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④③


安心したローズマリーは無意識に微笑んだ。

それからゆっくりと瞼を閉じる。

リオネルの手をギュッと握ったまま眠りについた。


暫くすると、リオネルはゆっくりと起き上がり反対側の手でライムグリーンの髪を撫でた。



「ありがとう、ローズマリー。君の優しさに僕は救われているよ」



繋いだ手を持ち上げてリオネルはローズマリーの手の甲に口付けた。



──どのくらい時間が経っただろうか。


心地よい温かさに目をあけるとアイビーとオパールが、ローズマリーにぴったりとくっついている。

ローズマリーが二人を抱きしめるように腕を回そうとするが、ふと気づくと視界からリオネルが消えているではないか。


(いつのまにリオネル殿下の手を離してしまったようです)


ローズマリーが体を起こすのと同時に、アイビーとオパールも目を覚ましたようだ。

強い風が吹き、肌寒さにくしゃみをすると肩にパサリとかかる見覚えのあるジャケット。

ローズマリーが振り返るとそこにはリオネルの姿がある。



「リオネル殿下……?」


「よく眠れたかな? そろそろ肌寒くなってきたから城に戻ろうか」


「はい。ですがリオネル殿下は……」


「ローズマリーが風邪を引いたらアイビーとオパールが悲しむよ?」



リオネルはそう言っていつものように微笑んだ。

ジャケットがあってローズマリーは温かいが、リオネルは薄着になってしまい肌寒いのではないのだろうか。

ローズマリーは先ほどオパールとアイビーがくっついていたおかげで暖かかったことを思い出す。


(このままではリオネル殿下も寒い思いをしてしまいますので、温かくしなければなりません)


ローズマリーは片方の手でジャケットを押さえつつ、勢いよくリオネルに抱きついた。

ぴったりと体を張り付けていた。

あまりの勢いにローズマリーの顔は潰れている。

それには彼も驚いているのか、困惑気味にローズマリーの名前を呼ぶ。

ローズマリーはリオネルの反応を確認するように彼を見上げた。



「温かいでしょうか?」


「…………え?」


「体をくっつけると温かいです」



ローズマリーが何をしようとしているのか理解してくれたのだろう。

リオネルは「……ありがとう」と呟くように言った後にローズマリーを軽々と抱え上げる。

お姫様抱っこにローズマリーも驚いてしまい、彼に訴えかけるような視線を送るのだが……。



「こうしてくれるととても温かいよ。なんてね……」


「……本当ですか?」



ローズマリーはリオネルの首に腕を回して、更に体と顔をピタリと寄せた。

確かに肌と肌が触れて温かい。彼の心臓の音がここまで聞こえるような気がした。



「どうでしょうか? 温かいでしょうか?」


「あー……うん。今度からは自分の発言に気をつけるよ」


「……?」



このままの体勢でローズマリーは運ばれていく。

オパールは隣で歩きながら嬉しそうにニヤニヤしている。

アイビーは自分も抱っこしてほしいのか羨ましそうに手を伸ばしている。

そんなアイビーをオパールは注意するように押さえているではないか。

なんだかリオネルの機嫌がとてもいい気がするが、やはり寒かったのかもしれない。


(我慢はよくないです!)


彼にぎゅむぎゅむに体を押し付けていると、あっという間に馬車まで到着する。



「ローズマリー、ありがとう」


「いえ、少しでも役に立てたのならよかったです」



リオネルはそっとローズマリーを下ろした。

なんだか彼と離れるのは名残惜しいではないと思ってしまう。

ローズマリーは首を傾げつつ、オパールとアイビーと共に馬車に乗り込んだのだった。



──そして歓迎パーティーの日を迎えた。


鏡にはマンダリンオレンジの鮮やかなドレスを着たローズマリーの姿があった。

初めて着るドレスになんだか別人のようになった気分だ。


歓迎パーティーの前にリオネルと買い物をしたローズマリーは、大量に積み重なっていく箱に驚くばかりだった。

リオネルと王妃と買い物に出かけたのだが……。



『ローズマリーによく似合うね。ここからここまで全部包んでくれ』


『あら、ここからここまでも忘れないで。あとカバンも帽子も靴も買わなくちゃ……!』


『母上、この色とこの色はどうでしょう』


『まぁ……素晴らしいわ! ローズマリーによく似合うわね』


『…………』



リオネルと王妃はローズマリーに似合うという理由で、どんどんと服を選んでいく。

目の前にあるものがケーキやマドレーヌだったら、同じようにアレもコレもとなるのかもしれない。


ローズマリーの視界が埋まるほどに次々と積み重なっていく箱に驚くばかりだ。

リオネルも機嫌がよさそうだったが、特に王妃は心底楽しそうで終始興奮気味であった。


特に着たいものがなかったローズマリーは、歓迎パーティーに着るドレスもお任せにしようと思っていた。

だが、目の前に用意されたのは艶やかなライトブルーのドレスと鮮やかなマンダリンオレンジのドレスだ。



『ローズマリーはどのドレスがいいかな?』


『わたしはこちらのドレスが好きです』



リオネルに問われて、ローズマリーは迷わずマンダリンオレンジのドレスを選ぶ。

二人はすぐにローズマリーがドレスを選んだことを意外に思ったのだろう。

どうしてかと問われて、ローズマリーは気持ちを伝えるために口を開く。



『このドレスの色はリオネル殿下の瞳の色だからです。とても綺麗……大好きな色です』


『……!』



リオネルと王妃は目を見開いたまま動きを止める。

ローズマリーが首を傾げていると、王妃はうっとりとしながら手を合わせている。


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― 新着の感想 ―
名残惜しいではないっておかしくないですか? あと、バッグとカバンは同じだと思います。
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