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第参拾捌話 神楽舞

これで全ての準備は整った。後は事を無事に運ぶだけだ。

皆、そう願い思いを募らせる。

しかしまだ、この出来事の終わりが見えてこないのも事実だった。

舞を踊れば、犯人は自分達の元に訪れる。

それは本当の事なのだろうか?と望海は不信感を募らせていた。


「これで本当に全てが終わるんでしょうか?」


そんな事を言えば、仮面を付け巫女装束に身を包む2人から沈黙を促されるようにそれぞれの口元に人差し指を当てている。

私語厳禁、それは収集した資料にも書かれていた決まり事だった。


これの影響もあり、意思疎通が難しくなったと彼女は困惑したが2人はジェスチャーを行いなんとか全員で洞窟内にある舞台の上へと立つ。

幼い頃に歌舞伎の稽古を受け、舞台へと上がった望海にとって久しぶりの感覚でもあった。


舞の手順は単純にして明確だ。

最初は奏者として琴や太鼓、鈴を用いて音色を奏でる。

その後、一人ひとりが奉納の舞を行い最後に全員で日が沈むまで行えば完了だ。


正しい方法で事を運ぶ事が出来れば、聖火が反応し青く光るという。

それを信じて望海達三人は準備を始めた。

鏡の中に自分達の姿が映る。勿論、これは意図的な物だ。

永遠の舞台とは、鏡合わせによって映し出されたこの舞台であるからだ。


沈黙の後、摺り足の音と楽器の音色が洞窟中で反響する。

阿吽の呼吸でお互いの気持ちに寄り添い、心を通わせて行く。

この事に望海は充実感を覚えながらも、この異様な空気に恐怖心を抱いたのも正直な感想だった。


そもそもこれが正しい方法なのか?すらも分かっていない。

ほぼ、されるがままにこの窮地を脱しようとカードの言うとうりにしているだけではないか?とも同時に思った。


しかし、自分達の後ろでパチパチと火花が出る音を聞いてからはそれが安堵へと変わった。

日が沈み、神楽を終える頃には社に青い炎が灯される。

最後に全員で礼をし、楽器を置いてその場から離れた。


「やっと終わった!もう話しても大丈夫だよね、洞窟の外だし。息苦しかった、色んな意味で」


「小町も!凄い疲れたの!でも、無事に終わってよかった。この後、開会式だよね?」


「そうですね、3日前に迫っています。とりあえず、迎えの車の中で話の続きをしましょうか?斑鳩様をお待たせしていますし」


そのあと、離れた場所に停車しているリムジンに乗り込み此処を離れる事になった。

三人は深い深呼吸をし、肩の荷が降りたのか脱力していた。


「皆んなお疲れ様。町に到達するまでゆっくりしててくれ。皆、噂していたよ。バレーボールや新体操の試合が楽しみだとね。私達もこれから忙しくなりそうだ」


「光莉も言っていました。選手達の護衛もしなきゃいけないから大変だって。沢山の方が来られるみたいなので、町起こしにはなるでしょうけど。運び屋の立場としては複雑です」


「数ヶ月もこの状態になるみたいだしね。慣れるのに苦労しそう。節子嬢が頑張って人員配置をしてくれてるみたいだけどね」


服を着替え教会に戻ると以前、会議室にあった神楽舞の資料は消え。大祭のスケジュールに移り変わっていた。

近くには節子の姿もあり、皆を見ると晴れやかな笑顔を浮かべていた。


「あら、皆さんお帰りなさい。お待たせしました。やっと、皆さんに担当場所を伝えられるわ。早速、開会式から動くことになりそうだからタイムスケジュールと人員配置を確認しておいてね」


彼女の声に従いホワイトボードを眺めていると高天原には洞窟以外に見覚えのない場所がある事に気づいた。

馬術競技や射撃の会場がその近くに設置されている。


「小町の持ち場、外になってるの!武器を使うなら携帯用の通信機を持っていかないと冬のスポーツは壱区の皆んなで担当するって事でいいのね?」


「えぇ、皆さん寒さや雪には強い方が多いでしょう?適材適所で選ばせて頂いたわ。何か聞きたい事があれば今のうちにお願いね」


「開会式は選手の皆さんは勿論、観客の方々の誘導をする予定なんですね。事前に依頼の予約も何件も頂いているので既にタイムテーブルは組んでいます。零央君も頼もしい存在で。非常に心強いです」


「今じゃ1番仕事が早い運び屋だもんね。アタシらも負けてられないな。こう言うのは勝負じゃないけどさ、派手なイベントになりそうだし。全力で挑まないと!」


その3日後、大祭の開会式が行われてようとしていた。

しかしまた、運び屋に更なる試練が降りかかる事になるとはこの時の望海達はまだ知るよしもない。


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