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クッカラド国への潜入


 翌日、アンティから仕事に関する説明があり資料も渡された。

 他の隊員の手前、外部の人間であるリアナが作戦を遂行することは伏せられた。


 諜報内容はクッカラド国の王宮へ潜入しバルギスの山についての情報を収集することと、王の心情を探れというものだった。

 スパルクス国の最北端にあるバルギスの山にクッカラド国が無断で立ちいって作業をしているという。

 その山は中腹までは普通の山と変わりないが、そこから上には雲がかかり、雲の中は吹雪いて、山は凍っている。

 杖で飛んで上れる場所では無かった。


 山の南側に、誰がいつ作ったかわからない入り口がありそこから中に入ることはできるが、やはり中腹あたりまで来ると岩肌は全て凍っていた。

 更にいくつもの滝で道がふさがり、立ち往生してしまう。

 結局山の中を通っても上ることはできなかった。

 誰も近寄らずまったく利用価値のない山なのに、クッカラド国は作業をやめない。

 その行為はスパルクス国領土への侵犯行為だ。

 警告の意味を込めて再三書簡を送っているが、他の件の書簡は返信するのに、その件に関してはなしのつぶてだった。

 仕方なく使者を送ることになったが、その前にある程度状況を探るようにとの王命で、今回の諜報活動が組まれることになった。


 クッカラド国へ潜入するための準備期間は5日間。

 その間に今まで集められた情報を頭にたたきこみ、最善の計画をねる。

 王宮潜入に成功すれば、連絡役のシーラは町に常駐する。


 潜入時のリアナの状況は、スバルクス国からスパイ容疑で追われ、ケガをした状態でクッカラド国行きの船へ密航し、寄港直前にその船から飛んで逃げた設定になった。

 クッカラド国から調べられてもいいように、リアナはスパイ容疑でスパルクス国から指名手配される予定だ。

 出発前日アンティのもとに挨拶に行った。

「命をかける必要はない。失敗しても君は自由になれる」

「はい、行ってまいります」


 作戦開始。

 リアナが身元不明者としてクッカラド国で捕まるところから始まる。


 ◇

 クッカラド国の王都の真ん中に、パール湖という小さな湖がある。

 湖を囲うこんもりとした木々が時期により色を変えてとても美しい場所だった。

 魚も豊富で漁をなりわいとする者や小舟を出して釣りを楽しむ者など、いつも多くの人で賑わっていた。

 ときおり王族も訪れ、その際は、一般の人々のあたりへの出入りは禁じられ、警備も厳重になった。


 その日、王妃が王子と王女を連れ水遊びに来ていた。

 日傘をさす王妃が水辺で遊ぶ子供たちを見ていると、遠くからこちらに向かって飛んでくる何かが見えた。

「あれは……。はっ!」

 ふらふらと飛んでくる者の出で立ちを見て、魔法士であることに気づいた王妃が叫んだ。


「ミカエル、ナターシャすぐ戻りなさい!」

 すぐさま護衛の兵士が羽の生えた馬で飛び立つ。

 それを確認したリアナはわざと真っ逆さまに水に落ちた。


「おい、落ちたぞ! 捕縛魔法で引き揚げろ!」

 岸に上げられたリアナは全身を焼かれ状態で、顔も赤くただれている。

 それも自作自演で、自分自身を焼いたのだった。

 王妃は逃げ隠れすることなく堂々とリアナに近づき、ケガの具合を確認した。

「すぐに王宮に運んで手当を!」

「あ、いや……王妃様、こんな素性の知れないものを王宮へは……」

「じゃあ、あなたが助けなさい!」

 王妃からそういわれた兵士はたじろぎ困っている。

 1人の兵士が前に出た。

「私が町の医者に連れていきます。 意識が戻れば連行いたします」

「ありがとう、そうしてちょうだい」

 その兵はリアナを抱えあげると羽の生えた馬で飛び立った。


 気が付いたリアナはベッドに寝かされていて、手には魔力を封じる黒い輪が片方だけつけられていた。

 そこへ兵士がスープを持って部屋にはいってきた。

「気が付いたか。

 ここの医者、ヨハン先生って言うんだが、今は他の患者を診ている。

 あとで来るだろう」

 そう言いながらスープをベッドの脇の小さなテーブルに置いた。

「あなたが助けてくれたの?」

「まあな。 おまえ、追われていたんだろう?」

 リアナは何も答えなかった。


「やけどや傷は治療してもらったが、体に受けたダメージは戻っていない。

 回復魔法が使えるなら自分で何回かかければ……ああそうか、魔力を封じているんだった。

 これも仕事だ悪く思わないでくれ」

「いえ、助けてもらえただけで充分です。 ありがとう。

 あの、私はリアナ、あなたの名前は?」

「俺はアレクだ。動けるようなら今日の夕方にでも連行する。スープ飲んでおけよ」

 そう言ってアレクは部屋を出て行った。


 夕方までにはなんとか歩けるようになり、リアナは王宮の敷地内にある軍の施設に連行された。

 王都で問題を起こせばすぐに王宮内に入ることが出来てしまう。

 そのことを想定してあの湖を選んだ。

 王族の行動は懐柔している王宮内の者から現地の諜報員に伝えられるため、開示されていない予定以外はすべて筒抜けだ。

 王妃が子供たちと水遊びにきていることは最初から知っていた。


 連行されたリアナは聖堂で透鏡を当てられた。 これも想定通り。

 その後すぐに取調室に連れて行かれた。

 中に入ると取調官以外に上官であることがわかる者2名がそこにいた。

「君の……。リアナ、君の刻印を見せてもらった。

 エンリッツの貴族令嬢でありながら、ガタルンドの諜報員だったんだね。

 だが今は身分証もなく身元不明者だ。

 ターマニス大陸にある国のことは良くは知らんが、我々の常識に照らし合わせてもとても奇異に見えるのだがその説明はできるか?」

 リアナは口をつぐんみ、取調官はため息をついた。


「なぜあの湖にケガをして現れた。その説明をしろ!」

 立っていた2人のうちの1人が怒鳴ったが、それでもリアナは何もしゃべらなかった。


 武器をもたずに魔法は使えないと思われたせいか、魔力を封じる輪は1つしかはめられていない。

(これなら少しは魔力が使えるかもしれない)

 リアナは古代魔法使いであることをさりなげなく相手に伝えたかった。

 そうすれば徴用されるかもしれず、もぐりこめる可能性が高くなるからだ。


 そのときドアをたたく音がした。

「だれだ、取り調べ中だぞ!」

「王妃様の使いのものです」

 扉が開けられ、そこには頭を下げた女性が立っていた。

「王妃様のご命令で、捕らえられたものを近衛隊長の執務室に連れてくるようにと仰せです」


(チャンスだ。 王妃の懐に入る!)



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