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【ネトコン13 小説部門入賞】国外追放された箱詰め聖女が隣国で子育てしながら満腹&幸せになるまで【書籍化】  作者: やきいもほくほく
二章 特別な存在

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①② ミシュリーヌside1

ローズマリーが目障りだった。

ライムグリーンの髪はこの国では珍しく、たとえ艶がなくても手入れをしていなくとも目を引いた。

透き通るようなライトブラウンの瞳は目が合うと不思議な感覚にさせる。

クリッとした大きな目は小動物のようだ。

可愛らしい容姿は男性の目を引きつけている。


だが、大聖堂に閉じこめられていることやパーティーやお茶会に出ることもない。

教会は他国の人間や貴族たちにローズマリーを取られたくないからと大聖堂から出さなかったのだ。

彼女を洗脳するかのように狭い場所に閉じ込めたのだ。


(いい気味……世間知らずで何もできない。惨めに引きこもっていなさい)


それなのに特別な力を持った彼女が目障りでしかない。

ローズマリーは毒魔法という魔法を与えられたミシュリーヌとは真逆の存在。


魔法樹が大聖堂に根付いたことで、ここ何十年はずっと教皇が発言権を強めていた。

それはあってはならないことだと父は危惧していた。

その予想は当たることになる。


教皇は貴族たちにしか魔法の恩恵を与えないことを条件に、多額の寄付を要求してきたのだ。

今思えば魔法樹が小さいこともあり、国全体が魔法を使えるようになることなど不可能だった。

だからこその提案なのだが、貴族たちは魔法樹から与えられる特別な恩恵に酔いしれていた。


平民は魔法を使えないため、貴族たちの虚栄心は満たされて地位を確立するために役に立った。

次第に教会を支持するようになり、集めた金で私腹を肥やしていた。

父は魔法樹は金のなる木だと言ったがミシュリーヌもその通りだと思った。


一部の貴族たちは魔法樹がある教会の言いなりだ。

父はそのことに危機感を抱いてバルガルド国王に訴えていた。

バルガルド王国は国王と貴族たちによって作り上げた崇高なる国だから守らなければならない、と。


そのためにはミシュリーヌがクリストフの婚約者にならなければならない。

幼い頃からそのためだけに厳しい教育に耐えてきたのだ。

バルガルド国王と協力して、なんとか教会の勢いを抑えてきたのだが……。


そんな父とミシュリーヌに追い討ちをかける出来事が起こる。

十年前、ローズマリーは何の前触れもなくやってきた。

平民であるはずのローズマリーが何故か魔法の恩恵を受けている。

こんなこと今まで一度もなかったはずなのに……。


恐らく彼女はどこかの貴族の血を引いているが捨てられたのかもしれない。

本人は記憶もなく、出生についてはわからないことも多いそうだ。

そしてローズマリーは教会が運営する孤児院出身ということで、教会が彼女の後ろ盾となる。

運の悪いことに、彼女は魔法樹によって必要不可欠な〝聖女〟という存在だったのだ。


バルガルド王国は魔法樹についてまだまだ知らないことが多いが、聖女の存在は知っていた。

魔法樹を少しでも長らえさせる存在。なくてはならないものらしい。

一目見た時からミシュリーヌは彼女が気に入らなかった。


父はローズマリーが現れてからすぐにミシュリーヌを〝聖女〟として教会に送り込むことを提案した。


けれど聖女となるのはさすがに無理があるのではないか。

最初はミシュリーヌは聖女になることについて反対した。

何より本当の聖女として力を使うローズマリーにバレてしまうではないか、と。

父は圧力をかけるから問題ないと言った。


『クリストフの婚約者をとられていいのか』


その言葉にミシュリーヌはハッとする。

今まで王妃になるために耐えてきたことがすべて無駄になるなんて信じられなかった。


実際、ローズマリーは平民で孤児院出身にもかかわらず、すぐにクリストフの婚約者候補に踊り出た。

それほどローズマリーが貴重な魔法を持つ存在なことや、教会の思惑が絡んでいた。

 

魔法樹は今や貴族たちにとってはなくてならない存在だ。

魔法樹が長生きするかどうかはローズマリーにかかっているため文句を言う貴族も少ない。

それほど魔法による恩恵が大きいのだ。


ミシュリーヌが聖女となることを教皇は反対した。

恐らくこちらの考えを見透かしてのことだろう。

だが、父は大金を使って教皇をうまくねじ伏せたのだ。

ミシュリーヌが聖女とならなければ、バルガルド王国の貴族たちは終わってしまう。


それに今まで毒魔法を伏せていたことが功を奏したようだ。

ミシュリーヌはクリストフの婚約者になるために損になってしまうと、魔法の力をうやむやにしていた。

令嬢たちには『珍しい魔法だからお父様にむやみやたらに使わないように言われているの』と誤魔化していた。

すればミシュリーヌ自身の価値も上がるではないか。

何より毒魔法で気に入らない奴を屠れるのも悪くなかった。


(わたくしが毒魔法を使っているなんて、誰も思わないでしょうね)


社交界を影で支配しているのはミシュリーヌなのだ。

ミシュリーヌも嘘をつき続けなければならなかったが、今までとさほど変わらない。

自分の立場を奪われないためならばなんだってしてやると思った。

孤児院出身のローズマリーなど貴族社会で華々しく過ごしていたミシュリーヌの敵ではない。


(どうして平気な顔をしているのよ! 普通、ここまでしたら泣いたりするでしょう!? さっさと孤児院に帰ると思ったのに……っ)


予想外だったのはローズマリーのタフさだ。

だけど彼女は雑草のように強く、叩いても踏みつけても潰れない。

気にも留めないことも嫌がらせをしても飄々としていてスルリと躱してしまう。


何を言っても響かないところが更に腹立たしいではないか。

彼女は何も興味がない。関心があるのは食事くらいのものだろう。

だからコイツなんて敵じゃない……そう思っていたのに。


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