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中二病の新人たち


脱線しまくった話の筋を戻そうと、レイラは話題を変えることにした。


「シュバルツって名前なのね。ドラゴンにつける代表的な名前だものね」

「そうなの? ていうか、ドラゴンってそんなに沢山いるの?」

「ええ。勇者様の騎竜の名前にあやかっているのよ。高価なペットだけれど、ドラゴンを飼いたいという人はすくなくないわ」

「我が一番先なのだ!」

「へへ、なんか照れちゃうね、シュバルツ」


へへへ、と笑いながら頭をかいているレティに首を傾げつつ、レイラは言葉をつづけた。


「それで、冒険者登録だけれど。基本的に誰にでも冒険者になる権利があるから、ギルドがそれを止めるすべはないわ。本当に冒険者になるの?」

「うん。私とアイシャを登録してください!」

「ついに冒険者! ランキングを駆けあがるのね!」

「冒険者にはランキングがあるのか? 我のランクはなんじゃ? もう駆けあがってるはずなのだ」

「ドラゴンにランクはないよ、シュバルツ」

「がーん! なのだ!」


何故か落ち込んでいるドラゴンを慰めている少女たちに、登録用紙を渡す。


「レティちゃんとアイシャちゃん、でいいのよね? これに名前と職業を記入してくれるかしら。あ、字は書ける?」

「はい!」

「私も大丈夫よ」


さらさらとペンを走らせる二人。

すぐに差し出された登録用紙を受け取り、登録用の魔道具に記録していく。


「アイシャちゃんは魔法使いなのね。師匠がいないとなかなか大変だけど、頑張ってね」


師匠の有無は、魔法使いの成長速度や技量にかなり影響する。

もちろんそれは前衛職などにも言えることだが、より専門性の高い魔法系職種はそれが如実にあらわれるのだ。

攻撃魔法使いには攻撃魔法使いの、治癒魔法使いには治癒魔法使いの師匠がいた方が成長が早い。


「師匠ならいるわ。攻撃魔法は専門外のひとだけど」

「プリュドは僧侶だもんね。ブリジットがいたら攻撃魔法も教えてもらえたんだけど」


二人の言葉に、レイラは笑顔を浮かべながらも呆れていた。

ドラゴンのシュバルツ、僧侶プリュドに、極めつけは魔法使いブリジットですって?

残るは賢者ノルンかしら。勇者パーティの完成ね。


「憧れの勇者様ってか」

「誰しもそんな時期ってあるよな」

「お前の黒歴史を思い出すぜ……」

「俺のかよ⁉ 自分のを思い出しとけよ!」


アルとフレッドも同じことを考えているのか、軽口を叩きながらも生暖かい眼差しで少女たちを見つめていた。


「今いる師匠と方向性が違うなら、学院に入るのもお勧めよ。専門性を活かした授業が受けられるわ」

「学院?」

「ええ。ベイテムの西の湖に浮かぶ学園都市カランブアイバでは、多種多様な授業が受けられるの。リント王国の空中要塞都市ビブルガルドでは高等魔法を学べるわ」

「空中要塞都市⁉」

「なにそれ超カッコいい」


目を輝かせる少女たちに、レイラはしめた、と内心ほくそ笑んだ。

冒険者は危険な稼業。どう見ても強そうには見えない少女たちが死んでしまうのは、受付歴がそれなりに長いレイラでも胸が痛む。

上手く学園で学ぶ方向に誘導できれば、少女たちが痛い目をみなくても済むかもしれないという期待があった。

それに、学園に入学するには有力者の推薦か親の承諾がいる。

年端もいかない少女たちに、有力者の推薦など取り付けられるとは思えない。

上手くいけば、家出人らしき少女たちを親元に連れて帰ってもらえるだろう。


「空中要塞都市が気になるかしら? ビブルガルドの学園には、勇者の頭脳、至高の賢者ノルン様もいらっしゃるわよ」

「ノルンが?」

「ノ・ル・ン・さ・ま! ノルン様は、ビブルガルド学園の名誉学長をなさっているの。直接会う機会もあるかもしれないわよ?」


ノルン様を呼び捨てにするレティのおでこをチョン、とつつきつつ補足する。


「空中要塞都市は、冒険者を引退したノルン様が中心となって作られたのよ。北部エスト山脈を挟んで南北に分かれているとはいえ、リント王国は魔族領と接しているから」

「防衛を兼ねてるんだ。さすがノルン……さま」

「さすが賢者様だわ! プリュドとは大違い!」

「アイシャ、そんなこと言うとまたプリュドが怒るよ。ただでさえプリュドはノルンと仲悪いのに」

「確かに聖女プリュド様とノルン様は仲が良くなかったって噂だけど……貴方たちも設定が細かいわね」


少女たちの妄想じみたお芝居は、まだ続いているらしい。

やれやれと呆れを深めながら、レイラはレティの冒険者登録をすることにした。



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