128 勇者爆誕!!!
「小っさい虹が出たニャ!」
「えっ! 虹?」
なんと僕の周りを2つの小さな虹がゆっくり回っています。そして、虹はだんだん太く高く成長しているようです。
「ビオン村で聞いた勇者選定時の奇跡が起こるニャ!」
だんだん成長し、僕からも離れてゆき、さらに2つだった虹が3つになりました。確か勇者選定時には、天から地に真っ直ぐ延びる虹が10本くらい発生するという話でした。
「創造主様がわたくしをマサト殿に遣わせた理由は、やはりこのためだったのですわ……」
ペガがとんでもないことを言ってます! 神おじいさんは僕を勇者として働かせるためにこの世界に送り込んだのでしょうか? いや、それでは約束が違います!
「いや、ちょっと待って! 僕は神おじいさんに、勇者の話は明確に断ったよ! 僕が勇者に選ばれたとしても、ステータスは偽装して絶対ばれないようにして、魔王討伐なんて絶対にしないよ!! 元世界で僕を巻き込んでしまって悪いと思ってこの世界に送り込んでくれたんだったら、最初の約束は守ってよ~~!!!」
虹はどんどん成長して、とうとう10メートルくらいの高さになり、数も4本に増えていましたが、僕が先ほど絶叫した後にその動きは止まりました。
「おお、止まったニャ……」
そして虹はだんだんとその姿を消していきます。
「マサト様の願いが神おじいさんに通じたようですね」
「あら…… まあ、しょうがないですわね……」
「よかった~」
僕は安堵のあまり、その場に座り込んでしまいました。
先ほどまで射していた日が陰り、頭上には再び雲が広がってきました。そしてポツポツと雨まで降り始めました。
「てっきり私はなんだかんだいってもマサト殿が次の勇者になると思ってましたわ……」
「神獣としては残念に思うのかニャ?」
「別に残念ではないですわ。神獣は人類と魔王との戦いには基本的に不干渉ですわ」
「でも、これでマサト様に仕える理由がなくなったのではないのか?」
「それは関係ありませんわ! 創造主様が私に下してくれた使命は、勇者に仕えろというのではなく、マサト殿に仕えろということでしたわ……」
「それは創造主から直接マサト様に仕えろと言われたのですか?」
「いいえ。残念ながらわたくしのような若い神獣は、直接創造主様とお会いした経験はありませんわ。偉そうに我が物顔で大空を飛んでいる竜ならお会いしたことがあるようですわ。まあ創世記の頃の話らしいので、ここ数千年は創造主様とお会いしたことのある神獣もいないと思いますわ……」
「へー、クロ達3人はこちらの世界に来る前に、神おじいさんと会っているニャ。と言ってもクロはまだ完全に猫だったので、マサトとどんな会話をしていたのか、完璧には理解しては居なかったニャ」
4次元がどうなっているのかなどの話は、たしかに難しい話ですね……
「そうですね…… でも、マサト様は神おじいさんの提案を完全拒否していた覚えはありますので、それが勇者の話だったのですか?」
「そうだよ、シロ。僕は勇者の話を拒否して、シロとクロと3人でこの世界をのんびり行商しながら旅をすることにしたんだ」
「のんびり? もう既に波瀾万丈の旅で、のんびりとはほど遠い気がしますわ……」
「確かにそうニャ……」
そうですよね…… 僕等がこの世界に来てからまだ19日目のはずです。それにしては内容の濃い経験をしてきました……
「そうですか…… マサト殿は創造主様に直接お会いしたことがあったのですわね……」
僕等がしんみりとしていると、遠くの空が明るくなったのに気付きました。
「西の空が明るいニャ。そして、虹も出てきたニャ!」
なんと、遠い西の空が明るくなったと思ったら、複数の虹が真っ直ぐ地面から天に向けて直立しているのが見えます。その虹の数は10本以上ありそうです。
「すごい綺麗ニャ!」
「もしかして、西の方で勇者が選定されたのかな?」
「そうですわ! マサト殿の代わりに復活間近の魔法を討伐するため、勇敢な若者が勇者に選定されたのですわ……」
ものすごく遠いところで起きている奇跡だと思いますが、それでもその荘厳さは伝わってきます。この世界の多くの場所でこの現象は観察されているでしょうから、世界的な大ニュースとなるでしょう。
しかし勇者選定は喜ばしいことではありますが、裏を返すと魔王復活が同時に起きていることも示します。今回は魔人によってひとつの村が滅ぼされるのを未然に防ぐことが出来ましたが、今後は多くの被害が人類側にも発生することでしょう……
僕等はのんびりこの異世界を行商しながら旅をしたいのであって、魔王が復活するような激動の世界を生き抜くハードな生活は勘弁して欲しいのですが……




