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「おお!元気そうだな……柳!」
「……隼か、久しぶりだな!変わって……無いな!」
「無いのかよ!変わっただろ!高校卒業して、えっと、……2年経ったんだぞ」
「ああ……、卒業後にたまたま見かけた時金髪に変わってたけど、黒に戻したんだろ。普通が落ち着くよな」
「……。金髪って、モテないのな……」
「……そりゃ、なんかイキッてる感じがねぇ」
「……金髪怖い」
「あ、奈都に……鈴か?おお、見ろ。変わるって、ああいうのを言うんだ隼」
「こんばんは、柳、隼」
「こんばんは、奈都さん。おお……鈴って、そんなんだったか?……化粧か、化けたな」
「馬鹿隼!綺麗になったと言いなさいよ。化粧は女の身嗜みよ」
「それで、同窓会の会場ってどっちだっけ。もう、20分前」
「奈都は相変わらず方向音痴か。もう見えるぞ」
「そうよ、今日も駅で……え?」
「トラック!?」
「っ!」
「鈴ッ!!──」
「…………おお、成功か……?」
「……え?」
ここ、何処だ?確か、高校の同窓会が合って。
先にシュン達と待ち合わせ……そうだ。シュン達は!?
はだ、か……?
「ちょ、幾ら親友でもオレに男色の気はない……って、オレも全裸ぁ!?」
「キャーッ!」
「嘘……──(バタン)」
「は?」
それから俺達は身を隠す物を貰って、何か偉そうな人達に連れていかれた。個室が有るらしいけど離ればなれは不味いと混乱の中でも思い、とりあえず男女別の部屋とちゃんとした服を貰ったけど。
「これって」
シュンも思ったのか、俺の方を向いて戸惑ったように口を開く。
「なあ、ユウは勇者召喚って知ってるか?」
やっぱり。ここまで、幾人かから勇者と言う言葉が出た。
けれど、向こうも何か不測の事態が起こったのか丁重であれど放置されぎみだ。
「召喚も転移も転生も知ってるし、不味いパターンも知ってる」
「ああ……。で、そこのあなたは?」
シュンが尋ねたのは、俺の後ろに居た。……気付かなかった。俺も動揺してたみたいだ。
「……ボクも召喚された者です」
白い。目だけが紅く目立つ……!
「そう言えば、シュン!お前目が……瞳が紅いぞ!?」
分からない。分からない事だらけで、思考が散るのが自覚出来る。何から確認すれば良いのかも分からない。知らない人が居るが、ただ、親友の異変にはっきり気付けばそれに気を取られる。
「あの」
白い人の声で、思考まで白くなるような感覚。
考えが途切れる程落ち着いた声。
何でそんなに冷静なんだ。
「一旦落ち着きましょう」
「そうだ、よく分からないがユウは考え過ぎだ」
考え過ぎって、なんだ。
俺はシュンを心配しているのに。
知らない場所なんだ、考え過ぎる事なんて……。
「まず、知ってる情報と、召喚直前との差異を教えてください」
「ああ、俺達は同窓会で待ち合わせしてたんだ。で、気付いたら全裸でここ。それと、俺自身で目は見えねえが、元は黒に近い焦茶色だ。ユウも黒目の筈だが、紅いな……。これ、何かやべえやつなのかな」
白い奴の声と、シュンの不安そうな顔を見るとだんだんと落ち着きが戻る。
「……俺も、直前の出来事が夢だったように……、直前。トラックが、目の前、に……」
「そうだ。俺は死んだ筈じゃ……」
「落ち着いてください。ここに来る前に、死んだって事ですか?」
「あ、ああ。あなたは、何でそんなに落ち着いてられるんだ?」
逆に不気味だ。だけど、パニックにならないのは、一人だけでも冷静なお陰かも知れない。
白髪って言うより元々白い色なんだと思わせる透き通る程の白い髪、日本人じゃなさそうな白い肌。特徴的な紅い目。
「あなたは?日本人じゃなさそうだけど……俺達ばっかりじゃなくて、あなたは何か……」
白い人は、感情を持って居ないかのような無表情で言う。
「ボクは……。ボクの名前はレイ。ニホン?の事は……分かりません……。何も……」
「まさか……記憶喪失?」
シュンが言うには召喚された直後、レイさんも全裸であの場に居たらしい。俺達以外は服を着ていたっぽいから、レイさんも召喚されたと考えるのが自然だろう。
それに、多分異世界だからだろうけど、他の人達とレイさんは違う気がするから。
結果。
俺達は勇者と言う種族だった。
と言うより、勇者と言う新たな種族を創ろうとした所に死んだ俺達の魂と言うモノが割り込んだ感じか?
意図的に異世界の人を喚んだ訳じゃないらしい。
向こうも、探り探りではあるが対応は丁寧だし、良い関係を築けていると思う。俺達だって、そのままだったら死んでいた訳だし……。
勇者を創ろうとした目的は、やっぱり魔王が存在するかららしい。
昔は、人間と魔物は弱肉強食。喰らい喰らわれの均衡のとれた関係だったが、突然魔王が現れ魔物を強化して、人間が押されている状況らしい。いずれ、人間は魔物にのみ込まれると。
「これも、弱肉強食なんじゃないの?何で私達が戦わないといけないの!?」
「だから、結界の内部に入れるのが」
「そうじゃない!ほっとけば良いじゃない。私達に関係ない!」
「そ、そうだよ。不手際だって、王様が生活の保証してくれるんでしょ?」
リンやナツが戦いに反対する。
一応、勇者として魔王と戦う事を打診されたんだ。
けど……
「なあ、王様は不手際って、言ってくれたけど俺達が割り込んだとも言えるんだ。じゃないと、元々俺達は死人だぞ?」
「今、生きて……」
「生きて!いるんならさ、その生きる世界を守るのは当然じゃないか?それが、俺達にしか出来なくて、俺達に出来る"力"が有るのならなおさら」
「でも……怖いよ……」
「!……いや、悪い。そうだよな……、異世界に来て興奮してたかもしれない。……俺は、多分一度死んで、怖いとか分からなくなったんだと思う。本当の俺は死人で、本来なら死んでいた。なら、今更死ぬのを怖がるのもなあって。けど、確かにいつか死ぬなら、勇者に……。いや……。とにかく、俺は魔王を倒しに行く。でも、リン達に無理強いはしないよ」
「ユウ……」
普通は無いんだろう。けど、一度死んだら嫌でも生死観は変わった。人はいつか、死ぬ。なら、死ぬ事を怖がる必要も、魔物と言う生き物を殺す事を怖がる必要も、無いように感じる。
今はそんな事より、友人達が、友人や自分の子孫達が魔王に怯えず生きられる世界が欲しかったり。
「ねえ」
「うお!」
「!」
「びっくりした。気配消さないでよ、レイ」
白くて特徴的な訳に、気配が無いんだよなあ、レイさんは。
「レイさん?」
「ちょっと調べたんだ。ボク達を召喚した魔法陣。勇者はね、……ヒトとエルフとドワーフとマーマンのキメラなんだ。そして、魔王を倒す為に強化に強化を重ねた。勇者の寿命はきっと、300年生きるこの世界の人間より長い」
それは、リン達に魔王討伐を決意させるに足る言葉だ。
リン達は、俺と逆で再び死ぬ事を執拗に恐れている。人間という種が魔物にのみ込まれるには人間の寿命よりもっと長い年月がかかる。が、勇者と言う存在を作り出そうとしている程度には、人間の種から見て短い。
勇者がどれだけ生きるかは知らないし魔王がどれだけ強いか知らないが、魔物に数でのみ込まれるなら魔王に挑む方が、より生きられるだろう。
数の力は大きいし、人間は一人では生きられない。
俺達勇者はレイさん以外、戦う事を決意した。




