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思考の欠落

この世界では、正しく戦えているはずなのに、理由だけが消えていく。


なぜ動いたのか。

なぜ勝てたのか。

その過程だけが、思い出そうとした瞬間に抜け落ちる。


残るのは、結果だけだ。


戦える。勝てる。

だが、自分が何をしているのかは、少しずつ分からなくなっていく。


それでも身体は止まらない。


まるで最初から、考える必要などなかったかのように。


■ もう少し硬め(よりダーク)


思考は残る。結果も残る。

だが、その間の“理由”だけが消えていく。


なぜ動いたのか。なぜ勝ったのか。

その過程だけが、思い出そうとした瞬間に抜け落ちる。


それでも戦闘は成立する。

むしろ、成立し続けてしまう。

ダンジョンの奥。

焦げた魔法陣と崩れた石床の上を、レオンは進んでいた。


魔法使いは既に倒れている。

戦闘の余韻だけが空気に残っている。


静かではないのに、音が遠い。


背後から気配。


複数。速い。


(追手)


そう理解した。


だが、なぜ追ってくるのかは分からない。

理由だけが抜け落ちている。


それでも身体は動く。


罠の通路。

横から刃。毒針。崩落。


レオンは避ける。斬る。踏み抜く。


躊躇はない。


ただ、その一つ一つに「理由」がない。


最適解は出ているのに、そこへ至る思考の道筋が見えない。


(勝っている)


そう結論だけが残る。


「……勝ってるのに」


その思考が浮いた瞬間、次が消えた。


角を抜けた先。


空気が変わる。


そこにいたのは、勇者パーティ。


全員がこちらを見ている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕たち感じた。


目つきが違う。


鋭いというより、“判断だけが先にある目”。


見ているのに、見ていない。

人間を認識している目ではない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


勇者が一歩出る。


体格は整っている。

無駄がない。崩れがない。


だがそれは強さではなく、“完成された形”だった。


生き物というより、結論。


沈黙の中、勇者が言う。


「ここから去れ。外道が」


怒りはない。

感情もない。


ただ、そう言うべきだから言った声。


その言葉を聞いた瞬間。


レオンの中で、何かが一瞬だけ引っかかる。


(何かがおかしい)


そう思った。


だが――


何がどうおかしいのかを考えようとした瞬間、そこだけが抜け落ちる。


守るべきもの。

倒すべきもの。

優先順位。


それらが一瞬だけ曖昧になる。


そして次の瞬間には戻っている。


身体が動く。


剣を抜く。


躊躇はない。


今度は“考える前に動いた”のではない。

考える工程そのものが、どこかに消えている。


勇者パーティも動く。


速い。正確。無駄がない。


だがどこか、人間の重さがない。


互いに「正しい動き」だけが積み重なっていく戦闘。


斬撃。防御。魔法。反撃。


戦いは崩れないまま進む。


だが、どちらにも“迷い”がない。


その最中。


レオンは一瞬だけ理解しかける。


(今、自分は何を考えている?)


だが答えは出ない。


考えるという行為だけが、薄く消えていく。


一瞬の隙。


決着。


勇者側の一撃がレオンを捉える直前。


身体が勝手に最短で動く。


回避。反撃。


崩れるのは勇者側の一人。


沈黙。


戦闘は終わっている。


勝っているのはレオン。


だが、勝利の実感はない。


代わりに残るのは違和感。


何かがおかしい。


そう思ったはずだった。


だが、その理由がどこにもない。


《逆転発動:思考領域を一部消費》


戦えている。

勝っている。


それなのに、考えている感覚だけが薄れていく。


勇者パーティの残骸の中で、レオンは立ち尽くす。


そしてようやく気づく。


この戦いで失われていたのは命ではなく――


失われていたのは、思考そのものだった。

今回はちょっといつもと違う感じの戦闘回でした。


レオンくん、だんだん「考える」という工程すら削れてきてますが、作者的にはちゃんと意図があってやってます(たぶん)。


勇者パーティも含めて、今回は「強さ=正しさ=思考の省略」みたいなテーマで書いてみました。説明すると急にダサくなるやつですねこれ。


正直、書いてる途中で「これどこまで行くんだろうな…」って思いながら書いてました。


それではまた次回も読んでいただけると嬉しいです。

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