白のお誘い
「やあ」
(お前何処から入ってきたんだよ)
「アレクさんこんにちわ」
庭でセインとお茶をしていたら当たり前のように白の騎士が入ってきた。この人出禁の怪しい不審者じゃなかったっけ?
「ひどい言いようだな」
(いや、だからどうやって入ってきたんだよ。ディーノが侵入者防止の結界張っているはずだろ)
「このくらいの広さになると綻びも出てくるさ」
(どう考えても侵入者じゃないか。いなおるなよ)
「あの、お茶、要ります?」
慌てて立ち上がって茶器に手を伸ばす。
「いや、それより君に招待状があってね」
私は封筒を受け取った。
「仮面舞踏会?」
封筒の表側に書かれた文字を読み上げるとうん、と頷き端正な顔で笑った。
「私、衣装も何もないですし」
「僕が全部用意するから大丈夫だ。どうせあの朴念仁はこの屋敷に君を閉じ込めているんだろう?気晴らしにどうかと思ってね」
「えっと、一応ディーノさんにも相談して良いですか?雇い主ですし」
「…雇い主なのかい?友人でもましてや恋人でもなくて?」
不思議そうに白の騎士は聞いてきた。
「ええ、私はセインのお世話とお料理してお給金を頂いている身ですから」
「…まあ、良いさ。それでは後日返事してくれ。返信用の便箋ならその手紙の中に何枚か入っている。すぐに僕の元に着くから心配要らないよ」
というと、去っていった。
(あいつ、本当にお姉さん気に入ったんだなぁ。ディーノに対抗意識燃やしてるだけかと思ったらそうじゃないみたいだ)
分厚い封筒に入った招待状を握りしめた。
「絶対駄目だ」
ディーノはまた器用に笑顔で怒っている。心なしかさらっとした金髪も逆立っているかのように見える。
「本で読んだことがあって昔から興味あるんです。だから出来れば行ってみたいんですけど」
「…今度仕事が落ち着いたら僕が連れて行ってあげるよ。あいつと一緒に仮面舞踏会なんて、何されるかわからないよ?」
(お前だって一緒じゃないか。それよりなんで白のが自由にこの屋敷出入りするんだよ。しっかりしろよ。ディーノ)
「これ以上重ねがけすると出入りの業者も入れなくなるんだ。止むを得ずだ。セイン」
「どうしても、いけませんか?」
近くで若草色の目を見上げると動揺でかすこし揺れた。
「シャルロッテ、君にそう頼まれると許したくなるけど、駄目だ。僕は今国王から頼まれごとがあって…ああ、くそ、こればっかりはどうにもならないんだ。必ず別の機会に連れて行くと誓うからすこし待ってくれ。お願いだ」
(…お姉さん、こいつがここまで言うんだ。今回は諦めてやってくれないか。お姉さんの希望だからきっと叶えてやりたいとは思っているよ)
「…はい」
私はアレクから渡された便箋に文字を書いてすこし待った。光に包まれて消えて行く。
(お姉さん、ごめんね。いつも余裕面のあいつがあそこまで追い詰められているとなるとまた国王から無理難題言われているのかもしれない。…前にこの国の姫を助けた時に婚約を迫られて一度断っているから風当たりが強いんだ。それでも、この国に居るのは何か理由があるのかもしれないけど…お姉さん?)
「うん、聞いているわ。セイン」
(アレクは人当たり良さそうに見えるかもしれないけど、危ない奴だよ。気をつけてね。お姉さん…)
「わかっているわ」
昨日見たディーノとルクレツィアの楽しそうな笑顔が脳裏をチラついた。なんでだか、イラっとしてしまった。私だけ理由もなく行動を制限されるなんて納得いかない。




