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211 メテオの威力

 昨夜はルージュカルテットとして4人で丁字路ホテルに泊まり、今朝はチェックアウトして4人で南門を目指しています。

 サニミ市内を歩いていると、周りでヒソヒソと僕等のことを話す声が聞こえてきますので、昨日2回実施したナンパ男達への威嚇(いかく)がある程度は広まっているのでしょう。いかづち魔法を詠唱省略で放つ謎の美女4人組が、アケミ商会と繋がりがあるという認識が広がれば、アケミ商会が大量の魔石を売りさばける理由として連想されるようになると思います。


 南門を出たところで、周囲の目を気にせず瞬間移動魔法を発動させます。ダンジョン街道の大峡谷にあった山賊の元アジトに4人で移動しました。そこで馬車を収納+魔法から出し、天馬マロンを幼女ペガから分離させて、荷馬車を隠形状態で飛行させます。

 大峡谷上空から他の山賊アジトを見つけるために、直感スキルと千里眼魔法をフル回転させます。最初に見つけた2つのアジトはもぬけの殻でしたので、前回僕等が壊滅させた山賊のアジトだったようです。血痕が残っていたし、お宝も残ってませんでしたので、他の山賊グループに留守番していたメンバーも襲撃されてしまったのかもしれません。


「おっ! 人が活動しているアジトを発見したよ!」


 とうとうアクティブな山賊のアジトを発見しました。建屋の上にも石を並べて、上空からのカモフラージュとしているみたいですが、僕の千里眼魔法は誤魔化されません。


「あそこら辺ですわね。上空に移動しますわ!」


 ペガが僕の指さす方向を見て、その直上に移動するようにマロンを誘導してくれました。


「数人が建屋から出て騒いでいるようだニャ……」


「陽気にはしゃいでいるように見えますわね。山賊の同業者がいなくなって、利益を独占できているのかしら?」


 先ほど見つけたように他の山賊アジトも襲撃して、ため込んでいたお宝を奪っているのでしょう。


「山賊など私ひとりで壊滅させてみせます。マサト様、ご命令を!」


 シロはやる気満々のようですが、ここは先日獲得した新魔法のテストと行きましょう。


「ここは『メテオ』を試してみようと思う」


「おー、新兵器のテストだニャ!」


「確かに事前に威力を確認するのは大事ですわね」


「マサト様の新たな攻撃魔法ですね…… ものすごい威力が期待されます。さすがはマサト様です!」


 3人ともメテオを試すことについては異論が無いようです。


「で、どれを撃つニャ? やっぱ大将軍かニャ?」


 メテオといっても様々なサイズの岩を準備しています。小さいものだと直径約10cmくらいの石で、これは土魔法の石弾と見分けが付きにくいです。僕等4人は全員土属性の魔法は使えませんので、『石弾!』と発声しながら10cmメテオを発動させることによって、ルージュカルテットの正体を偽装することができます。この10cmはメテオ(小)と名付けました。

 メテオ(中)は直径約20cm、大は約30cm、特大は約50cm、超特大は1m前後に分類しています。そしてクロの言う『大将軍』は2~3mの巨大な岩を指しますが、これの迫力はものすごいものがありましたので、いきなりこいつをテストするのは避けた方が良いと思います。


「いきなり『大将軍』は威力が強すぎるおそれがあるので、まずは『超特大』から試そう…… メテオ!」


 直径1m近くの岩が山賊アジトめがけて発射されました。直後にアジトを木っ端微塵に粉砕するのが見え、その後にドカーンと予想以上に激しい破壊音が届きました。やり過ぎだったようです……


「超特大でもオーバーキルだったニャ……」


「大将軍を使わなくて良かったですわ…… クロの考え無しの意見を採用しなくて正解ですわね」


「……ものすごい威力、さすがはマサト様です……」


 一般的な石弾が10cm程度、今回の超特大が1mだから、直径としてはその差は10倍ですが、体積としては1000倍ですね。岩が大きい方が落下速度も大きくなっている感じでしたので、威力としては数千倍もあったのかもしれません。今となってはちゃんと威力の見積もりを事前にしておくべきでした……


「建屋の周りにいた山賊も『超特大』の衝撃で即死してるニャ……」


 アジト建屋は原形を留めてなく、跡にはクレーターが残っています。その周りにも砕け散った岩が飛散しているようで、周囲にいた山賊達も討伐できちゃったようですね。そして、問題があるとしたら……


「鑑定プレートは残っているかなぁ……」


 人が死亡すると黒い鑑定プレートが自動的に出現しますが、そのプレートがメテオの威力で破壊されてしまうと、賞金首の山賊『ノルムル』を討伐した証明ができなくなってしまいます……


「鑑定プレートは創造主様がお作りになられた神聖なもの。そう簡単に破壊はできないと思いますわ。確認しに行きましょう」


 元アジト近くに降り立つと、クレーター中心部はまだ熱気を帯びている感じがします。この中から鑑定プレートを探すのは大変そうですが、ここは収納+魔法を使って楽をしちゃいましょう。収納+!


「がれきの山が消えたニャ!」


「……マサト殿の収納魔法を使って鑑定プレートを分離するのですわね」


「そんな方法を思いつくとは、さすがはマサト様です!」


 収納したがれきの山から使えそうなものを分離していきます。装備品等は損傷が小さいものについては清掃魔法を掛けて売り物にしちゃいましょう。そして、鑑定プレートや通貨については無傷で残っていました。さすがはペガ(いわ)く神おじいさんが作ったとされる神聖なものですね。


「鑑定プレートと通貨は無傷で残っていたよ。鑑定プレートだけを出して並べるので、『ノルムル』があるか確認しよう」


 プレートは全部で29枚もありました。全体的に山賊としてはレベルが高めでしたが、目標のプレートは特にレベルが高かったです。


【獅子獣人 ノルムル 男 53歳 レベル53 山賊 強姦魔】


「レベル53とは、山賊にしてはものすごく高いニャ……」


「でも、『山賊』のみならず、『強姦魔』の赤い文字なんてあると、もう山賊以外の仕事はできませんわね……」


「これだけの高レベル山賊達を一瞬で討伐されるとは…… さすがはマサト様です……」


 今回はちょっとやり過ぎてしまった面もありますが、まあ結果オーライでしょう。このまますぐにベイシック国に行くのは早すぎる気がしますので、今日の約束があったグースさんのところに寄っていきましょう。


「いったんグースさんのところに行こう。行商人一行の格好に戻ってね」


 僕等はまだルージュカルテットの『匿名のマント』を着たままですし、派手な赤い口紅を落とす必要があります。


「フルーツ王のところだニャ。前回はマサトとシロしか行けなかったので、どんなところか楽しみだニャ。前回は118話なので、かなり昔だニャw」


 またクロが理解不能なことを言ってます…… 前回のオーキ町訪問は11/1だったので、3週間前ですよ……




【参考:岩の落下エネルギー試算】


 直径10cmと1mは長さだと10倍差ですが、体積は3乗になるので1000倍差です。比重が同じならその重量差も1000倍です。落下の終端速度はサイズの0.5乗に比例するとの情報を見つけましたので、速度差は3倍以上と計算できます。

 運動エネルギーは1/2mv^2なので、質量に比例し、速度の2乗に比例します。よって10cmと1mの運動エネルギーは約1万倍もの差があると試算できました。

 ちなみにメテオ(大将軍)の直径3mだと、運動エネルギーは10cmの81万倍になるようです。指数関数的増加って恐ろしいですね……


 まあ、異世界はエネルギー保存の法則などの物理法則が通用するとは限らない世界なので、上記計算が当てはまらない可能性があります。そのへんは適当に考えていますので、あくまで参考としておいてください(笑)



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