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第16話 キースの事情

 

「?………今、何か……光った……?」

「キース・アーチャー、落ち着いて聞いてくれ、俺はルカだ。ちょっと話したいんだけど」

「……?!ルカ……殿下……でんか?」


 キースは訝しげに周囲を見回しつつ、馬を止めた。良かった、うっかり馬から落ちたりすると危ないからな。まぁ浮遊すればいいけど。


「はーい、こっちこっち!俺です!王子本人です!意思疎通の魔法かけたから、ちょっと喋ろう」

「お…王子……うわあああぁぁぁ?!喋った……?!」

 驚いて俺を取り落としそうになっているので、自分に浮遊魔法をかける。落馬とか嫌だからな!

 驚くキースの腕からは簡単に抜け出せた。

 ふよふよ浮かびながら提案する。


「ちょっと話したいから、馬から降りて、ほらそこの木にでも座ろう」


 周囲とマップを確認すると、ここは宿を取った町から近く、攫われてからまだそんなに時間は経っていないようだ。ポツポツと木が生えた草原で、さらに進むと林や森なんかもあるようだ。

 町から近いので切り株なんかもあり、ベンチがわりにちょうど良さそうだ。いや俺は立てないし座れないから浮かんでおくけど。


 呆然としている風のキースを誘導して、馬の手綱を木に固定して切り株に座らせる。


「で、でんか?殿下が……魔法で、話されているのですか……?」

「そう。えーと、ほら俺竜の血が濃く出てるから魔法が得意みたいでさ!」

「そ、そんなことが……あるんですか……あ、あるんですね……」


 どうも魔法にあまり詳しくないらしいキースは、納得してくれたようだ。よしよし。


「キース、俺を攫ってどうするつもりだったんだ?」

「……!!で、殿下はどこまでおわかりなのですか……?」

「あ、俺が命を狙われてて、今日襲ってきた奴らも俺を狙ってて、それをキースが手引きしたのかもってくらいはわかってるけど」

「!!」

「で、さらに俺を攫ってどうするつもりだった?」


 キースを見ると、これこそ絶望した人間だ!って感じの表情を浮かべて震えだした。


「お、俺は、も、申し訳ありません……っ!」


 がくりと力つきるように地面に伏し、額を土に擦り付けるように謝罪し始めるキース。

 お、おお……リアル土下座だなこれ……マジでされると引くな!


「キース、謝罪する気があるなら顔を上げろ。俺の目を見て、質問に答えるんだ」

「……はっ、はい……!」


 土下座されているので、ちょっと高圧的に出てみた。土下座するキースに偉そうな赤ちゃん。なんだこの図……


 顔を上げたキースの顔面は蒼白で、俺をみる目には畏怖が感じ取れる。見た目赤子だが怖いのだろうか。まぁ異様ではあるが……これは、罪の意識も含むのかな?


「えー、まず、気になることを質問するから答えるように。俺を攫ってどうする気だった?」

「……も、申し訳ありません……裏ギルドのものに、渡す予定でした……」


 え。そっちか!王弟の配下に引き渡されるんじゃなかった!

 裏ギルドが王弟の依頼を受けてるって事かな。その方が今回の賊の手配も納得できる。


「攫って来いって言われたのか?裏ギルドの奴に?」

「は、はい……申し訳ありませんっ……」

「いやもう土下座は良いから。で、キースは裏ギルドの仲間なのか?王弟の仲間なのか?」

「?王弟殿下……は良くわかりませんが、裏ギルドの仲間ではありません。ただ、脅され、他にはどうしようもなかったのです……」

「へー、脅し!それっぽいな!なんて脅されたんだ?」

「母の命が惜しければ、と……俺、いえ私は、9人兄弟の3男なのですが」

「多いな!」

「はい……下に弟と妹が6人いて……母はまた今妊娠中なのですが……」

「えっ10人目?!凄いな!」

「はい……ですが、父が先日亡くなりまして……」

「えっ大変じゃないか!」

「はい……あ、この父母は実の父母の話で……私、自身は、成人後アーチャー家へ養子に入ったのですが、実家は貴族ではありません。普通の狩人兼農家として暮らしていました。母がアーチャー家の親戚で、私は弓が得意でしたので……それが認められて養子になり……」

「えーと、それ長そうだな?」

「す、すみません、俺、私は、喋るのが下手で……」

「あーごめんごめん!続けて、どうぞ!で、何を脅されてたんだ?」

「……実の父が狩りの最中に事故で亡くなり、母は身重で幼い弟妹の面倒を見ることになり……上の兄弟も気にかけたり、私も仕送りをしているのでなんとかやっていたようなのですが……」

「うんうん」

「実家は先程までいた町、グラディの外れにあります。成人までは私もそこにいたので、町のことには詳しいのです……この町の、裏ギルドの存在も知っていました……その裏ギルドの一員を名乗る者に、今回の魔の森への派遣が決定した後、城下町で支度をしている時に声をかけられ……実母の命が惜しければ、もし王子殿下がいた場合その情報を提供しろと……」

「ふうん。そいつは確かに裏ギルドの奴なのか?」

「わかりません……ただ、母の愛用していた髪留めを渡されて……いつでも母に接触できる、簡単に殺せる証拠だと……俺が協力しなかったり、怪しい動きをすればすぐに殺すと、母は最後に、幼い弟妹から順に殺していくと……」

「そうか人質多いな……!」

「上司に報告することも恐ろしく……情報を渡すだけなら、と……私は……王城へ報告に行く途中に、グラディの町を出る時と、王城から迎えが出る時に、自分の知る情報を……教えました……」

「ほほう。なるほど、その情報を元に賊が手配されたって訳かな」

「そう……だと思います……それで、この町に着いて、殿下達が襲われたと聞き……無事で安堵したのですが……また、脅されたのです、今度は、母や兄弟の命に加え、殿下襲撃の情報源という罪をバラすと脅され、王子を攫って来いと……」

「なるほど、沼にはまってる感じだな。それ一生脅されるんじゃないか……それとも、王子誘拐犯として罪をなすりつけられる感じかな?いや実際誘拐しちゃってるけど。はじめに魔の森に捨ててきた分もお前のせいにされるんじゃないか?」

「……も、もうどうしたらいいのか、わからず……今夜攫えと言われて……」

「いまに至ると、なるほど。途中妙に長かったけど、わかったよ。親兄弟の命をたてに脅されて、情報を流し、俺を攫った←イマココ、って事だな」

「は、はい……イマ……?」


 さて、どうしよう。

 とりあえず罪のないキースの家族は助けてやりたいな。で、ついでに裏ギルド……少なくともこの地域の俺に手を出そうとした奴らには警告しておきたいな。俺をどうにかしようとすると自分が危ないぞって感じで。今後こういう事が続かないように。

 直接王弟にダメージは与えられないが、放置する方が被害が出そうだ。またキースみたいに脅迫される奴を増やさないためにも、うん。


「よし!キース、今からお前は俺の部下になるように!」

「……えっ?!」

「今からお母さん達を守りつつ、裏ギルド倒しに行くから、案内するように!」

「……え、で、殿下、それはどういう……?」

「もう決定だから!よろしく!がんばれ!うーん、結界とかそういう魔法があればいいのになー、無いんだよな。お母さん達をどうやって守るか……裏ギルドの奴って、どこかで待ち合わせしてんの?」

「は、はい、この先の、使われていない木こり小屋に殿下を連れてくるように、明け方までに、と……」

「なるほど、まだ少し時間はありそうだな。誰か後ろついてきてたりするか?」

「は、はい、恐らく宿から見張られています、俺のこの行動もおかしいと思われているかもしれません……」

「何だってー!俺浮かんじゃってるし明らかにおかしいじゃん!やばい、証拠隠滅!」

「えっ……?」


 慌ててマップを確認する、と、やや離れた後方に人を示す点がある。1人だ。遠いし暗いからこちらの事はよく見えてない……と思いたいが!キースが休憩してると思っててくれ!


 急上昇して木の上の高さまで浮上し、キースの見張りと思われる人物の見える場所まで移動、上から視認できたので気絶魔法をかけた。マックスで!


「証・拠・隠・滅!キース、今後は後つけられてるとか早く言うように!あとこいつ縛っといて、はい縄」

 アイテムから縄を出してキースに渡す。

「はっ、はい、えっ、何をされたのですか?」

「とりあえず気絶させといた!強いやつかけたから、しばらくは起きないだろう。今のうちにサクッとお母さん達を安全な場所に移動させて、その後は裏ギルドに乗り込むぞ!」

「はっ、は、はい……?!」


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