と同じで、馬、牛、豚、鶏といった家畜は普通にいるんだけど、犬猫が飼われているのをほとんど見かけないんだよ。


村や町の外に出て野生化すると、何かの拍子に魔獣化してしまうみたいなので、そういったリスクを避けるためにも家畜以外は身の回りに動物・・というか獣を置かないという考え方なのだろう。


俺の予想だけど・・。


それでも、まったく獣がいないかというとそんなことはなく、もちろん犬猫を飼っている人も稀にはいるし、冒険者にはテイマーという#能力__スキル__#持ちの人もいて、その人たちは様々な獣や時には魔獣をテイムして#連れまわし__使役__#ている者もいる。


「ほら、早く家に帰んな」


俺はまとわりつく仔犬の頭をひと撫ですると、立ち上がった。


「じゃあな」


仔犬とはいえ、ひと時の自由に満足すれば自分で帰るだろうと思い、俺は再び先頭へ戻ろうと歩き出す。


飼い主の家も、そんなに遠くないだろうしな。



10分ほど歩いて、ようやく銭湯の明かりが見えてきた。


入り口までくると、ちょうどリンたち『アトラスの牙』の面々が出てきた所だった。


「「「「「あ、マモルさん。お疲れ様です!」」」」」


俺の姿に気がついたみんなが、声をかけてくる。


「よう、ご苦労様!」


俺は、笑顔で右手を上げて応えた。


「あれっ?!マモルさん、どうしたんですか?そのコ」


「え?」


リンに足元を指差されて、俺は視線を落とした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ