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つるぴかウサ耳男


ぷりぷり怒るシュバルツの前で、私は正座していた。

シュバルツはほんのり赤くなった顎の下を撫でながら、もう片方の手でぶちぶちと草をむしっている。


「えへへ、ちょっとやりすぎやったかな? ごめんね、シュバルツ」

「まったくなのだ! ちょっぴり意識が飛んだのだ!」

「あれはレティの魔法か?」

「ううん、プリュドのファイヤーボールだよ」

「なに⁉ うそなのだ! プリュドの魔法ごときで、我がやられるわけないのだ!」

「本当だよ~。私が打ち返したから、多少はスピードがついてたかもしれないけど」


シュバルツはショックを受けたのか、驚愕の表情で固まってしまった。

氷のドラゴンであるシュバルツは炎属性が弱点とはいえ、プリュドの攻撃魔法でダメージを受けたのが信じられないんだろう。

プリュドは僧侶だしね。

ドラゴンだけあって、シュバルツの鱗の強度はかなりのものだ。

前世の私が聖剣で全力攻撃したらさすがに耐えられないだろうけど、プリュドの魔法でシュバルツが気絶なんてするかなあ?

私がそんなことを考えている横では、プリュドが嬉しそうに小躍りしている。


「レティが打ち返したとはいえ、プリュドの魔法で落っこちてきたのは事実ですの!」

「……」


シュバルツは悔しそうにプリュドを睨み付けている。

プリュドの魔法で気絶したなんて信じられないけど、事実落っこちてきたから何も言えないんだろうなあ……

このままだとシュバルツの機嫌が大変なことになりそうだったので、慌ててフォローする。


「ファイヤーボールがかなりいいところにあたったんじゃないかな」

「シュバルツったら、顎の下にファイヤーボールがあたった勢いでぐるんって一回転してたものね。あれは痛そうだったわ」


アイシャが同情するような目をシュバルツに向けている。


「アッパーカットかあ。脳震盪でもおこしたかな」

「ノウシントウとはなんなのだ?」

「なんか、顎のところをピンポイントで殴られると脳みそが揺れるとかなんとか……それでくらくらしちゃうんだよ」

「それなのだ! やっぱりプリュドの魔法じゃなかったのだ!」

「そんなことないですの! プリュドの魔法に負けたと認めるですの!」

「お主程度の魔法でどうこうなる我ではないのだ!」


その後、妖怪大戦争みたいになったプリュドとシュバルツをなだめるのにしばらくかかった。


「そろそろ魔物の死骸を集めて街に帰ろうか」

「わかりましたの。手分けした方が早いですの。アイシャは弱っちいから、レティと一緒に集めるといいですの」

「ぐぬぬ……言い返せないわ」

「では我は遠くの魔物から集めていくとしよう」


草原のそこら中に沢山の魔物の死骸が落ちている。

シュバルツはずいぶん遠くまで取りに行ってくれたけど、遠すぎるものはほかの魔物に食べられちゃってるかもなあ。


「はあ……なんか疲れたよ。ていうか、何しに来たんだっけ」

「プリュドの魔法をレティが受けられるのか試しに来たのよ。受けるっていうか、打ち返してたけどね」

「千本ノックみたいで楽しかったよ。アイシャも今度やろうよ」

「できるか!」


アイシャと話しながら、撃ち落とした魔物の死骸を集めていく。


「すごい量ね……ねえ、なんだかおかしな魔物ね」

「ん? 確かに。オークのようにも見えるけど、頭についてるのはウサギの耳だし……」


つぶれたカエルのような姿勢でうつぶせに倒れている男はオークのようにむっきむきで、つるぴかの頭にはふさふさとした白いウサギの耳がついて……って。

そこまで考えた私は恐ろしい事実に気付いてしまった。

ぎぎぎ、と音が鳴りそうなほどぎこちなくアイシャのほうへ首をめぐらせる。


「アイシャ、この人獣人じゃない?」

「えっ、獣人? 獣人って魔物じゃないわよね? 倒しちゃだめじゃない?」

「ダメダネ」

「うそ、どうしよう!」

「ヤバイヨヤバイヨ。シュバルツが墜落する魔法なのに」

「なんでさっきからカタコトなのよ!」

「うう……」

「「あっ!」」

「うう……背中がいてえ」


先ほどまでピクリともしなかったうさ耳男がうめき声をあげて身じろぎした。

慌てて駆け寄ると、男性はゆっくりと顔を起こし、あたりを見回した。

つるぴか頭から直接生えているうさ耳が、それに合わせてふわりと動く。



あけましておめでとうございます!

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