102 クミの覚醒
剣を抜いた村長さん達8人を討伐しました。刀が汚れたし、返り血も浴びてしまったので、清掃魔法を掛けておきましょう。
「清掃!」
シロが村長さん達8人の鑑定プレートを拾ってくれました。全員のプレートは見事に黒地に黄色の『正当防衛』の文字が表示されています。
「さすがはマサト様です! 素人の荒くれ者8人なんて、マサト様に掛かれば秒殺でしたね!」
シロが褒めてくれましたが、秒殺は言い過ぎでしょう。3秒くらいは掛かっていたと思います。あれ? 3秒って秒殺と言っても良いのかな?
「本当に、さすがはマサトニャ! 村長達を討伐するのに一行も掛かってないニャ!」
いちぎょう? 一秒の聞き間違いでしょう。でも、実際には3秒くらいはかかっていたはずです。クロはたまに訳のわからないことを言います。今もうまいことを言ったという感じでドヤ顔をしていますが、『一行』だったとしたら、小説にした際の記述が一行もなかったということでしょうか? 理解不能です。
遠くで見守っていた老人がひとり、急いで近づいてきます。
「この度は村長が失礼なことをしました。どうぞお許しください」
老人はそう言って土下座をしそうになりましたので、腕を掴んで立たせます。
「まあ、村長さん達は正当防衛で討伐しましたが、残った村民の方々には責任はないですよ」
「あ……、ありがとうございます!」
「で、あなたは何者ニャ?」
「は、はい、わたしは元村長でして…… 急遽村長代理として私と小麦の買い付け交渉をして頂けませんでしょうか?」
どうやらこの老人は前々村長さんらしいです。ちなみに前村長さんも乱暴者でしたが、やりたい放題やり過ぎて山賊の称号がステータスに表示されるようになってしまったので、村を出て本当に山賊になったとのことです……
代理村長さんとはすんなり小麦の買い付け交渉ができました。さらにこちらの日用品なども買ってもらいましたが、本当にこの村の生活はギリギリだったようで、お酒などは購入せず、ボロボロになっていた衣類や農具を中心に売れました。
さらに1ヶ月後の再訪や手紙の依頼も受けました。実は他の村からも同様の依頼を受けていたので、あっさりと承諾します。この付近の村々はまだ小麦を収穫中だったので、小麦粉の買い付けはこれからが本番です。1ヶ月後には収穫が終わった大量の小麦粉を購入できるでしょう。また、手紙もたまにやってくる行商人に託して大きな町の商人ギルドに渡すと、それ以降はギルドで配達の手配をしてくれます。ルーモイ市に再び行くのは3週間後の予定ですが、この世界の手紙の流通速度はそんな程度でも遅くはありません。
次回この村を訪ねた際には、前村長の資産をまとめておくからと、買い取りを依頼されました。なにやら貴金属類などをためこんでいるらしいです。たしかに討伐したときにも前村長達は趣味の悪いギラギラした指環やネックレスを付けていました。それらの装飾品は今も拾わないで地面に転がったままです。正当防衛で討伐した僕が拾う権利はありますが、元々はこの村の人々の稼ぎを前村長達が搾取した資産の一部なので、このままほっといて今日はこの村を去りましょう。
この村が一番街道から外れた場所でした。あとは東に進路を取って、きつねのしっぽ亭があるトリマ村に向かいながらの行商をしましょう。
昼食は空を駆ける馬車に乗りながら取りましょう。マロンが牽く馬車での空の旅は、振動も風の吹き込みもないので快適です。
「おーい、そろそろ起きるニャ!」
馬車の荷台にあった荷物はすべて僕の収納魔法に片付けて、ハクエイ町の高級宿『白銀亭』で焼いてもらったガミサ焼きを並べてから、朝から眠りこけていたクミさんを起こします。
「ふぇ…… ここはどこですかぁ? 体がすごく軽いですぅ。って、えー、空を飛んでいますぅ! きっとまだ夢の中だとぉ、おもいますぅ…… おやすみなさぁい…… zzzzz」
「こらこら、もういい加減起きるニャ!」
「あれぇ? 空を飛んでいるのはぁ、夢ではないのですかぁ?」
「マサト様にかかれば、馬車が空を飛ぶくらいはなんてことありません。この程度で驚いているようでは、マサト様についていくことなど出来ませんよ!」
馬車が空を飛んでいるのはシロが言うような僕の力ではなく、ペガやマロンの力なんだけど……
「そうだニャ! 昨夜はマサトの偉大さをさんざん教えたニャ! マサトがやることなすこといちいち驚いていたら体が持たないニャ!」
「まあ、馬車が空を駆けるのは直接的にはわたくしの力なのですけど…… でも、いまクミが驚くべきことは、ご自身のステータスの変化ですわ!」
そう、クミさんは僕の特別魔法でステータスが大幅にバフがかけられているはずです。クミさんは自分のステータスの確認を始めたようです。
「えーと…… ばつ2ってなんのことでしょうかぁ? 足す2というのもぉ、意味がわかりませぇん」
普通ならここでかなり驚くはずなのでしょうけど、クミさんは首をこてっと傾けて、癒やし系ですね……
「今あなたにはマサト殿のバフが掛かっているのですわ! ばつではなくてかける! 足す2というのはレベルが2つ上がっていると言うことですわ!」
「……えーと、……つまり、……ええぇ! ものすごぉく、びっくりしましたぁ」
クミさんは目をまん丸にしていますが、そんなにびっくりしているようには見えません。とは言っても、これまでと比べたら最大のリアクションだったのは間違いないので、本当にびっくりしているのでしょう(笑)
「それよりも早く食べないと次の村に着いてしまいますわ!」
「そうだニャ! お腹ペコペコニャ。早く食べるニャ!」
ペガやクロにせかされたので、ステータスについての話はそこそこに、みんなでガミサ焼きを食べ始めます。
「あー、これはおいしぃですねぇ。材料は小麦粉、玉子、ひき肉、ジャガイモ、ピーマン、しいたけ、揚げ物の衣のぉ小さいやつ?を混ぜて、焼いてソースをかけたものですねぇ。初めて食べましたがぁ、私は好きですぅ」
さすがは料理レベルがバフによって3にまで上がっているだけのことがあります。一口食べただけで、材料と料理方法をぴったり当ててしまいました。
その後も辺鄙な村々を3つ回ったところで日が暮れてきたので、トリマ村の近くに瞬間移動し、地上を走行してトリマ村に入りました。瞬間移動した際もクミさんは目をまん丸にしていましたので、きっとびっくりしてくれたようです。
「ほんの4日ぶりだというのに、この村も懐かしく思えるね」
「あれからいろいろなことがありましたからね。私もマサト様と同感です!」
「そうだニャ。まるで217日ぶりに感じるニャ! 展開が遅すぎるニャ! はやくマサトとラブラブな展開にするべきニャ!」
またクロが訳のわからないことを言っている……
展開遅くて申し訳ありません……




