第五十話 罪の告白と、祝福の結婚式
いつもの五人に加えトライアード、フィルファ、アイナスと共にニュートの超絶運転で半日かからずにイクスに到着した八人。
「父さん、母さん、ただいま戻りました」
「ウィリアム父さん、レベッカ母さん、会いたかったですー!!」
「久しぶりウィリアム、レベッカ」
「おじいちゃんおばあちゃん会いたかったですー!!」
「お初にお目にかかる。御父尊、御母堂、妾はブラッドライン・キリア。吸血鬼のクリスチャンじゃ。この度御父尊、御母堂の大切な孫、ニュートと婚約し、お二人に結婚の祝いをして頂きたいと願っておる」
「久しいのう、ウィリアム、レベッカ。イクスにもかなりクリスチャンが増えたそうじゃな。二人の働きがしっかり主に用いられて喜ばしいことじゃ」
「は、はじめまして、トライアード様の僕、フィルファといいますです!!」
「お初にお目にかかります。同じくトライアード様の僕アイナスと申します」
「「………………」」
唐突な八人の来訪、特にキリアとトライアード達に呆然としているカシウス夫妻。クロとニュートが飛びついているから身動きも取れない。
「あの、父さん母さん?大丈夫ですか?どこか体の具合が悪いのですか?キリアさん、俺の血を舐めて父さん母さんに血を飲ませてください。ニュートもお願いしていいか?それともフェニックスの肉が必要か?シロ、マイクロウェーブでフェニックス溶かしてくれ。すぐ料理する」
トライアードの一件で愛する人の死に異常なほど敏感になっているレン。落ち着いてはいるがフェニックスどころかキリアやニュートの血も精神的ショックには効果はない。
「い、いや、レン、私達は元気だ……トライアード先生もお久しぶりです。キリアさん?ニュートと結婚とはどういう?フィルファさんもアイナスさんも初めまして。カシウス・ウィリアムといいます」
「ええと……久しぶりレン。トライ先生も数年ぶりですね。フィルファさんとアイナスさんは初めまして。キリアさん、ニュートと結婚するのですか?ああ、すみません、私はカシウス・レベッカと申します」
その後長い家族会議が行われた。ウィリアムとレベッカもキリアとニュートの結婚、何故トライアード達が来たのかは理解した。
「吸血鬼でしかも私達よりはるかに長い人生をクリスチャンとして生きてきたキリアさんならニュートにはぴったりの相手だろう。二人もレンたちのように仲がよさそうだしな。なるべく早く結婚式を行おう」
「でもあなた、ニュートがレンたち三人の息子だと町の人たちは知らないわ……また小規模の親族結婚式になるかしら……少し残念だわ」
「父さん、母さん、俺はクロとシロと結婚してニュートが息子であることをイクスの人たちにこれ以上隠すことはしません。息子の結婚式なのですから、二人には姉さんの時のような立派な結婚式を挙げてもらいたいです。クロ、シロ、かまわないか?」
「んー、そうね、ニュートがキリアさんと幸せな結婚式をできるなら別に何言われてもいいわ」
「他人の評価は気にしない。ニュートがキリアと幸せな結婚式をできるなら問題ない」
「そういうわけだニュート、もうイクスの町でも親子として普通に呼び合えるし、カシウス・ニュートと堂々と名乗れるぞ。キリアさんもカシウス姓になりますが大丈夫ですか?」
「イクスでもパパをパパと呼べる……クロママとシロママも……それに僕がカシウス・ニュートと名乗ってもいい……パパー!!ありがとうございますー!!」
今度はレンを竜人の力で泣きながら抱きしめるニュート。
「そうじゃのう。まあ名前なんぞそんなに意味のあるものでもないからの。ただ吸血鬼としてカシウス・B・キリアとでも名乗らせてもらおうかのう。ブラッドラインはミドルネームみたいなものにしておけばよい。問題ないぞ父上」
「レンたちの決意は嬉しいが……その告白をしてしまったら教会員の方々が心から祝福してくれるだろうか……?」
「大丈夫よあなた。レンたちは確かに大きな罪を犯してしまっているけれど、イクスのクリスチャンが多くなったのはレンたちが完全聖書を私達に見せてくれたおかげよ?レンたちがイクスの町を大きく発展させてくれたことも事実だわ」
「そうだな、私達の教会員の人たちを信じることにしよう。レン、結婚式はいつごろを予定しているんだ?」
「「今すぐにでも(です)(じゃ)」」
「二人もこういってますし、お金は充分あるので経済的な面は問題ないと思います。後は父さんの準備だけですね。姉さんも招待してください。受け入れられるかは分かりませんが、俺達家族が守りあえば姉さんなんかには殺されたりしませんよ」
「よし!!そうと決まれば早くしないとね!!トライ先生、車をお借りしてもよろしいですか?」
「ふぉっふぉっふぉ。レベッカは変わらんのう。もちろんよいぞい」
「パパ、準備よろしく!!ニュート、車の運転お願い!!キリアさん、行くわよ!!まさか孫の結婚式が見られるなんて思わなかったわー!!最高に幸せだわーーー!!!」
レベッカはニュートをどうやったのか強引にレンからひっぺがし、吸血鬼としてすごい力を持つはずのキリアをも引きずり、レンの金貨袋をひったくり、もはやコンコルドのように音速で飛び出していった。
「相変わらずレベッカにはかなわないな……」
「父さん……またすみません……」
「レン、それより船にある食材回収しないと」
「ん、どこに飛ばされるか分からない以上早くするべき」
「そうだな。父さん、すみませんが準備よろしくお願いします。食材を回収して、なるべく早く戻ってきますので」
「私も孫の結婚式なんて見られるとは思っていなかったからな。全力で準備するぞ。レン、クロ、シロ、気をつけてな。トライアード先生たちはうちの家でよければ滞在していただけませんか?」
「おお、それは喜ばしいことじゃ。牧師のウィリアムからしっかりと主のことを学ばせてもらうぞい」
「いえ、私がトライアード先生に教えられることなど……とにかく精一杯のおもてなしをさせていただきます」
「いってきます父さん、クロ、シロ、家によって荷物置いてから出発だ」
「了解!!」「承った」
その後家に全員分の荷物を置いて対談所へワープしに行く三人。
「カレン、またマームまで送ってくれ」
「はいはい了解。あ、レンレン、必要ないかもしれないけどキリアにもリビングアウトフィット作ってあげたら?」
「は?あれはビーストテイマーとパートナーだけのものじゃないのか?」
「別にそういうわけじゃないよ。ただリビングアウトフィットの作り方自体が失われつつあるから本来の性能、血でパスを結んだ相手同士の能力を共有することは出来るよ。ニュートくんとキリアもしばらくはゆっくり新婚生活送りたいだろうからね」
「そうか、家族になる以上同じ装備をもてるのは嬉しい。早く二人の結婚式をしてしばらく幸せに暮らせるようにしてやらないとな。リビングアウトフィットのほうもしっかりやるよ」
「それじゃ三人手を繋いで」
レン、クロ、シロは手を繋ぎ目を閉じてカレンの前に立つ。
「それじゃ行くよ『マーム・ワープ』ふう、トライアードさんはどうなるかと思ったけどまさかフェニックスの肉があそこまで病気を治すとはねぇ。ほぼ完全な老衰状態だったはずなんだけど……Sランク魔物は僕にも計り知れない力があるねぇ」
ぶつぶついうカレン。自分の想像した魔物ぐらい把握してほしいものだ。
「ん、ここは……カレンの家か?」
「そうだよ。マームに来るときは必ず僕の家に来るんだ」
「おい、クロ、シロ、起きてくれ、急ぐぞ」
「んー、レンおはよ……あれ?カレン様の家?」
「ん、少し慣れてきた。」
「二人とも行くぞ。カレン、またすぐ戻ってくるから」
「はいはーい、いってらっしゃい三人とも」
その後超特急でキリアの船に積んである食材を回収、一応もう一回アブソリュートゼロで凍らせてからカレンの家に戻った三人。
「またよろしく頼むカレン」
「はいはい。『カレンシュタイン・ワープ』あれ?今度はイクスだよ?随分と偶然が続くね?」
「ん……カレン、ここはどこだ?」
「僕もすぐ気づいたんだけど、イクスだね。どうもレンレンに縁のある土地には正確にワープできるみたいだ」
「ふぁー、おはようございますカレン様」
「ふむ、だんだん余裕になってきた」
「なんにしても早く戻ってこられたのはいいことだ。家に食料を保存して父さんの準備を手伝いつつ母さん達が戻ってくるのを待って姉さんに事情を説明して殺されないように招待するか」
「さすがにマリーさんももう30過ぎだし殺しはしないと思うよ?」
「マ、マリー姉さん……ぶるぶる……」
「マリー……がくがく……」
「大丈夫だ二人とも。姉さんが怒り狂っても二人は姉さんよりずっと強いんだぞ?それに俺が全力のアブソリュートウォールで守るから。安心しろ」
「あ、レンレン、ホーリーミスリルウォールと一緒で聖属性のホーリーアブソリュートウォールならもっと防御力が上がるよ。レンレンの好きだったあの物語の鞘並みに」
「まじかよ、アブソリュートウォールでも充分すぎるが……一応練習してみるわ」
「クロちゃんシロちゃんも聖属性の魔法を使えば威力が上がるはずだから試してみて。封印するとき余裕だったから割と早く使えるようになると思うよ」
「はい~練習します~」
「ん~試す~」
レンに守られると聞いてさらに頭をなでられてとろけているクロとシロ。
三日後、レベッカたちが戻り、レンたちも何とかマリーに事情を説明し、殺されずに招待でき、結婚式は行われた。
マリーは半ば予想していたようで、あまりショックを受けておらず、「ふーん」とコメントしただけだった。三人の罪は認められないが、三人が愛し合ってニュートもしっかり息子として育てていることと年齢を重ねたことから自然体で事実を受け止めたのだろう。
マリーには新しくヨセフという息子が生まれており、当年1歳である。グレイスも6歳になっており、昔のマリーそっくりである。三人ともグレイスとマリーをでれでれと愛していた。
この三日間で教会員の人たちにレン、クロ、シロが三人で結婚した経緯を説明し、その罪を犯してしまったことを告白した。また、ニュートが三人の息子であり、キリアと結婚することも説明した。
教会員の人たちも当然嫌な顔はしたが、レンたちがウィリアムやレベッカに特別な聖書を渡したためイクスのクリスチャンが増えたのだとウィリアムとレベッカが説明し、これからもその仕事を続けていくことを説明するとレンたち三人の結婚は祝福しなかったが、ニュートとキリアの結婚は祝福してくれた。
結婚式はおおむねマリーの時と同じだが、衣装と料理が段違いであった。
ニュートはレンと同じ銀の糸が織り込まれたダークブロンドのタキシードと濃い緑色のネクタイ。
キリアはスタンダードだがやはり銀の糸が織り込まれシックさとゴージャスさが絶妙に統一された純白に輝くウェディングドレスを着ている。
二人の指輪はおそろいで銀製の指輪にダイヤモンドというシンプルなものだった。
今回はレンがキリアをつれ、クロとシロがニュートをつれてそれぞれ親として二人を壇上の前まで連れて行き、ちゃんと最前列で二人の結婚を見守った。
レンもクロもシロも笑顔で涙を流し続けており、三人の心は喜びで満たされていた。
ニュートは若干緊張していたが、うまくキリアがリードしており、誓約の言葉も指輪の交換と誓いのキスも滞りなく終わった。ウィリアムから祝福の言葉を受け、最後はニュートもキリアも満面の笑みを浮かべていた。
式の後の食事では、レンクロシロがニュートの子育て時代に培ったプロ並の料理スピードとクオリティ、そして大量の食材で町中の人が集まる大宴会となった。
ニュートとキリアはレンたちの家の隣の空き家を購入し、また木材ギルドに特注の風呂付の大きな家を注文していた。
ニュートの新婚初夜はレンと同じような状態に陥ったが、キリアがやや強引に寝室に連れ込みしっかりかわいがり楽しんだようだ。ニュートは翌日ふらふらしていた。その理由は血液を取られすぎたから。
「なんだかカレンの気持ちが分かっちまうな……うらやましいようなうらやましくないような……」
「パパ……そんなこと……言ってないで……ギガヒールと……リバイブ……かけて……ください……」
貧血と体力の消耗が激しすぎて自分で回復できないニュート。竜人をここまで追い詰めるとはキリアも恐ろしい。ニエフではカレンのイメージのせいかただでさえ女性は強いし怖いのにキリアの吸血鬼としての力が竜人のを追い詰めている。
「はいはい、『ギガヒール』『リバイブ』『リジェネレイト』ほれ、おまけもつけたぞ?どうだ調子は?」
「ふうー、やっぱりパパの治癒魔法はすごいですね。僕も限界は超えてますけど、ここまでの効果はないです」
「その分ニュートは攻撃力あるだろう。あっちを立てればこっちがたたずってやつだ」
「でも、キリアとの夜の状況はどうにかしないといけませんね……」
「ほれ、対談所だ。そのことをカレンに相談でもしにいこう」
微妙な夜の会話をしつつ対談所に入る父息子。
「ニュートくんも大変な女性に愛されちゃったねぇ。レンレンの治癒魔法で何とかなってるみたいだけど」
「カレンさん、キリアに夜負けない方法を教えてください、このままじゃもしパパと離れて暮らすことになったら死んじゃいます」
「うーん、吸血鬼は体の構造があんまり人間と変わらないからねぇ。さっきもレンレンが言ってたようにキスが吸血行為に似てるからいっぱいキスするぐらいかな?後はいまや二人の妻を弄べるようになったレンレンからしっかり女性の悦ばせ方を教わるしかないよ」
「いや、弄んだりしてるつもりはないんだが……というか最近二人に要求されることのほうが多いような……」
「地球でもそういう噂はあったけど、意外と女性の性欲ってのも結構強いものなんだよね。男性は無作為に美人なら誰でもいいから気持ちよくなりたいって思うけど女性はそうじゃない人が多いから深く愛している相手ならなおさらがんばっちゃうんじゃないかな?」
「地球でネタにされてた愛が重いってやつかね?」
「別にクロちゃんシロちゃんキリアがヤンデレってわけじゃないからそこまではないと思うけどね。ただ三人の深い愛を受け止めるには男として大きい器がレンレンとニュートくんに必要なんじゃない?」
「なるほどね、俺はだいぶ慣れてきたけどニュートにはまだきついかもな。ニュート、後で女性が気持ちよくなれる方法を教えてやるから」
「パパとママ達の具体的な内容は聞きたくないですけど……命にはかえられないので教えてください」
「そこまで深刻な問題……いや、吸血されるなら危ないかもな。具体的なところは伏せて、何とか教えるよ。カレン、まだキリアの装備の件ヨシュウに話してないけど素材を貯めるのにまだ時間かかるし伝えるのは待ったほうがいいかね?」
「そうだね、一週間前ぐらいでいいんじゃない?またすごい情熱と技術であっという間に下地は作っちゃうだろうし」
「そうかもしれんな。ニュート、魔物狩りにでも行こう。久しぶりに男二人もいいもんだろ。ついでに色々女性について教えるから。それじゃカレンまたな」
「魔物狩りより女性について教えてほしいですパパ……カレンさんさようなら」
「ふう、キリアとニュートくんの結婚か……子供はほぼ出来ないだろうけどもし産まれちゃったら……神様、罪の刈り取りが二人を襲いませんように」
ますます幸せになるレンの家族。しかしいずれはニュートとキリアにも何かしらの罪の刈り取りがくるだろう。
願わくばこれからの三年間は幸せで居られればいいのだが。




