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③⑤ クリストフside5


それはカールナルド王国の王都近くの街まで続き、そこから足取りは途絶えた。

開かない箱がなかったか尋ねると、そこで驚くべきことを耳にする。

なんと開かない箱はたまたま居合わせたカールナルド王国の王太子、リオネルが持って行ったのだそう。


(あのいけすかない奴がローズマリーが入った箱を奪っただと!? なんて不運な……)


そこで調査員たちはローズマリーが王家に保護されているかもしれないという情報を掴んで帰ってきたというわけだ。

それにカールナルド王国では再び魔法が使えたらしい。

ローズマリーと一緒にいたという魔法樹の影響かもしれないとわかったが、さすがに許可もなく王城に侵入するわけにはいかない。

魔法の技術はあちらの方が上だ。とすれば箱が開いた可能性は高い。

ローズマリーがカールナルド王国にいるのならやることは一つだけだ。



「父上、今すぐにカールナルド王国に行ってローズマリーを助けに行きましょう! 今すぐにっ」



クリストフとはすぐに父に訴えかけた。しかし父は難しい顔をしている。

クリストフはその理由がわからなかった。

早く早くと捲し立てるクリストフに、父は額を押さえながら答える。



「もしローズマリーが国に戻らないといえばそれまでだ……我々はカールナルド王国にさらに力を与えたことになるのではないのか? なんて恐ろしいことをっ」


「父上、一体何を言っているのですか?」


「クリストフ、お前はローズマリーに何をしたのか忘れたのかっ! ローズマリーが食事も与えられず冤罪をかけられて、この国にまた戻ろうと言うと思うのか!?」


「……っ」



ローズマリーは魔法樹のことで、かなりつらいめに遭っていた。

それを最終的にとどめを刺したのはクリストフとミシュリーヌだ。



「だ、だけど誤解をとけばローズマリーだってわかってくれるはずです! 俺を騙していたミシュリーヌもいなくなりました。安心して戻ってこられるはずですから」



クリストフの必死に訴えかけるものの、父は頭を押さえて首を横に振るだけだ。

父は納得していないのだろうが、ローズマリーがクリストフをどれだけ愛しているのか知らないだけなのだ。



「我々がカールナルド王国に敵うわけがない。千年以上前から魔法を使っている。今は三本の魔法樹があり、一本は弱っていると噂で聞いたが……」


「それが何だと言うんですか?」


「まだわからないのか!? カールナルド王国には唯一聖女がいなかった! だが、我が国の聖女と力の強い魔法樹を手にしたんだ! 手放すわけないだろう?」


「…………そんな」



そう聞けば父の言う通りだと思った。

カールナルド王国に聖女がいなかったら、その存在を待ち望んでいたのではないだろうか。

聖女が追放され国に来たのなら、ローズマリーを保護して自分の国に留まらせる。手放すはずがない。

力の強い魔法樹が彼女についてきたのだとしたら尚更だ。


しかしそれはローズマリーが望んだ場合だ。

クリストフの唇が弧を描く。



「大丈夫です。父上……! ローズマリーは俺が迎えに行けば帰ってくるはずですから」


「何を根拠にそう言っている?」


「──ローズマリーは俺のことを愛しているんですからっ!」



自信満々にそう言ったのだが、父は安心したように笑うかと思いきや眉を寄せて不満そうにしている。



「もしそうだとしても、ミシュリーヌを選び自分を箱に閉じこめて追放した相手だ。愛も冷めただろう」


「そんなことありません! ローズマリーは必ず俺を選ぶはずですっ」



クリストフは胸を押さえながら父に訴えかけるようにそう言った。

すると父は信じていないのか首を横に振りながらため息を吐く。



「だったらローズマリーを取り戻してみせろ。まぁ……まったく期待はしていないがな」


「任せてください! ローズマリーは必ず俺を選ぶはずですから」



クリストフはローズマリーに向けて手紙を書いた。

もちろんこれからの明るい未来のことをしたためたものだ。

どれだけローズマリーが自分のことを愛しているのかわかっているから戻ってきてほしい。

ミシュリーヌは自分が牢に送り、二度と嘘を吐けないようにした。

いなくなった今、安心してバルガルド王国に帰ってきてほしいと……。


それに加えて父がカールナルド王国に向けて、ローズマリーを恨む悪どい貴族のせいで国外に送られてしまった。

手違いでローズマリーがそちらの国に行ってしまったため、返してくれないかという内容の手紙を送った。


しかし早馬で手紙を届けてもらったのだが、その一週間後に衝撃的な事実が明かされることになる。

なんとカールナルド王国は新しい聖女と魔法樹を歓迎する祭りが開かれているそうで凄まじい熱量に知らせに戻ってきたそうだ。

手紙はかろうじて受け取ってもらえたが、ローズマリーに見せるかどうかは別だと言われたらしい。


それに魔法樹や聖女を大切にしてきたカールナルド王国で、バルガルド王国のローズマリーの扱いや魔法樹のことが許せないそうだ。

彼らの怒りは相当なものだと手紙を届けた者は震えていた。

もちろんローズマリーにも会うことはできなかったそう。


どうやらバルガルド王国の魔法樹は幼児ほどの大きさに成長しているのだそうだ。

十年間、眠り続けていた魔法樹も目覚めて、カールナルド王国はお祝いムード一色。

それは間違いなくローズマリーが聖女としての力を使ったからだろう。


カールナルド王国はローズマリーのおかげで魔法樹が四本となり、そのうち二本は千年生き続ける魔法樹。

バルガルド王国は聖女だけではなく、魔法樹も失った。



「バルガルド王国は終わりだ。もう何もかも手遅れだ……」


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