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『まさかっ、お、お前は魔法が使えるのか!? 貴族しか使えないはずの魔法をどうして……!』


神父の言っていた魔法の意味をローズマリーは理解することができなかった。

ローズマリーの頭の中は次にどうやって食べ物を確保するかを考えていた。


(今度は食べられる野草を大きくして神父に隠して育てましょう!)


野草を大きくすれば食べ応えもあるだろう。

しかしその日から神父のローズマリーに対する態度がよそよそしくなった。

ローズマリーの植物に影響を与える力はすぐに教会に伝わることになった。

そんなことは知らないまま食べられる野草を建物の裏に移していたある日のこと。

孤児院には見たことがないほど綺麗な格好をした神父や絵本でしか見たことがない騎士の姿があった。



「この子です……! 植物を大きくする魔法を使います」


「本当なのか?」


「えぇ、本当です!」



神父はローズマリーに綺麗な野菜を与える。

期待に満ちた目を気にすることなく、ローズマリーは野菜を大きくする。

今日も腹ペコだったからだ。


(これをみんなで分けて食べましょう……!)


この力を見て確信したらしい。

彼らはこの国では貴族しか使えないはずの魔法を使うローズマリーを迎えにきたのだ。


どこかの貴族の隠し子ではと聞かれたローズマリーだったが、記憶がないことにくわえて、ライムグリーンの髪を持つ貴族などどこにもいないため偶然ということになったらしい。


ローズマリーにとって生まれなどどうでもよかった。

一番大切なのはお腹が満たされることなのだから。


彼らについて行くことを渋っていると『お腹いっぱいに食べられる仕事がある』と言われローズマリーは目を輝かせた。

よくわからないが〝聖女〟として働けば、お腹いっぱいにご飯が食べられるいい暮らしができるらしい。

ここから離れて、王都で大聖堂で暮らすと言われたが、ローズマリーは孤児院の子どもたちが心配だったからだ。

そのため条件を二つ出した。


『お腹いっぱい食べさせてください』

『わたしが聖女として働くのでこの神父をやめさせてください』


ここでローズマリーは神父の行いを暴露して、この孤児院にいい神父を派遣してもらうことにしたのだ。

ローズマリーを育てたことで出世しようとしていた神父にとっては予想外のものだったのだろう。

ローズマリーにとって欲深く、肉汁たっぷりの美味しそうな肉を食べていた神父が心底許せなかったのだ。


教会側はローズマリーの願いを快諾してくれた。

孤児院の子どもたちに感謝されつつ、ローズマリーは安心して王都にある大聖堂へ向かったのだった。



初めて見る景色はローズマリーを不安にさせた。

見たことがない建物が立ち並び、人がたくさんいる。


(草も実をつける木もありません。どうやって生活しているのでしょうか……)


だけど大聖堂に着けばそんな不安はすぐに吹き飛んでしまう。

彫刻や壁画、内装の美しさに目を奪われたローズマリーだったが、その真ん中には光に包まれた大きな木があった。

風もないのに葉を揺らした木はローズマリーを歓迎してくれているような気がした。


それが魔法樹との出会いだ。

清浄な空気と魔力の流れが心地よく、ローズマリーはこの場所がすぐに好きになった。


聖女の仕事はこの魔法樹を元気にすることだと聞いて納得していた。

ローズマリーは魔法樹に元気がないことがわかったからだ。

すぐに魔法樹に寄り添うようにピタリと頬を寄せる。


その日からローズマリーの生活は一変した。

朝と晩、丸いパンと野菜スープとソーセージが出ることに大喜び。

孤児院では食べられなかった食事だ。

この時、お腹いっぱいに食べられるからとローズマリーは幸せを感じていた。


その後、この食事を続けるためには条件があると言われることになる。

それが聖女として魔法樹に尽くすことだった。

大聖堂で魔法の使い方を学んで、魔法樹を支えていくために教育を受けることになる。

魔法樹の存在は知っていたが、ローズマリーにとって魔法など縁遠いものだと感じていたからだ。


バルガルド王国では魔法を使えるのは貴族だけ。

それが周知の事実だった。

魔法を使えるのは国に気まぐれに現れる魔法樹のおかげだった。

魔法樹が現れれば国は栄えて、枯れれば魔法の恩恵が受けられなくなり衰退してしまう。

何故なら魔法樹がなくなれば、その国に住むものたちは魔法が使えなくなってしまうからだそうだ。


魔法樹の寿命は個体差があり短くて百年、長くて千年も生きると言われているようだ。

昔は魔法樹を巡って戦争が起こっていたが、今は世界で魔法樹を力で手に入れることは禁止されている。

世界では魔法樹に対する約束事が厳しく決められていた。

その代表は魔法樹や聖女を無理やり奪おうとしてはならないというものだが、

破った国には制裁が与えられる。

それに無理やり魔法樹を国に持ち帰ったとしても必ず枯れてしまうからだ。

悪意に敏感、善意には恵みで返してくれる……不思議な樹である。


魔法樹が生える場所は誰にも予想ができない。

大抵の場合はそこに大聖堂が建てられる。

その理由は魔法樹を守るためだ。


その魔法樹を守る特殊な職業があった。

それは〝聖女〟である。

植物を育てる魔法や治癒魔法を使う女性たちの総称だ。

その魔法樹を少しでも長らえさせるように重宝されている。

だが、魔法樹に力を与える聖女としての魔法の力を持つ女性は、魔法樹の同時期に存在できるかどうかはわからない。


その魔法を持つ女性が現れるかどうかは運だった。

聖女がいれば魔法樹は確実に長生きできる。

それはとても大切なことだった。


今まで魔法樹が現れたことがないバルガルド王国でローズマリーは初めての聖女となった。

バルガルド王国も魔法樹が現れてから三十年が経とうとしていたが、今まで聖女はいなかった。

そのせいなのかはわからないがローズマリーが聖女として魔法樹の元に行った時には、すでに魔法樹に元気がなくなりつつあった。


(このままだと魔法樹が枯れてしまいますね……)


毎日毎日、魔法樹の元に通いローズマリーは魔法樹を元気にしたいと考えていた。


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