表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/30

宿場町に着いたよ


「やっと宿場町についたわね」

「歩き詰めだったから、疲れたでしょ。今日は宿屋で休めるかな」

「宿屋があるといいけど」

「小さい村だもんね。この村は、カミユ村っていうみたい」


マルク村を出発して六日。

のんびりした旅路だったせいで予定よりも時間がかかったけれど、私たちは無事に街道沿いの村まで到着した。

期待してた商隊にも会えなくて、ずっと徒歩だったら余計に時間がかかったんだ。


「おやあ、あんたたち、山沿いの街道から来たのかい? 珍しいこともあるもんだ」

「こんにちは、おじさん。私たちはマルク村から来たんだよ」

「あんな山の中から来たんかい。そりゃ疲れてるだろう。でもこの村には宿屋はないぞ」


通りがかった村のおじさんは、私たちの姿をしげしげと眺めながら話しかけてきた。

肩にクワを担いでいるから、農作業の帰りなのかな。


「娘っ子だけできたんか? あぶねえなあ」

「街道に出たら商隊とかと合流できるかと思ったんだけど」

「西側の湖沿いに新街道が出来てからは、帝都からの商隊はみんなそっちにいっちまうからなあ」

「新しい街道ができたの?」

「知らねえのか? 随分前のことだけどなあ」

「マルク村は田舎だからね、情報も入ってこないんだよ」

「そうかあ。村長さんちなら広いから泊めてくれるかもしれね。聞いてみい」


そういうと、おじさんは歩いて行ってしまった。


「村長さんの家は、あの大きな建物かな?」

「そうね、行ってみましょう」

「ん、ごはんか?」

「違うよ~」

「む。ごはんになったら起こすがよい」


そういうと、シュバルツはもそもそと私の胸元に潜り込んだ。

最近のシュバルツのお気に入りの場所だ。

シュバルツが入っていると、やたら巨乳に見えて恥ずかしいからやめてほしいんだけどね。

やれやれと思いながら、私とアイシャは村長さんの家らしき建物にむかっていった。

どこの村もだいたい、真ん中にある大きな建物が村長さんの家だから、恐らく間違ってはいないだろう。


「この村には、お店とかはなさそうね」

「うん。冒険者ギルドもないかなあ」

「冒険者ギルドって、大きな町にしかないんでしょう?」

「そういうわけでもないけど……」


冒険者ギルドは、魔物の発生が多く、依頼が多く見込まれる地域に作られる。

小さな町や村でも、出張ギルドや簡易ギルドが作られたりもするのだ。

申し訳程度の柵の外には畑がひろがり、ぽつりぽつりと村人たちが畑仕事に精を出している。

魔物の襲撃はほとんどないんだろう。

なんともなじみ深い風景の、マルク村と大して変わらないような田舎の村だ。

ほぼ自給自足だろうし、商店なんかはないだろう。


「魔物の襲撃や依頼とかはあんまりない、平和な村なんだと思うよ」

「平和か。平和なのはいいことよね。つまらないけど」

「まあまあ」


のんびりした村の空気に、のどかな気分になりながら歩いていると、あっという間に村長の家に到着した。

アイシャが木製の扉をたたき、声をかける。


「たのもーう」

「道場破りか。すみませーん。誰かいますかー」


声をかけてしばらく。

どたどたと慌てるような足音が聞こえ、扉が勢いよく開かれた。


「ばあさん、待ってたよ……! って、誰だ?」

「へ?」


扉を開けて顔を出したのは、二十代くらいのの男性だった。

しかしレティたちを見ると、喜色を浮かべていた顔がみるみる曇り、がっかりと肩を落とした。

そんな男性の様子に、レティとアイシャは顔を見合わせた。


「誰か待ち人がいたの?」

「ああ、まあな」

「えっと、村長さんですか?

「村長は俺のおやじだ。親父になんか用か?」

「私たちは旅の者で、今夜の宿をお願いできないかとお尋ねしました。それよりどうかしたんですか? なにかお困りのご様子ですが」

「宿か……それこそ親父に聞かないとわからねえなあ。泊めてやりたいのはやまやまなんだが実は、親父が今寝込んでいてな。薬師のばあさんを待ってるんだけど」

「ご病気ですか?」

「ああ、それがよくわからねえんだ。急に具合が悪くなってな……ああ、ばあさん、待ってたよ!」


男性が声をかけた方に顔を向けると、杖をついたおばあさんが歩いてきた。


「そうせかすんじゃないよ。デニスの様子はどうなんだい」

「ああ、それが、今朝急に倒れてから、意識ももうろうとしてるかんじでな。手足が赤黒く変色してきてるんだよ。親父、なんか変な病気かなあ」

「変色だって⁉ まさか……早くデニスのところに案内しな!」

「お、おう!」


そういうと、二人は家の中に入っていってしまった。


「村長さん、病気かな」

「わからないけど、旅人を泊めるどころじゃなさそうなのは確かね」


取り残された私たちは、顔を見合わせて肩をすくめた。



誤字報告、ありがとうございます。もし面白かったり、続きが読みたいなーと思っていただけたら、評価とブクマをぽちっと頂けると、励みになります^^よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ