プロローグ
永遠を手に入れた世界で、少年は“終わり”に惹かれていく。
不死になって700年。
人類は寿命を失った。
働かなくても生きていける。
AIが全てを管理し、テレポートでどこへでも行ける。
争いも、苦しみも、死さえも遠い世界。
そんな時代に、“本当に死ねる薬”が現れる。
その名は——寿命薬。
親友の父の死をきっかけに、16歳の少年・天美天は世界の歪みに触れていく。
これは、“永遠”に飽きた人類の物語。
意識をデジタル化出来るようになって早700年
AI労働が当たり前
不死になった事で一時期子供が大量に生まれたんだけど規制されて1家族100年につき3人まで
今じゃ人口も安定した増加を続けている
昔は人族も寿命があったらしいけど今は無い
そんな世界で寿命に追われるってどんな感情なんだろう、昔の人族は死があるから生が輝いてみえたりしていたんだって
行きたい所へ行くために鉄の鳥や鉄の蛇の腹に入らなくてもすぐ行ける今じゃ想像するのも難しい
俺は天美天16歳
ヒノモト高校に通ってる特にやりたいこともない高校2年生、こんな世界じゃ教育なんて要らないだろって声がチラホラあるらしいけど精神教育やコミニュケーション、AIには生み出せない事を生み出すためにも必要だと俺は思う
今の時代やりたい事が無ければただ消費するためだけに存在していく事になる
昔と違って働かなくてもご飯は食べれるし雨は凌げる
お金も国から1人月25万支給されるから欲しいものがあればそれで買えばいい、何せ仕事は全部AIがしてるもんね、昔は国同士の戦争もあったらしいけど今じゃそんなことは起きない、いい世界だと思うんだけど
疑問に思うことも増えた
周りに聞いても「そんなこと気にしなくてもいいじゃ無い」で終わり
それとも「俺がおかしいのかな?」
いつもの空き地で独り言を呟くと
「何してんだよテン!」
こいつは8歳の頃からの親友熊谷一
「ハジメか、おはよ」
「おう!テン、おはよー」
「んでさ、さっき何1人で喋ってたの!笑」
こいつの底抜けの明るさはたまに毒だ
「いや、この世界の在り方が正しいのかって」
少し格好つけて言ってみる。
「まーた、難しいこと考えてんな?
もっと気楽でいいんだよ!俺たち恵まれてんだからよ!」
それは確かにそうなんだけど、昔よりは随分と生きやすいもんな
「まぁそれもそうだな、でも考え出したらキリがなくてさ」
「まっなんでもいいけど!んでさ、今日は何するよ!」
最近ハジメと俺は学校を休んでやりたい事をやっている、と言っても非人道的な事や犯罪に纏わる事は脳にあるストッパーによって強制シャットダウンさせられるからただ街に出かけて入りたい店や食べたいご飯を食べてるだけなんだけどね
「んーそうだなぁ、昨日は渋谷ターミナルでラーメン食ったしその前はLAのハリウッドいったろー、この歳になると大体行きたいところは行ってるんだよなー」
今の時代テレポートで出かけるのが当たり前
食べたいご飯はともかく行きたいところに行くなんて小学生でも出来る
「何か新しい刺激欲しいよなぁー笑」
「確かになぁ、でも犯罪は出来ないし新しい事なんて他にあるのかな?」
「そーいや知ってる?後1年もたてば天の川銀河も超えて新しい世界行けるらしいぞ!」
「知ってるよ、新しい趣味見つけるなら後1年は我慢しなきゃかもな」
人族が月へ到達して早数百年
今じゃ別の惑星には簡単に行けて銀河まで越えようとしてるなんて昔の人族はどう感じるんだろう
俺にとっちゃそれが当たり前なんだけど
こんな事考えるのはやはり俺がおかしいのかな
ハジメは何も考えてなさそうだし
そんな思いに耽ってると
「そーいやさ、同じ高校のやつから聞いた話なんだけど
最近寿命薬ってクスリが出回ってるらしいんだよ」
「なんだそれ?」
脳にあるストッパーは寿命を取り払う機能も備え付けられていて身体が老化すればまた新しい身体にストッパーをつければ寿命で死ぬ事は無いらしい
バックアップのとったストッパーを予備の身体に付けてスリープしておくのが今の決まりだ
もし死にたいなら300歳を超えてからじゃ無いと
死なないよう法律でも決まってる
絶対に300歳までは死ねないようにこの世界はできてるんだ
「予備もあるし、バックアップもあるからその場で死ぬなんて無理だろ」
「いやいやそれがな?どうも悪いことしようとしたら強制シャットダウンするじゃん、その機能をちょちょっといじくってバックアップも予備の身体にもログインできないようにできるんだって、そしたら残るのはメインだけじゃん、後はそのメインを殺せば、、
まっ難しい事はわかんねーけど笑」
予備にログインできないようにしてメインの機能を停止させるんだろうか、この世界で死ぬなんて想像できないがそれが本当だとすると少しワクワクしてる俺がいる
こんなに死に興味が湧いてるなんて今じゃおかしいよな、そんなクスリ出回るなんて、国は何をしてんだ
「それが本当なら直ぐに規制されるのがオチじゃねーの」
「それもそーだけどさ、でも死ぬってどんな感じなんだろーな?」
「それは俺も考えたことあるよ、俺的には深い暗闇に堕ちていくんじゃ無いかなって今は思ってる」
「こえー笑こんなこと考えてんのおれらだけじゃね笑」
「それはそうかもな笑」
寿命が無くなってから人族はかなり死から遠くなったらしい、それと同時に光と影、苦と楽、昔は相反するもので表裏一体だったらしいけどそれも崩壊してきてるって本で読んだな
「取り敢えず、花龍行くか!」
ハジメがさっきまでの話は忘れて俺に言う
花龍は俺たちの家の近くにあるラーメン屋だ
とても美味しいし、店主のおっちゃんは昔から良くしてくれる、言ってもないのにチャーシュー多めに付けてくれたり、俺も花龍は好きだ
「それもそーだな、昼何も食べてないから今日は炒飯セットにしよ」
「炒飯いいな!、俺は餃子とライスセットに決めたぜ笑」
いつもの道を2人で歩く
当たり前にすぎてる時間だけど心地いい
そんないつもと変わらない日常を過ごしてるある日
ハジメのとーちゃんは寿命薬で死んだ 48歳で




