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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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11 ≪岩塩≫を求めて2~命懸けの攻防~

 ヤートは土がむき出しになっている獣道を時折立ち止まりながら、周囲を警戒しつつこちらに向かってくる。

 だが雑草の中に身を伏せ『潜伏』しているゾジャには気付いていない。


 両者の距離が3メートルになった所でゾジャが動いた。

 雑草の高さギリギリに出していた口――ハエトリグサの虫を捕る所――を開き、そこから種の様なものを大量にヤートに向かって飛ばした。

 飛ばしたといっても凄まじい威力で、土煙が立ち、硬い地面が抉れる。

 これはあれだ、散弾銃だ。

 しかも一粒一粒がでかい。

 速すぎて正確な大きさは分からないが、コップをのせるコースター位はあるんじゃないだろうか。

 あんなの一発でも当たったらスライムじゃなくてもお陀仏だろう。

 だが、ヤートの死を確信した私は次の瞬間驚きに目を見張る。

 土煙の中からヤートが飛び出したのだ。しかもゾジャのいる方角へ。


(逃げるんじゃなくて立ち向かうの!?)


 ゾジャに立ち向かうヤートは被弾しており、顔と体の一部が無くなっていた。

 おそらくもう助からないだろう。

 ヤートも分かっているはずだ。けれど敵に向かって走る。せめて一矢報いるために。


 しかしゾジャもそうなる事を予想していたのか、4本の蔓を振り回してヤートを牽制する。

 種を使わないのは、次に使えるようになるまでに時間がかかるからだろうか。


 ヤートは素早い動きで蔓をかわすと、ゾジャの茎の部分に鋭い牙を突き立てた。

 ゾジャは「ギャギッ」という悲鳴を上げながら身をよじり、必死でヤートを振りほどこうとするが、死を覚悟して挑んだヤートの牙が外れる事はない。

 さらにヤートはトゲが生えた尻尾を無茶苦茶に振り回してゾジャにダメージを与えてゆく。

 しかし次の瞬間、ゾジャが蔓を勢いよくヤートの傷口に突き立てた。

 蔓の先は尖ってはいないが、傷を負っている箇所を狙われたため蔓がヤートの体の反対側から突き抜け、ヤートの血肉が辺り一面に飛び散り、周囲に濃い血の匂いが漂う。

 ヤートの体が痙攣し徐々に力が抜けてゆく。


 そしてヤートのHPが0になり『索敵』から赤い点がひとつ消えた。


 ゾジャは自分の体からヤートを引き剥がすのに必死だ。

 ヤートが息耐えても牙が深く突き刺さっているためなかなか外せないのだろう。

 しかもヤートの置き土産の“【状態】毒”が効いているのか動きも鈍い。


 知らないうちに固まっていた体から力が抜けて行くのを感じた。


 凄い。

 ゾジャもヤートも凄い。

 初めて生き物の命懸けの戦いを見た。

 そして生にしがみつく命の姿に畏怖した。


 私は今、彼等と同じ世界にいて、そして同じ状況の元でこの先ずっと生きて行かなくてはならないのだ。


 深呼吸をした。微かな血臭と濃い緑の匂いがする。

 私は生き延びたゾジャの真上にそろそろと移動すると、持って来ていた石を全部落とした。

 残りのHPが8しか無かったゾジャは声も立てずに息耐えた。

 なんとなくだが自分のレベルが上がったのを感じた。同時に命を奪った重圧がのし掛かってくる。でも振り払う。そんなのは後だ。


 攻撃を行った為『擬態』が切れたので改めてかけ直し、『索敵』と『鑑定』で周囲に敵がいないのを確認してから木を下りる。

 まずはヤートとゾジャの魔石を取り出さなくてはならない。

 ヤートとゾジャに近寄り魔石を探す。

 ヤートは胸の辺りに、ゾジャは根元にあった。魔物によって魔石がある場所は違うので覚えておいた方がいいかもしれない。

 『鑑定』である程度の場所は分かるけれど、知っていれば時間の短縮になる。

 武器である石と魔石を『収納』に仕舞い、今度はゾジャの後ろに回り込む。

 次は≪岩塩≫だ。


 岩塩の壁は白と薄いピンクの層のようになって出来ていた。

 色に違いはあるけれど、どちらも『鑑定』で岩塩と表示されている。ピンク色のほうは鉄分などの別の成分が含まれているのかも知れない。

 採掘用のつるはしなんか持っていないので、崩れて地面に落ちている岩塩を片っ端から拾って『収納』していく。

 そしてある程度採集し終えたので再び木に登ろうとしたときに気が付いた。

 魔石を取ったのでヤートとゾジャの体は既に消えているのに、ゾジャがヤートに向けて投げた種の様なものが消えずに残っていたのだ。

 『鑑定』してみるとそれが“種”ではなく“実”である事が分かった。



≪ゾジャの実≫

 食用可能。

 殻は硬いが焼くと自然に開く。

 非常に栄養価が高く、体力増強の薬や中級ポーションの材料の代用品としても使用される。



 なぜ消滅しなかったのかは不明だが、こんな良いものなら大歓迎だ。急いで落ちている実を拾い集めて『収納』に納めていく。

 『収納』の容量が無くなってきた頃、『索敵』にこちらに近づいてくる赤い点が表示されたので、私は再び木に登った。

 目的の物は全て採集した、しかもレベルアップのおまけ付き――戦ってないけど。

 上出来だ。


 私は洞穴(いえ)に帰るためにその場を後にした。

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