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"賢者"からすれば、人間は見下すべき存在なのかも知れない。
しかし、雑多に数えきれない程の種族の総称である魔物と、たった四種しかない人間が対等な事情は、覆らない。
つまり、なんだかんだ人間は強かった。
「我等が望みに応えよ
喚び出すは
火人でもなく
風人でもなく
土人でもなく
水人でもなく
しかして、人間である
人間は考える頭を一つ持つ
人間は器用な手を一対持つ
人間は支える足を一対持つ
人間は言葉でもって意思の疎通が出来る者である
我等が願うは勇なる者である
我等が願うは強なる者である
我等が願うは正義の者である
開け導け応えよ
<勇者召喚陣>
……おお、成功か……?」
「……え?」
「ちょ、幾ら親友でもオレに男色の気はない……って、オレも全裸ぁ!?」
「キャーッ!」
「嘘……──(バタン)」
「は?」
そこは"魔法使いの国"とも呼ばれる程の魔法技術が発達した国。
魔王こそが元凶であると断定しても、その魔王を封じている筈の"紅の結界"を人間は越えられない。越えられないのが、厳密にはこの世界の種族。ヒト、エルフ、ドワーフ、マーマンに限定されていると辛うじて解析出来た人間は、新しい人間種を創ろうとした。
"魔王"に対抗する新しい種族を、"勇者"と言う。
……筈だった。
何の因果か、4人の勇者は異界の人間であった。
恐らく"言葉で意志疎通が出来る"の条件に知識の無い赤子は引っ掛からなかったのだろう。その上望んだのはこの世界に居ない人間種。なるほど、この世界の種族でダメなら他の世界か。意味が分からない。
異界の人間と言っても、中身だけである。身体は予定通り勇者と言う種族のもの。
彼らは落ち着いてみれば、纏めて事故で死んだ記憶が有るそうだ。目が紅くなった位で身体も大きな変化はなく、むしろ若干引き締まったり近視が治ったと喜んでいた。
「勇者様方、五名のお披露目ですが……」
異界勇者とレイは、召喚から半年。この世界の教育を経て、まずは貴族へのお披露目である。
はい。レイはヒトでもエルフでもドワーフでもマーマンでもない上、人型で言葉で意志疎通出来る。条件を考えるとむしろ召喚されない方が不思議だ。
この場合、勇なるとか正義とかの精神論、条件が曖昧なものは優先度が低い。
「なあ、レイさんは本当に勇者として紹介されても大丈夫か?戦えないんだろう?」
黒髪で日に焼けた肌の異界勇者の一人が声をかける。腰には剣、背中に盾のは確か……
「……ユウ、さん。これは種族の問題だ。魔王と戦うから勇者と言われるのではなくて、この世界では新しい種族だから紹介される」
「……レイさんは馴染んだね。年上だし頼りになるのは本当だけど、名前覚えるの苦手過ぎない?もう半年経つのに、たった5人の勇者すら……。これシュンと武器交換したら間違える説……」
紅いジト目でみられる。
「あはは……」
勇者の目は紅とされる。
髪色は黒と白があるが、揃って紅い目をしている。
火人も近い色を持つが、少し黄色がかった赤や、金色の目だ。
勇者の目は深くそれでいて澄んだ真紅。
目以外、レイだけ白い色をしていても、戦えないと言っても、召喚前の記憶が無いと言っても。召喚の不手際を謝罪されるだけで、勇者である事を疑われない。
それだけ目の紅は特徴的らしい。それはそうだろう。紅は"賢者の石"の色。ヒトやエルフ達の良いところを寄せ集めようとしたのか、属性のバランスがとれた勇者の身体はレイに近かった。
(後、1、2回、引き上げれば第二の"賢者"の完成だなあ。それこそボクを殺して血を浴びれば強制的に段階をのぼりそう)
レイは元々この世界の人間なのに逸脱して歪んだ。
ましてや、既に価値観がずれている異界の人間が逸脱したらどうなるのか……。
(見てみたくは有る……。今からでも修正出来るが、結界はそのままの設定にしておこう。無事、ボクの元にたどり着き血を浴びる実力が有る事を期待しておこうか)
身体能力も頭脳も、召喚時点でこの世界の人間を越えている勇者は、急激に技術や知識を吸収しつつ、それぞれの役割に別れていった。
ユウはリーダー。剣と盾を持ち魔法自身を強化して堅実に戦うが、戦況に応じて指示を出す。
シュンは戦士。めっちゃ物理攻撃担当。魔法は纏う。実は身体強化は一歩間違えると内側から身体を傷付ける危険な魔法で、シュンに向いて無かった。
リンは魔法使い。めっちゃ魔法攻撃担当。物理は身体強化で殴る。シュンの正反対である。
ナツは治癒師。回復、支援、器用に使い分ける。
レイは、戦闘以外で動いた。
ユウ達は特に、レイの情報収集能力に感謝していた。
魔王は結界の内側に封じられているので、スタンピードなどの魔物被害の他は被害はない。
時間は有った。
勇者達は確実に魔王を倒す為、最初の2年を城で訓練に費やし。
いよいよ、初めて魔物を倒した日。
城に戻った勇者達を、レイは出迎えなかった……




