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①⑦


それにバルガルド王国は魔法や魔法樹に対する知識が少なすぎる。

正しい知識を身につけていないように感じる。

当時のカールナルド王国が魔法樹を守るためならば、とバルガルド王国に歩み寄ろうとしたものの知識はあるから大丈夫だと断られたそうだ。

元バルガルド国王は魔法を使えることに興奮しており、話を聞くどころではなかったそうだ。


それから国は豊かになったが、ずっとバルガルド王国の魔法樹のことが気掛かりだったそう。

聖女が二人も現れたことで安心していたのも束の間、一人は偽物で本物の聖女であるローズマリーを国外追放。

愚かすぎて彼らにはかける言葉もないそうだ。



「魔法樹を癒やせる聖女という存在が国にいるかいないかで、魔法樹にかかる負担はまったく違うんだ」


「……!」



リオネルの言葉は納得できるものだった。

クロムもローズマリーがいたからこそ十年持つことができたと言っていたからだ。



「それに魔法樹を唯一助け、癒すことができる聖女の力を持つことは奇跡なんだよ」


「…………奇跡」



植物に必要不可欠な水、水魔法も意味はない。

長年、研究されてきた魔法樹だがまだまだわからないことも多いという。



「個々が使える魔法を決められるわけではないからね。聖女の力を授かれるかどうかは運次第……我が国の聖女も十年前に亡くなってから見つかっていない」


「…………」


「彼女の後を追うようにカールナルド王国で一番長寿の魔法樹が弱り続けた。つい先日、枯れてしまったんだ」


「……そうだったのですね」



カールナルド国王とリオネルが悲しそうに目を伏せた。

一番大きな魔法樹が枯れて国に与える影響は大きく、貴族たち以外は魔法を使えなくなってしまっているそうだ。

貴族たちは民の生活を助けるために駆け回っている。

それでも国民たちは魔法樹に感謝を忘れてないそうだ。




「どれだけ聖女が貴重な存在なのかバルガルド王国は知らないのだろうな。我が国がどれだけ切望しようとも現れなかったのに」



カールナルド国王は深刻そうに額に手を当てた。



「カールナルド王国にも運良く、一番長寿の魔法樹の代わりとなり得るもっとも強い魔法樹が生まれた。だが…………」


「どうかされたのですが?」


「魔法樹は弱り続けているんだよ。聖女がいなければこのまま……」



魔法樹が弱り続けていると聞いて、ローズマリーは夢でアイビーが言っていたオパールのことではないだろうかと思った。


(三つ編みをしている可愛らしい女の子……)


ローズマリーがそう考えていた時だった。

両手を包み込むように握られたローズマリーは胸元に視線を向ける。

どうやらリオネルがローズマリーの手を掴んでいるようだ。

手から彼に視線を送ると、オレンジ色の瞳がこちらをじっと見つめている。



「ローズマリー、お願いがあるんだ」


「な、なんでしょうか!」


「もし行く場所がないのなら、カールナルド王国にいてくれないだろうか? 是非とも我が国の聖女になってほしい」


「…………え?」


「今、カールナルド王国には君の力が必要なんだ」



リオネルの表情は真剣だった。

また大聖堂に閉じ込められてしまう不自由な生活に戻ってしまうのではないかと思ったローズマリーは迷っていた。


しかし先ほどのおいしいご飯や肉をくれたリオネルの願いだ。

それにカールナルド王国はこれだけ魔法樹を大切にしてくれている。

アイビーにとってもこれほど幸せになれる場所はないのではないだろうか。


(また自由ではなくなってしまいます。ですが魔法樹を……アイビーくんを守りたいです。それに美味しそうなご飯のお礼はしなければなりません……! お肉のためなら我慢できます!)


満腹になったお腹を撫でながら、ローズマリーがお世話になりますと言おうとした時だった。

 


「もちろん美味しい食事を毎日食べさせてあげられるし、ローズマリーが望むならなんだって……」


「──やりますっ!」


「ローズマリー……?」


「今みたいなご飯をお腹いっぱい食べられるのなら、是非ともやらせてくださいっ」


「えっ……あぁ……」


「よろしくお願いしますッ!!!!!」



今度はローズマリーがリオネルの手を掴んで、血走った目で彼にぐいぐいと迫っていく。

リオネルは最初は驚いていたものの、すぐに噴き出すようにして笑った。



「ははっ、ローズマリーは食べることが好きなんだね」


「はい、大好きですっ! 先ほどは美味しいご飯をありがとうございます」



そんなリオネルの様子を見て、目を見張る国王に気づかないまま先ほどの食事のお礼をしていなかったと、ローズマリーは深々と頭を下げる。



「いや、大したことは……」


「あんな素晴らしいご馳走は初めてでした」


「……そうか。喜んでもらえて嬉しいよ」



リオネルはなんだか嬉しそうに微笑んでいる。

ローズマリーはすぐにカールナルド王国の聖女になることを決めた。



「たくさんご飯をもらいましたから、たくさん働きます」


「無理をしなくていいんだよ」


「はい、先ほどの食事は特別です。箱詰めされる迄の三週間は魔法樹を癒やせないからとパンと水しかもらえませんでした。そんな生活はもう嫌ですから」


「……!」



その言葉にリオネルと国王は眉を寄せた。

それから普段の食事の内容を教えてほしいと言われて、ローズマリーは事細かに説明を始める。

それからつきっきりで魔法樹のそばにいたこともだ。

すると二人は目を合わせて頷いた。

それから丁寧に言い聞かせるようにして、リオネルはあることを口にする。



「ローズマリー、落ち着いて聞いてほしいんだが今まで受けてきた扱いは普通じゃない。異常だ」


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