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冒険者ギルドの依頼を選ぼう

 

「たくさん石無くなっちゃったけど、大丈夫か……?」


 ギルドマスターがショックを隠せない様子なので心配になってきた。


「ああ……いえ、ルカ様の忠告を聞かずに何度も試したのが悪かったのです。ですが、この方法では魔力の検査は出来ないということはわかりました……」

「そうだな、石が無くなるだけだもんな」

「ぐう……はい、ですので、冒険者ギルドでの魔力検査は出来ません。神殿に申請すれば特殊なスキルを持った者が判定してくれますが……」

「いや、そこまでしなくていいよ。別に、冒険者ランクはFランクからでも良いし。後でランク上げたくなったらまた頑張れば良いんだよな?」

「いえ、この石を消滅させるほどの魔力量を持つ者にFランクの仕事をさせてはギルドマスターの名折れ!とは言え、魔力量のみならばAランクどころではありませんが、ギルドでの実績はまだありませんから、突然高ランク認定は出来ません」


 まぁ、そりゃそうだろうなぁ。

 高ランク冒険者となれば、ある程度の身分証明というか、ちゃんと仕事するって信頼があってのものだろうし。


「……そうですね、ある程度高い魔力量の魔法使いが新しく冒険者登録をした際の仕組みを使うのはいかがでしょう。こちらから提示した、適正ランク見込みの仕事を、問題なくこなせたら、適正ランクとして認めるというものです。幾つ仕事を受けてもらうかは、その内容により相談ですが……」


「いや、だからFランクでいいよ?」


「……依頼をこなしていただいて、せめてBランクくらいからはじめてください!」

「わ、わかったわかった!じゃあそれでいこう。指定の仕事をこなしたら、Bランクで登録する。オッケー?」

「お願いします。では、せっかくですから、指定依頼も決めてしまいましょう。高ランク帯の依頼を持ってきてくれ」

「はい」


 秘書さんが、いくつかの書類の束を持ってきた。


「こちらがAランク、こちらがBランク、こちらがCランクの依頼です。……オススメはこの辺りです」

「おすすめってお前……こりゃ、アレじゃねえか!」

「アレって?」


 ギルドマスターの丁寧な口調が乱れたな。良いけど。


「……ああ、すみません、受注されないまま長期間経った依頼で……危険度の割に報酬が少なかったり、達成が明らかに困難だったりするものですね。たしかにギルドとしては片付けたい依頼ではあるんですが……」

「へえ、どんなものがあるのか見ても良いか?」

「はい、それはもちろん……オススメはこの辺りです」


 秘書さんがおススメと言っていた中からさらにいくつかを選り分けて差し出すギルドマスター。


「お仕事?どんなことするの?」

 隣から覗き込んでくるライラに見せつつ、読んでいく。


「えーと、世界樹の葉の採集……?」

「……そいつは、世界のどこかにあると言われる世界樹を見つけてその葉を採集してくるってやつで……」

「伝説レベルだなそれ、とりあえず保留で」


 実は所持アイテムの中に世界樹の葉はあるのだが。そして実はゲームと同じならば、世界樹の元へ行く道もわかるんだけど。まぁ、他も見てみよう。


「次は、ケルベロスの唾液の納品……」

「ケルベロス自体はとある地方に居ますが、とても強いので……またその唾液は猛毒です。取り扱いを間違えると人間のみならず周囲にも甚大な被害をもたらします。ただ、薬の材料としても需要があるため……」


 ふうん。実はケルベロスもゲームに出てきていた。地方のサブミッションのボスって感じだったけど。


「無しじゃないけど、でもここからかなり遠いな」

「はい……」


「えーと、次は、竜の卵の殻の納品……」

「あの、竜そのものじゃないんで!卵の殻だけ!良い材料になるらしいんですよ!」

「……へえ……竜にとって、卵の殻って要らないものなのか?」

「うーん、産まれた後は、要らないんじゃない?」

「そっか、要らないならもらっても良いかもな?」

「古いのでもよければ、魔の森に落ちてるんじゃない?結構硬くて頑丈だからまだ私の殻とか残ってるかも」

「え、ライラの殻だと思うと変な奴に渡ったら嫌だな……」

「ルカぁ!好き!」

「ぐっ」


 ライラに横から勢いよく抱きつかれた。

 ちょっと苦しい。


「あの……」

「悪い、竜の卵の殻もちょっと保留で。えーと後は……何だこれ?魔王の情報を求める?」


 魔王って、俺のことか?!

 いや、俺はまだ魔王じゃない。魔王になるつもりもない。どういうことだ?


「ああ、これは、魔物たちの王のことです」

「魔物たちの……王」


 それは、魔の森の支配者となったゲーム中での俺のキャラの事なんだけど。


「いえ、本当に魔王がいるというわけではないんです。ただ、そのような存在が出現した場合に、その情報に賞金をかけるという依頼人がいたということで……」

「……その依頼人って誰だ?」

「興味がおありですか?下の方に依頼人の情報は書いてありますよ」


 改めて書類を確認する。

 依頼人 テオ・カーライル


 ……なんだって。

 テオ・カーライル……

 それは、俺の作っていたゲームの、主人公の名前だ。


 この依頼の発行は、半年前。

 依頼人の依頼したギルドは、ここソトリア王国から遠く離れた他国……ゲーム開始の地である、プリーテラ国だ。


 ゲーム主人公のテオ・カーライル。

 魔王とほぼ同時期に生まれるという設定だった。

 つまり、まだ1歳程度……半年前には、俺と同じように、まだ歩けないくらいの赤ちゃんだったはずだ。それが、ギルドに、魔王の情報を求める依頼を出す……?


 どういう事なんだ。

 まさか……俺と同じように、誰かが主人公に転生していて……俺と同じように、デバッグモードを使える、とか?


 考えすぎか?

 だが、この疑問をこのままにはできない。


「この依頼を受ける」

「……えっ?それにするんですか!提示しておいて何ですけど、かなり遠いですよ?!」

「良いんだ、これにする。あ、行く途中でこなせるような依頼があれば、それもついでに検討するけど」

「本当にいいんですか?」

「ああ。依頼人に会うには、プリーテラ国のギルドに行くことになるのか?」

「はい、そうですね、それが一番確実です」

「じゃあ、明日以降、準備が出来次第に出発する。途中でできそうな依頼があったら紹介してほしい。それから、例の噂を知っている冒険者の紹介も頼む」

「そうですか……わかりました、依頼についてはいくつかご紹介できるようにしておきます。冒険者についてもご連絡したいので、また明日来ていただけますか?」

「わかった、よろしく頼む。明日同じくらいの時間に来たらいいかな?」

「はい、大丈夫です」


 明日の約束を取り付け、今日のところはギルドとの話を終えた。

 そして、その時の俺はすっかり忘れていたのだった。ギルドの受付前で、他の冒険者の注目を集めていたことを。


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