37
「り、りっくんさん……もしかして、福岡の川社町出身ですか……?」
「ン? 何で知ってるんだ?」
その記事なら見た事もあるし、実際この目で見た事がある。その地域で全焼する火事なんて滅多に起こらないから、記憶に焼き付けていた。
新聞の見出しは、『未成年の占い師、結果を伝えず両親焼死』……だったか。
「たしかその時、誰もが手も足も出ない霊を除霊した男の子がいたのよね。『親殺し』。それが……」
「何だよ。どんな天文学的数値だよ、川社町民がここに集結してるなんてよ」
それはおそらく、ちなっちゃんも川社町出身だったという事なのだろう。
閑話休題したようだ。ふう、とため息をつき、話を再開している。
「そうだよ。……その『親殺し』がこのオレだ。やり残していた事あったんだろうな。母さんも親父も霊になっちまった。当時の福岡支部の奴らでは、オレの両親の浄化はどうにも出来なかった。志願したが、当時のオレは日霊保に登録すらされてない。当然却下されたが、他人に浄化させるなんて、どうしても許せなかった。二度と日霊保の免許を取れない事を覚悟の上で、オレはただひたすら祈る気持ちと共に自我を失った両親と一ヶ月かけて戦い、除霊した。結果、オレは親殺しの異名をつけられたけど、その功績が称えられたのか入隊を許可された。今までどんなに試験を受けても合格出来なかったのが、手の平返しさ。皮肉なモンだぜ」
なるほど。あの寂しげな瞳の裏には、ご両親を自分の手で除霊してしまった事に対する過去の罪があったのか。
ちなみに、無理矢理にでも冥界の扉を開いて存在そのものを消すのが除霊で、霊がやり遂げる事の出来なかった事を代わりにやって、自分の意思であの世へ行ってもらうのが浄化らしい。霊術学の教科書に書いてあった。
「はは。何でオレ、こんな話してるんだろうな」
「いいじゃない。たまには、愚痴りたい時もあるものよ。人間ですもの。私でよければ、いつでも聞くわ」
「……サンキュな。ちなっちゃん、そんなに優しかったなんて知らなかったぜ」
「まあ! こう見えてもね、私は、味方には優しいのよ」
ふふん、とドヤ顔してみせる。
「敵にも優しそうだけどな」
「……そうね。亜歌音を殺したあそこの霊だけは、絶対に私が浄化してあげるわ」
あかね……?
知らない名前が出てきた。今まで穏やかだったちなっちゃんから、地獄の業火が突然噴き出したように見えた。しかし、気のせいだろうか。一瞬で治まっている。
「そういえば、それが例のビデオなのかしら?」
美香が持ってきたビデオに視線を向けている。
……美香? なんか、この間から妙に大人しい。一体どうしたんだろう。もしかして具合でも悪いのだろうか。憑かれている、とかだと目の前にいる二人の霊能者は普通に気付くはずだ。




