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りっくんが、素人の優太を超越したビビり顔を見せてみせる。
「ねぇ、何なのよう。教えてよ」
魔女子さんこと、ちなっちゃんが迫ってくる。えぇい、ここまできたら、もう同じ釜の飯を食う事になるだろう。ビデオも見せてしまえ。
「まさかとは思うけど、この部屋にペンを持ちこんだ人はいないわよね?」
「……ペン? どうして、ペンを持ち込んじゃいけないんですか?」
「昔、ちょっと色々あったのよ、この部屋。まず、この部屋では数を数えちゃいけない。第二に、迫り来る影に対し振り返っちゃいけない。最後に、この部屋でどんな図形であろうと絵を描いちゃいけない。もしかしたら、三番目の事項に該当しちゃったのかもしれないわ」
「え!? ちなっちゃん、この部屋の事、色々知ってるのか?」
優太含め、全員が驚きの色を隠せない。
それにしても、ペン? 使った覚えはないが。
それぞれの顔を見てみると、瞳を伏せて小さく左右に振る晶、当然のように横に振るりっくんの顔。もちろん優太も使ってない。ただ……一人だけ何かを思い出したかのように顎を上げた人物がいた。
美香だ。
「使ったのか、美香」
「うん。ちょっと、会社でイラストを……描いてたつもりだったんだけど」
美香ならあり得る。出版社の大賞を取ったくらい、本気で描いている。しかしこんな力強いタッチではないはずだ。
「本当にこういう絵を描いたのか?」
「……んーん、最近おかしな絵ばっかり描くみたいで、会社の人から注意されたの」
「おかしな絵? それは、自分の意思で描いたものじゃないの?」
ちなっちゃんが不思議そうに美香の顔を見つめた。
「違うよ。私は、ちゃんと自分の意思で描いてる。だけど、思い描いてた絵とは全然違うものに仕上がるの。それが……その一枚だよ」
「……ふうん。まさか、会社にいる時にも仕掛けてくるなんてね……」
それは、何かに取り憑かれているようなものだろうか。
「その時の事を詳しく教えてくれないかしら。私にも、ちょっとこの二○一号室の霊たちには借りがあるのよね」
「ふ、二人以上いたんですか!? ここの霊」
「えぇ。よくよく調査した結果、二体いるの。私が何年、好きでもないこのアパートに住んでるとお思い? ちゃんと理由があるのよ」
たしかに、月に六万五千円の物件に住んでいそうな格好ではない。
「……うん。分かった。ファミレス行こう。ちょっとここでは話したくない」
ちょうどいい。その時にちなっちゃんに動画を見せよう。どれだけヤバいか理解してくれるはずだ。




