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美香は眉を落としたまま、ばつの悪そうな瞳を落としている。
……ン?
「『浄化が完了次第』? まだ終わってなかったんですか……?」
りっくんに訊ねてみると、さも当然のように首を縦に振られる。
「あ、おい、晶! なぁ、待てよ!」
大通り。マジギレしている晶の後を追い、別れそうなカップルを見るような目で通行人が振り返っていく。そして角を曲がった瞬間、二人の足が止まった。
「……このくらい言わないと、あの子には伝わらないのです」
小さく震えながら、顔を俯かせている。
「どうしよう。私、きっと嫌われました。私の親友は美香しかいないのに」
目の前にも親友はいるはずなのに、と思いながらも彼は言葉の意図を読み取った。
本当は、口が裂けても言えなかったのだろう。口の代わりに、心を引き裂き、言った。
美香は幼い頃から甘やかされて育ってきた。もちろん今も変わりはない。ただその結果がこれだ。友が甘やかした結果、晶の父が行方不明になってしまったのだ。
「そろそろ、気付いてもらわないと」
心を鬼にしたのだろう。この先、人生は長い。甘えた考えでは生き抜けない。やはり、さすがA型というべきか。何度も言うようだが、素直じゃなさすぎて損をしている。
「いいよ、晶。俺から言っておくから、ちゃんと仲直りしような。本当は、まだまだ美香から連絡欲しいんだろ?」
無言で頷いている。返事の代わりに、嗚咽が飛び出してきた。
部屋に戻ってからというもの。仕事の疲れで眠る準備をしているのか、美香の部屋は真っ暗だった。ただ、彼女の部屋からも泣き声が聞こえてくる。気軽に言った言葉に生まれて初めて責任を感じ、晶のプレッシャーに潰されそうなのかもしれない。だとしたら晶の作戦は成功したのだが、どうも後味が悪いのか、晶は美香の部屋の扉に座って満月を眺めていた。
「まだいたのか?」
「シッ。気付かれます。心配しなくても、もう去りますよ」
さんのーがーはい、と福岡の訛り全開で優太が手を取って立ち上がらせた瞬間、優しそうな人影を感じた。
「あらあら。どうしたの? 中の子、お友達なの?」
おっとりした女性だ。この人は確か、謎のおばちゃんω。
「……」
晶は無言で頷いている。この人も先程は恐怖に駆られたというのに。もしかしたら困っている人を放っておけない性分なのかもしれない。




