兎人族の村、村長さんの家
案内された村長さんの家で、私たちはお茶を頂くことになった。
村長さんの家は、その体に合わせたような小さいものだったけれど、ハクトさんもなんとか入ることができるぐらいの大きさがあった。
「街の家に比べれば粗末ですが、室内はなかなか快適ですよ」
ハクトさんが言う通り、土のかまくらの中は意外に快適そうな住居が整えられていた。
しっかり固めた土の壁には木の棚がくっついていたり、かまどの上には煙突の穴も開いている。
開閉できる窓もついていて、室内は意外に明るかった。
私たちはキョロキョロと興味津々で室内を見回した。
「サイズが小さいってだけで、なんだか全部可愛く見えちゃうわ」
「ほんと、可愛いよね。雨が降ったら、雨漏りしたりしないの?」
「この辺りは、雨はあまり降らないのじゃ」
「あら、そうなの? でもそうしたら、人参の収穫に影響が出たりしないの?」
「この村で作られる人参は、普通の人参とは違って乾燥に強いのじゃ」
「「へえ~!」」
たわいもない質問に答えながら、村長さんは手慣れた手つきでお茶を淹れてくれた。
抱えるように持ったポットは大きすぎるような気がしたけれど、危なげなく持っている。
テーブルや椅子は人間の子供が使うような小さいものだった。
「小人の家に遊びに来たみたいで楽しい」
「うふふ、確かに~」
「こんな小さな家に招かれたのは初めてですの。意外に快適ですの」
プリュドも心なしか嬉しそう。
アイシャときゃっきゃしていると、湯気の立つコップをテーブルに置いた村長さんが椅子にちょこんと腰掛けた。
「ふう~、ひどい目にあったのじゃ……」
「ごめんね、村長さん。全く、シュバルツったらしつこいんだから」
「こんな可愛いウサギさんをいじめるなんて、シュバルツは悪い子だわ」
「ちょっと調子に乗ってしまったのだ。うさぎよ、すまぬのだ」
「きょっ! イエイエ……」
「がっはっは、でも、おかげで村長も皆様に慣れたみたいですね!」
「ドラゴンに追いかけられるのに比べたら、人間の旅人なんて怖くないのじゃ」
そういえば、少しびくびくしつつも、村長さんは私たちとテーブルを囲んでいる。
草のドームに隠れていたのに比べたら、すごい進歩かも。
「兎人族にはハクトさんみたいな人間に近い人と、村長さんみたいな兎に近い人がいるのね。知らなかったわ」
「プリュドは知っていたですの。実際にあったのは初めてですけれど」
「確かに見たことなかったね。兎人族を見かけること自体少ないけど」
並んで座っているハクトさんと村長さんは、同じ兎人族とは思えないほど外見が違う。
村長さんの身長は一メートルほどだろうか、外見は直立歩行することを除いてまんまうさぎである。
一方のハクトさんはムキムキマッチョでかなり背が高い。頭に生えているうさ耳がなければ、兎人族とは思わないだろう。
そんな二人を眺めつつ、この家に来るまでの道中で村長さんタイプの兎人族をみなかったことに気付いた。
「村長さんみたいな、うさぎに近い兎人族は他にはいないの?」
「いますよ。でも怖がりだから隠れてるんじゃないかな……でもこんなに見かけないのはおかしいな。好奇心の強い子供は出てくることもあるのに」
「シュバルツがいたからじゃないの?」
「むっ」
シュバルツは不満そうに口をとがらせたけれど、村長さんを追いかけまわしたことを反省しているのか、何も言わなかった。
よしよしとシュバルツの頭を撫でていると、村長さんがなんとなく困り顔をしてるような雰囲気を出している。
うさぎなので表情があまりわからないのだ。
「何かあったの?」
「うむ……実は最近、ウェアラビット……兎人族の中でもわしらのようなものをいうのじゃが、そのウェアラビットが攫われることが増えていての」
「「「「なっ⁉」」」」




