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仮面舞踏会

私はこっそり部屋から抜け出した。階下にはアレクが待っていて、セインは今は眠っている。ディーノは多分お仕事。帰って来てないからわからない。何していても関係ないけど。


「やあ、嬉しいよ。来てくれてありがとう」

今日は流石に目立つと思ったのか、白じゃなく宵闇のような濃紺の服だ。鮮やかな赤髪だけが夜の中燃えるように見える。

「いえ。こちらこそお誘いありがとうございます」

「…良いのかい?ディーノには内緒なんだろう?」

「ええ。大丈夫です。…恋人でもなんでもないもの」

「そう?…せっかく君が来てくれるのなら無粋な真似はしないことにするよ、さあ行こう。はじまるのは夜半過ぎとはいえ、女性には準備があるからな、行こう」

「はい」

私は頷いた。



そこはまるで別世界だった。彩り鮮やかな衣装を身に付けた人々がひしめきあっている。混じり合った香水の匂いがする。私は入場時に渡された蝶モチーフの仮面をつけて会場を見渡した。

「すごい…」

「驚いてくれた?」

アレクは獅子モチーフの仮面を身につけている。金色の鬣がふわりと揺れた。

「えっと、私踊ったり出来ないんですけど、どうして居たら良いですか…?」

「なんでも、雰囲気を楽しむなり、身分不問の夜だから社交を楽しんでも良い。君の好きなように」

勢い込んできたものの、私みたいな村娘がこんなところに放り込まれてもどうして良いかわからない。

「不安なら僕がずっと一緒に居よう」

ぎゅっと右手を握られる。温かい手だ。

「…ありがとうございます」

「ほら、主役の登場だな」

私はふと示された方向を見て驚いた。輝く金色の髪に黒衣、マントを身につけ、隣には金髪の美しい姫をエスコートしている。黒の仮面を身につけてはいるけれど…あれは勇者ディーノだ。


「…私には来たらダメって言っていたのに」

独り言のように呟く。アレクはもう一度ぎゅっと手を握ると言った。

「彼を庇うわけじゃないが、エスコートしているのはこの国の姫君、第一王女クラリス姫だ。護衛でも頼まれたんじゃないかな。…ディーノはこの国の王の頼みには弱いようだからね」

「そうですね。綺麗な人」

2人が先導するように階段を降りて護衛らしき人が囲むように歩いている。ふわふわの金髪で、猫モチーフの豪華な仮面をつけていても、どう考えても、どの角度から見ても美人だった。

「…魔王をも魅了した姫だからね。1年前に奪還された時にはだいぶ憔悴していたと聞いたが…お元気になられたようだな」

獅子の仮面の下の口元は楽しそうに笑っている。


「アレクさんはお姫様に会ったことがあるんですか?」

「あるよ。儚げな人だったね。綺麗だけど僕の好みじゃなかったな」

「…どうしてディーノさんは婚約を断ったんでしょうか?」

「サンディガル国王には今2人の美しい娘がいるが、王子はいない。第一王女の婿になるということは王様になるということだからね。あいつは王様なんかやるような人間じゃないし、単純に好みじゃなかったなんじゃないか?」

ふっと笑ってしまう。

「そんな理由?」

「人が恋に落ちたり落ちなかったり、その理由は単純さ。僕が君に一目惚れしたのもそうだね」

「あら、ありがとうございます」

「つれないなぁ。姿は可愛いのに、そういうところも燃えるな」



「お前は何している」

「やぁ、ディーノ。君ならすぐに気がつくと思ったよ。大事なお姫様は放っておいて良いのかい?」

背後からいきなり現れた姿にアレクは軽口を叩いた。

金髪に黒衣、目を黒いマスクで覆っているディーノだ。近くじゃないと分からなかったけれど、黒豹モチーフみたいだ。

「…ディーノさん」

私はポツリと言った。流石に罪悪感を覚える。

「シャルロッテ…あとで話は聞く。君はすぐに帰るんだ」

「いやです」

「…どうしてだ。またの機会に連れてくると約束したろう?」

「ディーノさんは良くて、なんで私はダメなんですか」

「シャルロッテ」

「君の負けだよ。ディーノ。早くお姫様のお守りに戻ったらどうだい?」

アレクの目が挑戦的に輝いた。

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