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竜とその仲間たちの話を聞こう

 

 ヴィヴィアンから聞いた話をまとめると。

 王弟に攫われたかもしれない彼女の弟は、リック・フィッチ。

 5歳で行方不明になり、今は6歳になっている。

 とても魔力が多い。買い物中にほんの少し目を離した隙に行方不明になった。


 必死に探した彼女は、王弟が魔力の多い者を集めているという噂を聞いたという。ちょうど時期が一致することから怪しむも、何もできず情報を集めるだけだった。


「ワタシも頑張ったんだけどさぁ、王族じゃあ近づきようもないんだよね。でも助かるなぁルカ様が助けてくれるなんて!さすが王子様!よっ未来の国王様!いやー頼りになるぅ!」


 号泣ののち調子を取り戻したらしいヴィヴィアンは、またガンガン喋り出した。


「あんまりわかりやすく煽てられると馬鹿にされてる気分になるからやめて欲しい」

「あらっ、本気で言ってるのに!ひどい!」

「全く本気とは思えないな……」


 ちょっと遠い目になってしまった。

 なんでこう厄介ごとというのは重なってやってくるのか。

 ライラの母である竜を探しに行きたいし、ゲームの勇者の名で魔王の情報を集めている件も早く調べたいのだが……


「話を戻そう。ヴィヴィアンの弟の件はわかった。王弟が関わっているかどうかについては、調べると約束しよう。それで、俺たちの目的である、人間とともにいた竜の話を聞かせて欲しい」

「あっ、そうねそうでした。さすがに頼むばかりで何も教えないってわけにもいかないよね。でも話しちゃったらもう弟のこと調べてくれないとか無いわよね、情報だけ集めてそれでおしまいなんて事はしないと誓ってくれる?」

「ヴィヴィアン、お前その態度は流石に不敬すぎるとさっきから……」

「ありがとうギルドマスター。ヴィヴィアン、君の弟の事は、王弟もかかわっている事だし、ちゃんと調べるよ」

「そうね、わかりました。お願いするしか無いものね。じゃあ、竜について話すわ」

「頼む」


 そうしてヴィヴィアンが語ったところによると。


 人間とともにいた竜は、2年前に偶然、ヴィヴィアン自身が出会った。森で採集している時に会ったらしい。泉のほとりで休憩していたら、後からその一行が来たらしい。

 竜は、正確には人間の小さい女の子と、ドワーフの男性と、エルフの男性とともにいたという。

 竜は黒に近い紺色。竜と接触はしなかったが、女の子と、ドワーフとは話したらしい。

 何か目的のある旅のようで、次は別の国に行くと言っていた。竜は最近仲間として加わり、共になにかの目的を果たすべく旅していると。


「……たぶん、その竜だよ。黒に近い紺色。それに、確か、大魔法使いっていう人間がいたから……」

「大魔法使いか。エルフがそうなのかな?」

「ううん、たぶんその女の子。母……えーと、その竜のところによく来ていた人間の魔法使いは、女の子みたいな見た目だったから。本当はすごい年令だけど見た目は若いって言ってた」


 それは、ロリババアって奴なんじゃないか……っていうか。あれ。その設定ゲームにも入れたな……勇者たちを鍛える役割で要所に配置していたキャラに……似てるな。


 え。まさか、もしかすると、ゲームに出したキャラクターが実在するんだろうか。

 いやしかし、俺がいて、銀竜もいて、名前だけだが主人公も出てきたからには、他のキャラクターもいるのかもしれない。ゲームの時間軸になるまでにはあと十数年かかるが、年令が高めのキャラクターなら既に存在しているのかもしれない。


 ロリババア魔法使いがそこらへんにたくさんいるとも思えないし。もしかするとゲームキャラクターなんじゃないか?……じゃあ、まさか、一緒にいるドワーフやエルフというのも、各所で武器入手や弓キャラ強化のために配置していたあいつらだったりするんだろうか?


 思えば、まだゲームに出てきたキャラクターと話した事はなかった。

 銀竜はゲーム内では既に亡くなっていたし。

 ソトリア王国自体も滅びていた。王も王弟もゲーム本編の時系列では既にいなかった。


 どうなっているんだろう、この世界に対する謎は深まるばかりだな本当……怖い気もするが、会ってみたい気もする。モデルだけならあるから見た目だけ変化してみる事はできるが、本物はどんな人物なんだろう。


「ヴィヴィアンが会ったのが俺たちの探している竜である可能性が高いな。その、旅の目的については何か言ってたか?」

「それはあんまり言ってくれなかったのよね、気になったからそれなりに突っ込んで聞いてみたんだけど、なんかこう……世界をより良くするために?みたいな?フワッとしたこと言ってたけど」

「世界をより良くするため……確かにフワッとしてんな……」


 もしあのゲームキャラクターのロリババア魔法使いだったとして、あいつはそんなフワッとした理由では動かないだろう。ゲーム中の性格と同じならだけど。


「次にどこに行くとか言ってたか?」

「次とは言ってなかったけど、いくつかの場所を回ってから、最終的にプリーテラに向かってるとか言ってたわ」

「プリーテラに?!」


 それは、ゲーム本編がはじまる場所、勇者である主人公が出立する場所だ。それに今、勇者の名で魔王の情報を求める依頼が出されている場所でもある。


「そうか……その、竜とともにいたメンバーの特徴を教えてくれ」

「えーっと、確かにその小さい女の子は、今思えば女の子にしては妙に堂々としてたし、喋り方もちょっと変だったかも。確か明るい色の髪をこう、ふたつに横で結ってたわ。そういえば旅してるにしては軽装だなぁって感じだった。あ、エルフさんはスラーっと背が高くて、肩はがっしりしてて、色白くて鼻高くて耳とがってて、カッコよかった!っていうか美形?美しい感じ?でも野性味溢れるみたいな?素敵だった!あとは、ドワーフはね、職人っぽい感じ?でっかいハンマー持ってた。ヒゲがモサモサで、背は私より低いくらい」


 ……ゲーム内のキャラと似てるな……

 魔法強化担当のロリババア魔法使い。

 弓強化担当のエルフ。

 武器強化と斧、ハンマー系強化担当のドワーフ。


 だが、彼らはゲーム内ではそれぞれの種族の治める地にいたし、魔法使いは森に引きこもってたはずだ。どういうことだ?


 この世界はゲームじゃない。

 とても似ているけれど……そしてなぜかデバッグモードなんてものが使えるけれど……現実としての時間が流れている。


 はああ。

 つい深いため息をついてしまった。


「ルカ」

 小さな声で俺の名を呼んだライラが、そっと俺の腕をなでる。

 はあ、ほんとライラに助けられてるなあ……

 ライラにありがとう、と微笑みかける。

 ライラも微笑んでくれる。


「ねえ、ルカ様、ライラちゃんと定期的にいちゃつくのは何なの、惚気なの?それともそれが通常運転なの?!というかルカ様が王子のルカ様だとするとライラちゃんは何なの?!護衛とかそういうアレなの?!あ〜気になるぅ!」


 ヴィヴィアンが叫ぶ。


「だいたい話は聞けたかな……あと何か、竜とその一行について覚えていることはあるか?気になったこととか」

「ライラちゃんに関する疑問はスルーなの?!くうっ……そうねえ、気になるといえば、あの小さい女の子のスリーサイズは聞き出せなかったのよね〜エルフさんとドワーフさんは教えてくれたんだけどぉ」

「いやその情報は全然いらないから」

「えー、エルフさん超体格いいよぉ?!」

「求めてないから」

「えぇ〜?!」


 そんなわけで、お互いに話すべき事は話したところで、解散となった。

 ヴィヴィアンには、何か情報を得られ次第ギルドを通じて連絡すること、まだ何もわからなくてもその旨を一定期間後に連絡することを約束した。


 竜をつれた一行と、勇者の名での依頼のことだけ考えればすぐにでもプリーテラに向かいたいが、王弟がもしもヴィヴィアンの弟を攫っていたのなら放置はできない。とくに王弟が拘留されている今、集められたという魔力の強い者達がどうしているのかは、調べておいたほうがいいだろう。


「一旦城に戻って計画を立てよう」

「うん!」


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