表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/41

作戦名『青い鐘をならせ』(5)戦いの狼煙

 ボールダースは賭けにでた。

 ルルクス側についてしまった幹部の説得を試みようと思ったのだ。

 城攻めで一番やっかいになる近衛隊長マーべラスと、城内外全ての指揮権をもつ内陸軍将軍のアドルを自身の執務室へ呼び出した。


 この2人の説得に失敗した結果、身柄を拘束されることになってもいいと腹を決めた。

 以前ならば勝手に軍の幹部と接触することはできなかったが、今回の爆破さわぎでルルクスから使われるようになり動きやすくなった。

 自分の腹心をドアの外に立たせ、3人分のグラスに酒をそそいだ。


「おいおい、酒を飲み交わす仲じゃないだろう。

 それともルルクス王子に付き従う気になったのか?」

 ボールダースをちゃかすように言うマーべラスをアドルがにらんだ。


「確かに、そんな仲ではないな」

 ボールダースはそう言いながら、それぞれの前にグラスをおいた。

「いったいどうゆう了見だ。君にとって我々は敵のようなものじゃないか」

 アドルはボールダースに視線を向けずにそう言った。


「クラウス王子を救うつもりだ」

「ぶっ……。 おい、シャレにならんぞ」

 こぼした酒を手ではらいながらマーべラスが言った。

「私たちのこれまでの関係がなかったら、今ここで貴様を成敗していたところだ。

 そんな話なら失礼する」

 そう言ってアドルが立ち上がると、すかさずボールダースが言った。


「おまえたちは逆族なんだぞ」

 ぼそりとそう言ったボールダースを、アドルがにらみつけた。

「跡目争いが起きていれば多くの血が流れていた。

 今の状況が理不尽であろうが不合理であろうが、争いをさけて国政を動かしたほうが国のため、民のためだ!」

 アドルは拳を握りしめたまましゃべっている。


「まあ、とりあえず座ろうやアドル。話を聞くくらいいいだろう?」

「おまえはどうなんだマーベラス。この国の状況を甘んじて受け入れているからには相応の理由があるんだろう!」

 顏を紅潮させたアドルの声はますます大きくなる。


「いやー、理由なんてないよ。 仕方がなかっただけだ。

 ただ……誰かがこう言ってくれるのを待っていたのかもしれない」

 そう言ってボールダースに向けてグラスを上げると、いっきに飲み干しテーブルに裏返しておいた。


「そうか……。おまえもそう思っていたのかマーベラス。

 アドル、国や民を思うおまえの考えは正しいが、本当は選択できる他の手立てがなかっただけじゃないのか?

 私がそうだった。 だが今その手立てがあるんだ。

 実は、昨日からの騒ぎはエンリッツとガタルンドが関与している」


「なんだと! どういうことだ!」

 アドルは剣を抜くとボールダースの首に押し当てた。

「殺すなら話を聞いてからにしてくれ」

 ボールダースは慌てる様子もなくアドルを見つめた。

 アドルは舌打ちをして剣を収めるとソファーに座りなおした。


 ボールダースは今までのいきさつと、明日の夜、王と王子を救出する計画であることを話した。

「俺は……協力する。近衛兵全員どこかに行かせるか、手出しをしないようにさせるよ」

「ありがとう、マーベラス」

「クッ……。私は、住民の避難を優先する」

 そう言ってアドルも酒を一気に流し込み、グラスを裏返しておいた。

「ありがとう、アドル。君たち2人の協力があれば作戦はきっと成功する」

 ボールダースも一気に酒を飲みグラスをテーブルにふせた。


 ◇

 決戦当日の夜、カマラ海賊団はザッカス島で準備を整えサヘル艦隊出現の連絡を待っていた。

 海賊艦隊はアーミル、マルテ国軍から調達した戦列艦と帆船はブラバスが戦闘指揮にあたる。

 もうじき日をまたぐという時に本部とザッカス島へ艦隊目視の連絡が入った。


「ラミ艦長、見張りの魔法士が来ました!

 サヘル艦隊が現れたそうです!

 3番暗礁浮標から北北東の方角 20~30キロ!」

 海上班の魔法士がサヘル艦隊を目視し、すぐにザッカス島まで連絡に来た。


「港近くの暗礁浮標から3番暗礁浮標までは25キロ

 港から港近くの暗礁浮標までは10キロほどです。

 ザッカス島から3番暗礁浮標までは15キロ」

 アーミルがすかさずラミに言った。

 ラミはアエロに飛び乗ると旋回しながら大声で話した。

「港近くの暗礁浮標と3番暗礁浮標の間で待機。

 3番浮標の待機者から艦隊の詳細が伝えられたらそこから突進する。

 ブラバスは時間をおいて1度北上したあと、3番浮標へ回り込んで逃げ道を防げ。

 みんな、いくぞ!」


「おおおお!」

 ザッカス島のくりぬかれたような内湾に面する岸壁に海賊団の声が反響し振動を感じるほどだった。

 ラミはアーミルに手で合図を送ると、顔をマスクで隠して飛び立った。


「総員配置につけ!」

 アーミルの掛け声が鳴り響き、同じ掛け声が繰り返し艦内をかけめぐった。

 黒い船体の上にたなびく真っ赤な旗は、飛び立つ白い鳥の足に玉が握られている。

 多くの島を侵略した者たちへ正義の鉄槌をくらわすためにカマラ海賊団は出航した。


 港近くの暗礁浮標と3番暗礁浮標のほぼ中間あたりに到着したアーミルの海賊艦隊は全ての明かりを消した。

 アーミル艦隊は、

 主力艦 16門の戦列艦 1艘

 6門砲列甲板一層の帆船 1艘

 空中砲撃隊の高速帆船  1艘

 治療回復船       1艘。

 横に並んだ2艘の主力艦のわきに6門帆船、その後ろに高速帆船、治療回復船はそれから5キロ後方に待機している。


 間もなく暗礁浮標の待機者のライリがサヘル艦隊の詳細を伝えに飛んできた。

 サヘル艦隊は、

 主力艦 16門の戦列艦 1艘

 4門帆船        1艘

 高速帆船        1艘

 治療回復船       1艘。


「4門帆船は空中砲撃隊だろう。

 高速帆船に魔剣士が束で乗っている。

 この船につけるつもりだ。

 主力艦は魔法士の反射魔法で舵板は削れない、獣人部隊はメインマストを狙え。

 わかっていると思うが敵の治療回復船は放って置け。

 獣人部隊だけでなく飛べるものはできれば敵の魔法士の杖を奪え。

 血の匂いをかぎつけて海獣が襲ってくるまでの短い時間にけりをつける。

 自分の組で不明者がいれば戦闘は後回しで救助し治療回復船に投げ入れろ。

 慌てるな、我々は勝てる! 全速前進!」


 暗礁浮標の待機者から詳細が伝えられたと言うことは、すでに10キロは切っている。

 こちらが突進すれば出会うまでには10分ほどだ。


「あちらの主力艦隊の左をかすめろ、すれ違ったら右へ急転舵、面舵いっぱい。

 軌道を探り主力艦の周りを回りながら砲弾を撃ち込む。

 回りっぱなしでな。

 特に船首と船尾を狙う。

 速度と距離は操縦士、おまえの腕次第だ!」


「い……や、アーミル艦長。そんなことをしたら船壊れますよ!

 だいいち向こうの砲撃も受けまくる」


「壊れたら止まったまま、船が沈むまで砲撃を撃ち続ければいい。

 敵船の腹には反射要員の魔法士をおいているが、船首船尾にはいないはずだ。

 良く削れるぞ。当然攻撃はくらいまくる。

 うちの魔法士にはきついが踏ん張ってもらわないとな!」


「あ……はい、わかりました!

 であれば敵の4門にこちらの6門の衝角を当てて、行く手を阻みますか。

 そこの船上はみごとな乱戦になるでしょうが仕方ありません。

 主力船の周りを空けるように6門へ魔法士を飛ばして指示を出します!」

「頼んだよ甲板長!

 獣人部隊長!そっちの指揮はまかせる。自己判断で!」

「了解したアーミル艦長!さーて、景気づけに明るくしてくるか」


 獣人部隊長は飛び立つと空中部隊の船へ移った。

「獣人の弓部隊、船の周りを飛びながら火矢を打て。

 反射場所の確認と、撃ち込みが成功した場所にはさらに燃料玉を打ち込め。

 他のものは魔法士の杖を奪うのと、上空からメインマストに燃料玉を振らせて火矢を打ち込む。

 大量の魔法士が飛んでいるはずだ無理はするな。

 死んでもだれも褒めねぇぞ!」

 獣人族たちが一斉に笑った。


 こうして今、戦いの狼煙が上がった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ