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①⑥

「やはりそうか。別の聖女……裏には君がいたんだね。バルガルド国王はローズマリーを必死に隠そうとしていたのかな」



リオネルの言っていることは半分以上わからないがローズマリーの言っていることをすぐに信じてくれたようだ。



「僕は君のことが知りたいんだ」


「……え?」



真剣にこちらを見つめるリオネルの表情にローズマリーの心臓がドクリと音を立てる。

先ほどまでは空腹で気がつかなかったが、リオネルの端正な顔立ちと笑顔とのギャップに驚いてしまう。



「バルガルド王国は聖女に対してどんな扱いをしていたんだろうか。もっとも大切で、時には国王よりも権力を持つ聖女にこんなことをするなんて……」


「どういうことでしょうか」


「君はあまり外のことを知らないようだけど……」



リオネルの言う通り、ローズマリーはほとんど外の世界を知らない。

幼い頃は孤児院、聖女の力がわかってからはほとんどは大聖堂で過ごして魔法樹のそばにいた。

クリストフの婚約者になってからは王妃教育を受けていたといっても、パーティーや令嬢同士のお茶会に同席したことなどない名ばかりの婚約者。

その理由はローズマリーにはよくわからない。何か理由があったことだけは確かだ。


そのため公務に同席するのはミシュリーヌだったらしいが、まったく興味がないローズマリーにとってはどうでもよかったことを思い出す。

教会の人たちに言われるがまま魔法樹のそばに十年寄り添い聖女としての役目を果たしていただけ。

箱詰めされてバルガルド王国から追放された今、もう隠す必要もないだろう。

リオネルは真剣にローズマリーの話を聞いてくれた。



「わたしは魔法樹を守りたかっただけなのに……どうしてこんなことになってしまったのでしょう」


「……どうしてあんなことに?」


「箱詰めされた経緯でしょうか。それは……」



ローズマリーは自分の状況を整理するためにリオネルに箱詰めされて国から追放された経緯を話そうとすると、彼が手のひらを前に出す。



「ローズマリー、少し待ってくれ」


「はい、わかりました」


「君、父上を呼んできてくれないか?」



リオネルが父上と呼ぶ人物は間違いなくカールナルド国王のことをさしている。

空腹すぎたとはいえ、隣国の国王に暴言を吐いたのだ。


(も、もしかしたら今度こそ牢屋行きかもしれません……!)


ローズマリーがカタカタとと震えていると、気持ちを読み取ってくれのかリオネルが安心させるように声を上げる。



「大丈夫だよ。こうなった事情を君の口から話してほしい。父上と一緒に聞きたいんだ」


「……!」



安心から無意識に強張っていた体の力を抜いていく。

どうやらカールナルド国王も、あれだけのことを言い放ったローズマリーに怒ってはいないそうだ。

ただリオネル同様にこうなった経緯を知りたいだけのようだ。


カールナルド国王が来る間、ローズマリーは寝巻きからワンピースに着替える。 

お腹が苦しすぎてコルセットを絞められないのもあったが、ドレスを嫌がるとすぐにローズマリーの要望はあっさりと通った。


カールナルド王国とバルガルド王国とのローズマリーへの態度はまったく違う。

バルガルド王国ではローズマリーは常に見下されていたが、カールナルド王国ではまるでお姫様にでもなったかのようだ。

その差はとても大きいような気がした。


ローズマリーが目覚めたと聞いたカールナルド国王は慌てて部屋へとやってきた。



「よかった……! 目が覚めたのか」


「あの時のことなのですが……」


「よいよい、それよりも話を聞かせてくれ。大変な思いをしたのだろう?」



リオネルと同じでカールナルド国王はローズマリーを責める様子はない。

むしろ心配しているように見えた。


まずリオネルがカールナルド国王にローズマリーが今まで話したことを簡単に説明していく。

その後に改めてローズマリーは追放された経緯を話していった。

話が進むたびに彼らの表情がどんどんと険しくなっていくではないか。



「し、信じられない……! やはりバルガルド王国は魔法樹と聖女のことを何もわかっていない!」


「そうですね。それに恐らくバルガルド王国の魔法樹は……」



そう言ったリオネルは悲しげに瞼を閉じた。

それからカールナルド王国で魔法樹と聖女への考え方について話してくれた。

ローズマリーは初めて聞く魔法樹の情報ばかり。

バルガルド王国で教わったことなど、あまり役に立たないことに気づく。



「ローズマリー、聖女というのは魔法樹と同じようにとても大切に尊むべき存在なんだよ」


「そうなのですか?」


「そうなんだ。だから僕はバルガルド王国に対して激しい怒りを感じている」


「まったく信じられないな……! 魔法樹をなんだと思っているのか。聖女としての扱いもそうだが、そこまで差別的だったとは。酷い話だ」



そう言ってリオネルは拳を握る。

隣でカールナルド国王も立派なヒゲを撫でながら同意するように頷いていた。

それから魔法樹は魔法の恩恵をわけてくれる素晴らしい樹で、カールナルド王国では国内でもっとも大切なものとして扱っているそうだ。


彼らの魔法樹に対する想いはバルガルド王国よりもずっと深い。

バルガルド国王たちよりもずっと魔法樹を大切にしているそうだ。

魔法は魔法樹のためにいいことや人のために使用すること。

もし魔法を悪用したり、悪どい使い方をしたら重たい罰則があるそうだ。

貴族ならば爵位や領地を剥奪。平民ならば魔法具というものを利用して二度と魔法を使えないようになるそうだ。


(バルガルド王国と全然違います。わたしはカールナルド王国の魔法の使い方の方が好きです)


ローズマリーが見る限り、バルガルド王国の貴族たちは自分たちの欲を満たすために魔法を使っていた。

それが魔法樹の寿命を大幅に縮めることに繋がったようだ。


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