表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/45

④②



「ちなみに僕はローズマリーが食べているサンドイッチが食べたいわけではないからね」


「……え?」


「ローズマリーと一緒にいるだけで幸せだと言いたかっただけだよ」



リオネルの言いたいことを理解したローズマリーはゆっくりと頷いた。

サンドイッチを再び口を運びながら考える。


(一緒にいると幸せとは、どういうことでしょうか……?)


チラリとリオネルを見ると本当に幸せそうに笑みを浮かべている。

リオネルはローズマリーは今まで過ごしてきた境遇から、色々なものが抜け落ちてしまっているのではないかと話していた。

確かにローズマリーもカールナルド王国に来てからは、自分の意見を求められることも増えたのと同時に、戸惑うこともたくさんあることに気づいていた。


ローズマリーはどこかズレているのだろう。

リオネルの言葉を理解できずによく困らせてしまっているので、それをどうにかできないかと思っている。

だからこそ少しずつではあるが直したいと思っていたのだ。

ローズマリーは一つ目のサンドイッチを食べ終わった後に胸に手を当てて考えていた。



「リオネル殿下と一緒にいるとホッとします。これが幸せということなのでしょうか」


「そう思ってもらえるのは嬉しいよ。だけど僕とローズマリーの気持ちは少し違うかもしれないね」


「……そうなのですね」



まだまだリオネルの気持ちを理解するには遠いようだ。

ローズマリーはしょんぼりとしつつ、二つ目のサンドイッチを頬張っているとリオネルの腕がこちらに伸びる。



「ローズマリー、口元にソースがついているよ?」


「……ッ!?」


「うん、美味しいね」



なんとリオネルの指がそっとローズマリーの口端をなぞり、ソースを口に含んだのだ。

驚きすぎて固まっていたローズマリーは考えることをやめた。


(なんだか……なんだか胸がドキドキします!)


彼は動きを止めて、じっとリオネルの方を見るローズマリーの行動を不思議に思ったのか、リオネルの分のサンドイッチをこちらに差し出す。



「よかったら僕の分も食べてくれ」


「い、いいのですかっ!?」


「ああ、もちろんだよ」



ローズマリーは目を輝かせながらサンドイッチを受け取った。

けれどローズマリーがこのサンドイッチを食べてしまえば、リオネルが食べるものがなくなってしまうではないか。


(それではリオネル殿下がお腹を空かせてしまいます。それだけは絶対にダメです)


ローズマリーはサンドイッチをリオネルに返す。

リオネルがお腹を空かせてほしくないと伝えると、リオネルは「なら半分にして食べようか」と提案してくれた。



「とても美味しいね」


「はい、美味しいですね」



リオネルと半分にして食べたサンドイッチはいつもよりも特別な味がした。


サンドイッチを食べ終わる頃には、アイビーとオパールは遊び疲れたのかローズマリーの足元でスヤスヤと眠っていた。

ふにふにのほっぺをつつくと寝返りを打つ。

そんな二人の姿を眺めていると、サンドイッチを食べた影響なのか、体がポカポカと温かくなり眠たくなってくる。



「少し寝転んだら?」


「…………はい、そうします」



リオネルの言葉に甘えて、ローズマリーは二人と一緒に寝転んだ。

二人に挟まれながら幸せを噛み締めていた。



「リオネル殿下は寝転ばないのですか?」


「僕はみんなを守らないといけないからね」



リオネルはそう言ってにっこりと笑った。

クリストフがローズマリーを連れ戻そうとした件から、リオネルは城の護衛を倍に増やしたり警備を強化した。

それからローズマリー専用の護衛や侍女たちなどかなり厳重になってしまった。

以前よりも窮屈だが、だからこそこうして息抜きをさせてくれているのだろう。



ローズマリーが大丈夫だと言っても、リオネルは自分を責め続けている。

今も見えはしないが護衛がたくさんいるらしい。

リオネルはローズマリーやアイビーやオパールの負担にならないように細部まで気にしてくれた。

ローズマリーはリオネルがいつ休んでいるのかを気になってしまう。

何故なら彼の目の下にはクマが刻まれているからだ。



「リオネル殿下、少し休みませんか?」


「だが……」


「みんなでここに寝転がりたいんです。ダメでしょうか」



リオネルが断ることはわかっていた。

ローズマリーは逃さないと言わんばかりにリオネルの手を掴む。

彼もそれには大きく目を見開いている。



「一緒に休みましょう?」


「…………!」


「無理はよくありません」



うまい言葉が見つからないが、リオネルに無理はしてほしくない。

彼が倒れてしまったらローズマリーは悲しい気持ちになるだろう。


リオネルは微笑んでからローズマリーの提案に頷いた。



「なら、僕も少し横になろうかな」


「……はい!」



ローズマリーも一緒に寝転がる。

なんとなくリオネルも手は繋いだままだ。

ぽかぽかと暖かい日差し。

寝転んだことで深呼吸をすると、さらに眠気が襲う。

繋いだ手から伝わる熱。


風が吹き草花が揺れる優しい音を聞いていた。鳥の囀りが心地よい。

隣ではオパールとアイビーが気持ちよさそうに眠っていた。

ローズマリーはリオネルの方を見ると彼も瞼を閉じている。


(よかったです……リオネル殿下もゆっくりと休めますように)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ