表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/96

39.出来上がり!

「完成だ!」


2日後の夕方、夕焼けで西の空が染まる頃、ドンクさんが俺の方を叩いて言った。


中央広場に面した入り口には、ザイル婆さんの雑貨屋に発注した暖簾が静かにたなびいている。


『ふじの湯』


いい感じじゃないか!


「ありがとうございます!」


俺が勢いよく頭を下げると、ドンクさんたちが笑顔でうなずく。


「さ、いつまでここにいるつもりだ?中を確認してみろ」


暖簾を眺めながら、感動して固まっている俺にドンクさんが声をかける。


「そ、そうですね!」


工事中に個々の箇所については、その都度確認したりはしていたが、全体を通して完成形を見るのは初めてだ。



滅茶苦茶ワクワクするなあ。



俺は、改めて建物を見あげた。


入り口は元々、建物の正面に対して真ん中にあったが、今はやや右に寄っている。


これは、左側に浴室を並べて配置したためだ。



目線を戻すと、ドキドキしながら暖簾をくぐった。


目の前には、幅3mほどの広めの廊下が奥へと伸びていて、突き当りに上階へと続く階段が見える。


廊下の右側は壁になっていて、上方に窓が連なり、オレンジ色の外の明かりが柔らかく差し込んでいる。


こちら側は東向きなので、今は反対側にある夕日の明かりが関節的に入ってきているのだ。


その窓の下には、数メートルおきにベンチが置かれてる。


そして、廊下の左側には引き戸の入り口が、2つ並んでいる。


引き戸はこの世界には無かったのだが、扉では銭湯のイメージに合わないので、ドンクさんにお願いして作ってもらった。


当然、入り口のところには、『男湯』と『女湯』の暖簾がかかっている。


ただ、これだけだとこの世界の人たちには分からないと思うので、戸の横っちょに、こっちの文字で同じように、男湯、女湯と書いた札を吊るしてある。


「ま、その内みんな慣れるだろ」


俺はとりあえず、『男湯』と書かれた暖簾の戸を開いて中に入った。


入ってすぐの右側に番台がある。


「うん、女湯は見えないな」



そして目の前が脱衣所。


壁には棚が作りつけられていて、脱衣カゴが置いてある。


部屋の真ん中には、ベンチが3つ。


ほぼ完ぺきだけど・・・足りないのもあるなあ。


体重計も無いし、扇風機もない・・マッサージチェアもあればなあ・・。


「あ!コーヒー牛乳も無い!!」


「なんだって?」


しまった、心の声が・・。


「い、いえ。なんでもありません!い、いい感じで仕上がってますね!」


「だろう!」


探せばあるのかなあ・・。



「よし、いよいよ・・」


俺は、浴室へと向かった。


ガラスをはめ込んだ引き戸(これも作ってもらった)を開けて、中へと入る。


すると、タイル張りの床の向こうに大きな浴槽がデーンと横たわり、目線の先には隣の女湯まで続く壁一面に、富士山の絵が大迫力で描かれていた。


「す、素晴らしい!」


思わず感嘆の声を漏らした。


何度も見ているはずなのに、この感動はちょっと来るものがあるな・・。


「ほれ、例の奴も見てくれ」


感動で固まっていると、ダンクさんに背中を叩かれる。


「え?ああ、そうでした」


言われて、浴室壁の方を確認する。


壁側には、ダンクさん渾身の蛇口が並んだ、洗い場がある。


それぞれの蛇口の前には、小さな木製の椅子と手桶が置いてある。


そして・・。


「あれが完成形ですか?!」


蛇口の上の方には、追加でお願いした例のものが設置されていた。


蛇口の途中から生えた、ホースの先に、無数の小さな穴が開いた持ち手のような物・・・。


「出してみていいですか?あ、でも上にお湯溜めてないか」


「だいじょうぶだ、試験用に水は溜めてある」


「そうですか!ありがとうございます!」


俺はダンクさんにお礼を言って、蛇口のハンドルを操作した。


『シャーー!』


すると、見事に無数の小さな穴から水が噴き出した。


そう、俺が追加でお願いしていたのは、シャワーだったのだ。


「凄いです!これはどうやって作ったんですか?」


俺はホースの部分を、クネクネ折り曲げながら聞いた。


「おう、そこか!坊主に言われた感じの管は、さすがに普通じゃ作れないんでな、ためしに魔獣の腸で作ってみたらうまくいった!」


「なるほど!」


これが、魔獣の腸ねえ・・・すげえな。



「よし、浴室も完璧ですね!」


「「あたりまえだ!」」


「じゃあ、女湯も一応確認してから、2階のお休み処を確認しますか!」


「「おう!」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ