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「違う! 俺じゃない! 俺はやっていない!」
「ふん。もう証拠は揃ってるんだ。これ以上は時間の無駄だ。裁判を待て」
と言い合ったのも、いつの昔だっただろうか。あれから一体、何年経ったのだろう。
殺人、遺体遺棄、遺体損壊などいくつもの刑が上乗せされ、優太は死刑が確定された。そして優太は今、あの部屋の事を思い出しながら空を思い浮かべている。もう一度、あの青い空が見たい。
死刑が確定されて、拘置所で何百日朝を迎えただろうか。革靴の音が聞こえる度に、一体いくつの泣き叫ぶ声を聞いただろうか。死刑が執行されるのは、当日の朝。不意打ちの如く絞首台へ連れていかれる。
看守のただの巡回であろうとも朝を迎えると無口になっていた。靴音に敏感に反応し、誰もがこのまま通り過ぎる事を祈っている。
暴れ回る人を目の前で見つめ、明日は我が身だと脳に刷り込まれていく。今日は生きられる、今日は生きられると毎日毎日精神の極限状態まで追い詰められるのだ。土日は死刑執行はないので、金曜に呼ばれなかった者は、確実にあと三日生きられる計算になる。一日一日が、死へ繋がる恐怖の連続。
靴音が近くなってくる。鉄格子から近い者から安堵の涙が流れる一方、一番奥にいる優太は、心臓が早鐘のように鳴り響く。優太の独房の前で、足はピタリと止まった。
「小川優太、出ろ」
今ここで死んでしまうくらい、その言葉に心臓が止まりかける。
今まで、家族との面会はなかった。五人も殺してしまう息子なんか、家族ではないと、家族の言葉よりも他人の言葉を優先した父親。そんな者からの面会なんてあり得るわけがない。これは間違いなく、死刑だ。
「嫌だ! 俺はやってない! 死にたくない!」
独房は狭く、身体を鍛える事は難しい。それでなくても、刑務官と警備員数名の力に、勝てるわけがない。必死に叫ぶも、無駄だった。
もう人生が終わりかけようとしている事が分かる。これは、三島の怨念なのだろうか。仏間を見ながら、そう思う。
「これで、お別れです。何か言い残したい事があるなら、書き記しておきなさい」
「……お願いがあるんだ。これじゃなくて、俺が捕まった時、ポケットに入れていた一枚の紙に書きたいんだ」
「そんな事をして、何になるんだ! 時間を延ばそうっていうのか!」
「最後の頼みなんだ。お願いだよ……」
『肌身離さず持ってなさい』と、ちなっちゃんが言っていた。彼女は、警察は優秀だと言っていたが、そうは思えない。こうやって、現に冤罪が起こっているのだから。俺は警察ではなく身内を……ちなっちゃんを信じたい。
「分かった。君、当時の物、全部持ってきなさい」
別の担当者に持ってこさせている。言ってみるものだ。残っているのかもしれない。数十分後、手に箱のような物を持って、到着した。




