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フーガック生物図鑑  作者: 遠藤迄太郎
転生と原初の島と旅立ち

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第十一話

 青髪少女の名はタチアナというそうだ。


 道すがらいろいろと話してくれた。


 先程の場所は〈トライ・バーミリオン〉なる植物の群生地ぐんせいちの外側である為、大型の獣におそわれかねない事。


 そんな場所で火をくなどもっての外である事。


 この辺りのキノコっぽいモノはからいモノ以外ならば問題無く食べられる事。


 彼女は〈グレムリン〉と呼ばれ、少なくともこの地域では空想上の生き物である事。


 私の様な生物種は見たことが無く、聞いたことも無いという事。


 私が産まれたあの巨大樹の名は〈トライ・マルキド〉、日本語に訳すと、〈原初げんしょ〉という樹木じゅもくである事。


 ヨシミは〈フェルン・ドラゴン〉と呼ばれる信仰対象にされてしまう様な生物である事。



 いろんな事を教えてくれた。



 ヨシミはそんな彼女を見守りつつ前を歩き道を開いた。


 ただ、何か違和感を感じる程にタチアナを気遣きづかい続けていた。



 日が沈み切る前に〈原初の樹〉に辿たどり着いた。



 そこには二人の青年が居た。


 肌が白く髪の色も薄い、そして耳が長い。

 ファンタジー作品に出てくる〈エルフ〉の様な外見だ。


 灰色短髪の青年が口を開く。


 「あー、間違ってたらゴメンな、リケイさんで間違い無いか?」


 私はうなずいた。

 なにせしゃべれんからな。


 彼の正体については見た瞬間に察しが付いた。


 体質のせいで顔に拡がっていたソバカスやホクロ、そして顔の傷が綺麗に無くなってはいたが、私が知っている男の顔だった。


 彼の名は〈織原音階おりはらのぼる〉。


 幼少期、勉学と格闘技術習得等の為、私の家に預けられた青年だ。

 「キラキラネーム付ける親は一回全員◯んで来い」と口癖くちぐせの様に言っていたのを思い出す。


 もう一人が口を開く。


 「ホントにリケイさんなんだ。」


 彼の名は〈逢沢龍驤あいざわりゅうじょう〉。


 ノボルとは赤子の時から共にいると聞いている。

 家の関係上でもあった。


 彼もやはり顔の造りは変わっていない。

 黒目黒髪が金髪と藍色あいいろに変わっているだけだ。


 「もしかして発話はつわができんの?ヨシミさんも最初そうだったんだよ。

 やっぱ人型じゃないと発話に向かないんかね、のどとかくちびるとか。」


 「ぅワァフ。」


 やはり喋れん。まるっきり犬だ。


 「まるっきり犬じゃねーか!」


 ノボルが大笑いしやがった腹立つ。





 夜が始まる。


 森は危険と判断し、〈原初の樹〉周辺にて夜を明かす事となった。


 タチアナ「〈原初の樹〉のにおいはね、ほとんどの動物達が避けてくれるんだよ。酩酊するみたい。だからここは夜でも割と安全なんだよ。

 たまに酩酊する為に近寄ってくる場合もあるみたいだけど。」


 猫にマタタビみたいな話だろうか。いや、基本的には避けるのだから違うか?



 いろいろと説明を受けた。



 まず、ノボルとリュウの二人は〈ハイエルフ〉という種の生物らしい。


 日本語か?と沈黙していたら、三百年以上前にここに日本人が居たと言うのだ。


 詳しく聞くと、ここには〈マルキド歴〉なるこよみがあり、これを定めたのが327年前この〈原初の樹〉より産まれた〈ハウル〉なる人物らしい。


 そして現在はマルキド歴327年であるらしいから、自分が産まれた年をマルキド歴元年としたようだ。


 少し傲慢ごうまんだと思ってしまったが何か理由があるのかもしれない。



 ちなみに〈マルキド〉は〈原初〉が近い。



 マルキド歴元年に、〈ハウル〉、〈モウム〉、〈フウ〉なる三名が、私達と同じ様に〈原初の樹〉より産まれ、ほぼ原始時代生活を営むこの場所に、罠猟わなりょうを、農業のうぎょうを、繊維せんいを、建築けんちくをはじめいろいろな物を伝え、この伝達を効率化するためであろう、現地の発話を元に言語と文字も作り出したと言うのだ。



 実際、ここでの発話文字はカタカナである。



 因みに〈ハイエルフ〉は〈ハァル〉が〈福音〉、〈イゥ〉が〈食べる〉、〈エィ〉〈大きな〉、〈ルフ〉〈耳〉となり、〈祝福された大耳〉となるらしい。



 ヨシミ達は私が産まれた事を察知し、今日はずっと私を捜索そうさくしていたのだという。


 私は地面に文字を刻む。


 [どうやって気付いた?]


 私が産まれた時、周囲には誰も居なかった。

 その後卵を目視確認したとしても、こんな大森林の中だ。発見が早すぎる。



 ノボル「あぁ、匂いだよ。


 枝が折れたりなんかして〈原初の樹〉にデカい傷が付くと、周りに樹液?かなんかの匂いが充満するんだ。

 いまただよってるこのにおいだな。


 そんでその匂いは集落、今俺等が世話になってる所まで流れてくる。

 一応結構な頻度ひんどでチェックはしてたんだけどな。


 卵がかえった時もその匂いをばらくんだよ。」



 ヨシミ「そうして探してたら煙が見えたから確認に駆けつけたというわけ。

 産まれたてで黒蛇くろへびなんかに鉢合はちあわせしたらと思うとゾッとするわ。


 ・・・ん?産まれたて?」



 ヨシミが怪訝けげんな声を発した。なんだ?



 リュウ「あぁ!リケイさんなんでこんなにデカいんだ?今日産まれたんだよな?」



 他を知らなかったので疑問に思わなかったのだが、彼等は皆〈マルキド歴312年〉に赤子、もしくは幼体として産まれていたそうだ。


 対して私は成人男性以上の大きさ。ノボルとリュウを目算で170センチから180センチと仮定すると大体2メートルかそれ以上になる。



 現在が〈マルキド歴327年〉。



 私は卵の中で、15年もの間休眠と覚醒かくせいり返して成長を続けていたのだろうか。






 朝日が差し、小鳥の様な生物が動き出す。


 私達は集落へと出立した。


 ノボル「このくらいの時間になるとそこそこ安全になるから、動き出すのは今くらいが良いと思う。


 夜中に黒蛇とか冗談じゃねぇ。」


 黒蛇とはこちらの言語で〈テオミィア〉と言うらしい。〈テオ〉は黒、〈ミィア〉は蛇なのだという。


 完全に直訳だがイメージ通りの見た目らしい。



 水の中からおそかる、やぶの中をい襲い掛かる、樹上じゅじょうから襲い掛かりめ殺す、危険な湖や河川でも生き残る事が出来る強靭きょうじんな表皮を持つ黒い大きな蛇の様な生物なのだという。


 しかも、非常に短いが強靭な四肢と爪を持ち、地面や樹木を身体全体の膂力りょりょくで蹴り、瞬発的な動きも可能らしい。



 ヨシミ「アレに巻き付かれたら腕力どうこうじゃないわ。

 巻き付かれる前に逃げるか、がんばって頭を潰すしかないわね。」


 黒い大蛇か。少し覚えがあるのだが。まぁいいか。しゃべれんし。



 案内されるままに森の中を歩いた。


 豊かな森だ。


 果樹が実り、それを食す動物達。


 ネズミの様なイタチの様な、またトカゲの様な樹上の生物。


 黒猫にコウモリの翼が生えた様な生物。

 手足翼で計六本。コイツも竜なのか?

 目の位置をから推測するに肉食動物なのであろうが、全く敵意や警戒を感じない。


 悠々(ゆうゆう)と横切る目算体高五メートルはあろうかという、馬のような頭部に短く太いシカの様な角を持つ生物。


 シルエットとしてはヘラジカに近いか?


 ノボル「おー!デカいな!ナントカテリウムっつってあんなのいたよな。ココだと通称つうしょう〈モゥム〉。

 鳴き声からの通称な。


 正式名?つっていいのかな、〈ミクイスエイガウル〉。〈恵み多い巨獣〉みたいな意味な。


 子供に妙に人気がある。」



 タチアナ「あの子はいろんな所歩いて葉っぱ食べるだけだから安全だよ。すごい量食べるけど。子供とかが足にまとわりついても蹴ったりしないし。踏まない様に歩いてるっぽいし。


 村の中で草むしりして集めておいたら全部食べちゃうんだよ。」


 なんだその便利動物。


 タチアナ「あと、毎年何頭か村の中で死んじゃうんだけど、これは皆で食べるんだよ。


 〈食葬しょくそう〉、食べる葬儀そうぎなんだって。」


 ・・・なんだその便利動物。


 リュウ「アイツの骨の煮込み美味いよな。ラーメンスープみたいで。」


 ヨシミ「皮も柔らかくて丈夫だから重宝ちょうほうされているわ。あなた達の靴は全部そうよね。」


 だからなんなんだよその便利動物。

 よくそんなんで生き残ってるな。

 率先そっせんして狩られそうなもんだが。





 見晴らしの良い丘の上に出た。


 ノボル「おぉ、ちょうどいいな。

 今通って来た森が〈原初の森〉、現地語は〈ディナ・マルキド〉。

〈原初の樹〉を有する森な。


 そんでこの森ごと大きく海まで囲んでる森っつうかジャングルっうか竹林っつうか。

 あれが〈トライ・バーミリオン〉の森林。

 あの森林には何故か中型大型の動物が近寄らない。

 小型までは調査出来てない。


 あの森の中虫だらけなんだが、それが関係してるのかもしれない。」



 ヨシミ「歴史の話をすると、〈トライ・バーミリオン〉の森林の内側の危険な生物を排除したから今ここは割と平和なのよ。

 〈ワイバァン〉とかは飛んで入ってくる事もあるけれど。」



 なるほど。

 壁とかおりとかの代わりになっているのか。ナントカの巨人みたいな話だ。


 ん?今〈ワイバァン〉って言ったか?なにそれ楽しい。・・・って、ヨシミは〈ドラゴン〉だったか。


 タチアナ「〈トライ・バーミリオン〉って、見た目はほぼ竹なんだよ。すごい太いけど。」


 リュウ「あと、ラテックスが採れる。

 見てこれ。多分ラテックス。

 硫黄いおう混ぜて硬さ調整するだけの簡単なおしごと。」


 リュウの靴を見ると、麻の様な布を〈ミクイスエイガウル〉の皮で補強、靴底はしっかりとしたゴム製。


 今度は便利植物かよ。


 ・・・まぁ牛とかゴムの木とか、あるといえばあるか。



 丘を下った先に明らかに人が作ったであろう村が見える。


 石造りのドーム状の家屋と思われるものや、木造建築物が三から六程集まり、それが見える限り十以上点在している。


 かなりの人数が居るのではないのか?土地の取り合い等は起こっていないのだろうか。


 ん?なんだ?一番近い五軒の家屋。なにか様子がおかしい。


 ノボル「ん?なーんか?居ねぇ?」


 ヨシミ「・・・!〈テオミィア〉!しかも複数?!」



 三頭の見覚えのある黒い大蛇が家屋を破壊していた。



 ヨシミ「なんでこんな所に?!海から遠いわよ?!

 タチアナは残りなさい!!!」



 全員が走り出したので後を追う。


 後を追う?あ?やべぇめっちゃ速い!追い越しちまった!この身体走るのめっちゃ速い!キモチイイ!


 先行しちまうな。まぁ問題無い。


 コイツらの倒し方は予想がつく。

 電気ショッカー程度でめられる様なヤツだ。


 ハハッ!三百メートル位だったか?すぐだったな!


 先ずは爪の貫手で眉間に一撃!その後尻尾巻き付けて電撃をくれてやる!



 先ず一匹目!眉間を狙う為に跳躍!って、あれ?この走り幅跳び十メートル以上跳んでねぇか?やべぇ跳び越える!あ、追尾して噛みつこうとしてきやがったナイス!鼻面はなづらつかんで眉間みけんに!一撃!



 〔バツン!〕


 入った!


 次は尻尾巻き付けて・・・


 〔ドスン!〕


 なんだ?倒れやがった。目玉飛び出してやがる。トドメは後だ!次は右からもう一匹が突進か!


 オマエにも眉間にくれてやるよ!


 〔バツン!〕


 ハハッ!タイヤにナイフぶっ刺したみてぇな感触だな!


 ・・・なんだ?痙攣けいれんさかなめした時みてぇになってんな。


 後ろからもう一匹か?

 オマエにはイキナリデンゲキ喰らわしてやる!足刀で蹴る様に!尾を振って!放電しながら!頭頂部に一撃!



 〔バチィ!!ッッッパンッ!!!〕



 なんだよ!頭破裂しやがった!アンペアどうなってんだよ!


 まぁいい!次だ!前二匹のトドメ!


 ・・・動かねぇな。

 強えんじゃねぇのか?コイツら?



 ノボルが追い付いてきて言う。



 「なぁ!なに今の?!なぁ!スキルとか魔法とかか?!やっぱこの世界そういうのあんのか?!やっぱり剣と魔法の世界なのか?!」



 めっちゃ笑顔だ。なんか楽しそうだなお前。

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